ギレンの野望シリーズについて語る。
さて、私がこのシリーズに初めて触れたのは、中学2年生の頃だった。
当時はガンダムゲームと言えば、大体主人公が一人で無双するような内容が主流だったように思う。特に、「ガンダム」を代表とした、所謂「主人公」の乗る機体が縦横無尽に戦場を駆け巡り、敵対するMSを片っ端から撃ち落とす…そんなアクションゲームが大多数を占めていたように思う。
戦略シミュレーションも出てはいたが、本格的な物ではなく、老若男女問わずカジュアルに楽しめるような、駒を生産して動かして戦って倒すという単純な作りの物だった。そこでもやはり主人公機が活躍するのだった。
私は小さい頃からガンダムが好きだった。SDガンダムからそのフォルムに魅了され、様々なガンダムゲームに手を出していた。アニメは一度も見た事が無かった(「SD」ガンダムが好きだったから)が、とにかくガンダムが出ていれば何でも興味を持って遊んでいた。
そのうち色々なゲームを遊んでいると、一度もアニメを見た事が無いのに大体のストーリーやキャラクター、世界観等も分かってくる。Gジェネレーションやスパロボ等にはまり始めたのは小学生の頃だったか、よりガンダムの世界を「体感」出来る作品を追い求めていくようになった。アニメではだめなのだ。あくまで自分が「介入」出来る事が重要だった。自分がMSパイロットの一人になってどっぷり世界観に浸かったり、プレイヤーが介入する事によってストーリー展開が変わるといった「体感」を得たかったのだと思う。
「機動戦士ガンダム戦記」なんかもその代表例ではないだろうか。1パイロットとして、僚機と共に戦場を駆ける…至高の体験だったように思う。このゲームについてもまた後日語りたいと考えている。
話を戻そう。そんな「体感」「介入」といった体験を求めていた私にとって、初めて「ギレンの野望」という作品を知った時の衝撃はすさまじい物だった。元々「信長の野望」等の戦略シミュレーションが好きで触れていた事もあり、ガンダムの世界観を使用してそのゲーム体験を味わう事ができるなんて、夢のようだと思った。見つけてすぐ、なけなしのお小遣いを全て注ぎ込んで購入した。
それが、「ギレンの野望 ジオンの系譜」との出会いだった。
私はゴリゴリの連邦派だった。特別な思想等がある訳でもなく、ただ単純に正義の味方、主役の立場が好きだっただけである。冒頭にも話したが、それまでのゲームは主役であるガンダムが八面六臂の活躍で無双するようなゲーム性で、さほど苦労せずにすぐガンダムが手に入り、主役機を駆って戦う事が出来ていた。その為、私は迷わず「連邦」を選択したのだった。
今でも鮮烈に記憶している。
わくわくしながらゲームを開始し、自軍の編成を確認した時の衝撃。
ガンダムのゲームなのに、「MS」が一機たりとも自軍に存在しない。
絶句した。今なら、そりゃあ連邦軍はまずジオンにMSでぼっこぼこにされた事を切っ掛けにMS開発に乗り出したわけだし、最初っからいる訳がない事は想像が出来る。しかし、当時まだ私は齢14歳程度。ガンダムが初っ端からいる訳がない事はさすがにわかっていたが、MS開発前の時期からゲームがスタートするなんて想定していなかった。なんだトリアーエズって。とりあえず用意しました程度の数合わせって事か?フライマンタとか61式戦車はギリGジェネにもいたし分かるけど…え、耐久紙すぎん?等とにかくひたすらに混乱した事を覚えている。そう、とにかくリアル志向で、通常兵器はとことんまでに弱弱しく設定されているのだ。今まで遊んできたガンダムゲームでは考えられない。そもそも通常兵器自体あまりお目にかかれない。Gジェネで見た時ですら、ジムとかよりちょっとHP低いくらいかな?ってレベルだ。
