詩歌によせて20

第二首 これは、2.26事件で可能性を奪われた青年達への鎮魂歌とも言うべきものだが、ここで取り上げたい。

 暴力のかくうつくしき世に住みてひねもすうたふわが子守うた(斉藤史)

 斉藤史は、2.26事件で連座して禁固5年となった齋藤瀏(りゅう)の娘である。生涯独身を通した。父を通じて青年将校達ともなにがしかの交流はあっただろう。かつて交流の青年将校達が事件に関連して処刑された。
 その時、斉藤史の心中に守り続けたい「子守歌」が生まれたのではないかと、私はこの一首を目にするときに思うのである。
 いかにも女性らしく「暴力のかくうつくしき世に」と、精一杯の抵抗を示している。あの事件がなければ、夫になったかもしれない人がいたかも知れない。
 そう思うと、とても結婚する気にはならなかったのだろうが、本当のところは誰にも分からない。


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