とりあえず、ゲーム冒頭に流れるOPにてこれからMS開発に着手するぞ、と説明されていたので、まずは開発を進めて、MSが揃った辺りから戦いを仕掛ければよいのか、と理解し、早速進めていく。勿論開発も楽しいが、一番楽しみにしていたのは戦闘だ。頭数だけはいる訳だし、まず戦闘がどんなもんか理解する為にも、近隣地域からありったけの兵器を集めて隣接する地域に圧倒的な数で攻め込んでみる。
ここで、更なる衝撃が走る。敵軍のMS、それも他のゲームではただの雑魚としてしか存在していなかった「ザクⅠ」程度に全く歯が立たない。次から次へと撃ち落とされる。対してこちらの兵器は61式戦車とフライマンタ。近接戦闘を挑むが、ザクにとっては豆鉄砲程度でしかなく、フライマンタ×12部隊+61式戦車&フライマンタ混合スタック(最大3部隊まで駒を重ねる事が出来るシステム)の攻撃によってかろうじて1部隊落とすことが出来た程度。対して、相手の反撃でこちらは2部隊壊滅。さらに追い打ちをかけるように、MS3機が自陣の61式戦車に向かって走り込んでくる。MSって追加でそんな事出来んの!…そりゃそうだよな、MSだもんな。ザクの片足程度のちっちゃい61式戦車に向けて、頭上から無慈悲にも振り下ろされるヒートホーク。あっという間に1スタック消滅。これでもかとMSの強大さを思い知らされる。ああ、通常兵器は既に時代遅れであり、全く無力な存在なのだ…と。
通常兵器では歯が立たない、ならばやはり籠城してMS開発が進んでから攻め込むべきか…と思案している中、特別プランとして提案される、特別エリア(各種機体を生産する事が出来る拠点)「北京攻略作戦」。
勝てるわけないだろ!!通常エリアすら40機で攻め込んでたった15機に返り討ちにあってんのに!!!!
※注:慣れると勝てるようになる
提案されたプランはスルーし、とにかく開発に注力する。
セイバーフィッシュやらデブロッグやら提案が出てくるが、どうせ通常兵器だし大した事ないだろ…と思い開発はするが量産せず、開発に注力。
このゲームは、良心的な事に7ターンを越えるまでは相手が攻めてこない。
よってゆっくり準備ができると思い込み、全く生産も進行もせず開発に傾倒。そして遂にわが軍初のMS「ガンタンク」が完成する。
またまた驚愕。ガンタンクが物凄く強い。他のゲームでは(略
まず体力。通常兵器群が1部隊たかだか50~70程度しかない中、なんと180。更に、武装は戦艦なみの射程(2-3)を誇る。その威力、61式が24程度に対し、なんと3桁(うろ覚えだが128だったか?)越え。適当にどこにも配属せず遊ばせていたバニング中尉を乗せ、早速戦場に出してみる。
するとどうだろうか、あれほど苦戦していたザクがあっという間に溶けていく。さすがに囲まれると怖いので護衛機として随伴させていた戦闘機を囮に戦わせ、見事勝利を収める。勝てる!!これならジオンに勝てる!!
早速ガンタンクの量産体制に入り、次に開発が終了したのがガンキャノン。
ガンタンクと同様に試験的に戦闘。流石にガンタンクほどの衝撃は無かったが、勿論強い。ガンタンクと違う所は、なんと近接戦闘で格闘(タックル)が出来る。我が軍もついに格闘デビュー!!最早ジオンなど敵ではない!!
そして、迎えた7ターン目。開発が順調に進んでいれば、ここで遂に主役機である「ガンダム」!!!…のプロトタイプが完成。しかし、プロトタイプとはいえガンダムはガンダム。その実力やいかに…と、何にも乗らずそこらへんほっつき歩いていたスレッガーさんを捕まえ搭乗させ、戦場へ突撃…といきたい所だったが、遂にここからジオンの猛攻が始まる。
あっという間に広がる戦火。あちこちのエリアが真っ赤に染まる。
敵国と隣接していたエリアは全て侵攻されている。まずい。まだこちらのガンタンク(生産に2ターンかかる)の配備も終わっていない。更に、ガンタンクを生産しすぎて資金・資源共に底を尽きようとしている。
戦術フェイズに突入。戦闘は、先行プレイヤー、後攻NPCの順で、5ターン繰り返すと一旦中断され、戦略フェーズに戻る。つまり、何とか5ターン、現行の通常兵器のみで凌がなければならないのだ。
対してジオンはドダイに乗ったザクが多数配備されている。唯一のアドバンテージだった空中すらも奪われている。出来る事は、ただひたすら逃げて、援軍を待つ事のみ。逃げ回ればそうそう占領される事はないだろうと考え、とにかく逃げに徹する事にした。
そして戦略フェーズ。満を持してガンダムをジャブロー付近の攻め込まれたエリアへ投入。また、各方面へ追加生産していたガンタンクの援軍が到着。
さあガンダムの初陣だ。数値上では圧倒的である。HPは250、攻撃力も破格(ザクマシンガンが4ダメ*8回に対して、ビームライフルは25ダメ*6回)、何よりやっぱりビーム兵器はかっこいい。ついにビームライフルを使う事が出来る。わくわくしながらザク3部隊のスタックに突っ込ませてみる。
え、何これガンダム無双?
圧倒的じゃないか我が軍は。1回の戦闘でザクⅡ2部隊も溶かす大戦果。その後も相手から攻撃仕掛けられても全く動じる様子もなく、拠点でしっかり回復すれば問題なく経戦出来る。そのままの勢いで、ガンダムが居る地域のエリアは防衛成功。
こりゃもう余裕じゃん、ギレンの野望も結局主役ゲーじゃん、と思ったそこのあなた。ガンダム一機だけで全部のエリアは守れないんですよ!!
その後、ガンダムのいるエリアだけは余裕で防衛出来ていたが、既にガンタンクの量産により資金・資源が底をついていた上、各エリアが侵攻されている為、戦闘中のエリアからは拠点収入が得られず、新機体の開発も出来ず…更に追い打ちとばかりに、ジオンはガンガン新兵器を投入してくる。初めこそガンタンクは猛威を振るっていたが、グフが出てきたあたりからパワー不足に陥る。
更にさらに、宇宙では数少ないエリアも、総勢80機程 ザビ家・シャア・マツナガ・ガトー等エース勢ぞろいの圧倒的な戦力で攻め込まれており(ジオンに兵無しってなぁありゃ嘘だなぁ!!)、あえなくルナツー陥落。その後も各エリアがどんどん制圧されていき、私の初回プレイは限界を迎えた。
ちなみに、途中で通常兵器でペキン攻略なんて無理だ!!と言っていたが、戦い方の工夫と、適切な生産管理さえ行えれば通常兵器でも充分地上エリアの制圧を進める事は可能だったりする。慣れてくると、MSの量産体制が整う頃には地上の7割方制圧が終わっている事も。この辺りも面白い所。
その後何度も試行錯誤を繰り返す事で、何とかジオンを打ち倒す事が出来た。一つの陣営をクリアした事で、他の陣営もやってみたいと思うようになり、更にのめり込んでいった。繰り返しプレイを進める中で、単純に強いユニットを揃えるだけでなく、ユニットの回避率を高めるミノフスキー粒子を散布したり、優秀な指揮官を置いたり、コストの安い機体を囮に使ったり、偵察機を使用して命中率を上げたり、相性のよいパイロットを組ませて戦わせたり、地形効果を上手く利用したり、地上兵器と空中兵器を組み合わせて編成したり等、様々な戦術を駆使すれば大体の戦場は勝ち抜けるという事を理解していった。やり込みを深めていった結果、通常兵器のみで攻略なんていう事までやるようになった。
量産機の真価、世代変更による圧倒的な技術革新(1年戦争世代⇒グリプス戦役世代)、圧倒的な量のイベント、IF展開(ランバラルにドムを送ってホワイトベース鹵獲や、早期にホワイトベース隊解散、即時前線投下等)、好きなエースを遊撃隊と称して組ませる等など、このゲームでしか味わえない体験が目白押しであり、特に量産機が好きだ!という方には自信をもってお勧めできるシリーズである。
なお、ギレンの野望シリーズは、2011年8月に新ギレンの野望が発売されて以降、新作は出ていない。なので私はいまだに「アクシズの脅威V」を遊んでいるが、それはまた別のお話…。