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ドラマ『私の死体を探してください。』(ネタバレ感想)

最終回が予測しにくいものだったのもあって、ネタバレ込みの感想を、Xに晒すことに抵抗があったので、此方に書きます。
最終回が未見の方は、ネタバレ知らずに見た方が絶対良いと思いますが、まぁそこは自己責任で💦


🍸🍸🍸


最終回を見終わった後、振り返ってみて…
一番ゾッとしたのは、伊藤淳史が演じる正隆さんが、要潤が演じる編集長と話してる場面。

この場面、直前に正隆は池上沙織を殺してるんだよね。(前回5話のラスト)
で、窓ガラスについた血を雑巾?で拭き取ってる時に、来訪者のインターホンを聞く。
その時点で、ナイフで刺し殺した沙織はまだそのままだし、正隆の服や顔、腕にも返り血がついたまま。

編集長との会話シーンでは、返り血も綺麗になってて服も着替えてるから、インターホンを聞いてから、それなりの時間は経ってるけど、
この会話シーンの正隆が、物凄く落ち着いてて冷静。(最初は)
沙織の死体をどうしたかは分からないけど、とにかくまだ家にあることは間違いなくて、もしかしたら、そのままリビングから直ぐに行ける部屋に置きっぱなしかもしれない。

なのに、全くそんな様子は見せずに、妻が失踪した夫を演じ切って、ソファに座って話をしている。
ドラマを見てる私の方が、編集長が家の中を歩き始めたらどうするのかとハラハラしていたくらい。

結局は、編集長は麻美の生死等の話はせず、正隆が麻美を(精神的に)壊したと責めて帰るんだけど、
この時点で、正隆は麻美に責められてる自分を感じてはいても、“殺人を犯した“ことが編集長にバレる動揺とか、全く見せてないんだよね。

で、編集長が返ったあと、麻美のデスクでウィスキー?を飲みながら振り返る。
麻美が自分を嘲笑するさまを。
そして、その嘲笑に耐えきれず、麻美の首を絞めて殺した経緯を。

この一連の時系列は、“麻美が正隆に殺されていた“という物語最大のネタバレを最後に持ってくるという構成上の都合かもしれないけど、
正隆は、麻美を殺したあと、自分が殺したという自覚がどんどん薄らいできて、自分は本当に“妻が失踪した夫“のような気分になっていたように見る(解釈する)ことも出来る。

だから、最初からあんなに、麻美の失踪を他人事のように聞いて、呑気に過ごしていたのかもしれないと。

これって、物凄く恐い。心底ゾッとする。

人は時々、自分にとって都合の悪いことを隠す為に、別のストーリーを人に話すことがある。
で、それを長年続けていると、本当にそうなのだと自分でも思い込んでしまっているかのような反応を示すことがある。

❄❄❄

実は、私自身の母親がそういう人で、実際を追及すると、忘れた、覚えてない、の一点張り。
そのうち、精神的におかしくなるのじゃないかという感じになるので、私はその母親が恐くなり、追及を止めるしかなかった。
(私の両親は2人とも中々の人達で、ちょっと普通の発想では考えにくいような精神的・身体的な虐待を受けて、私は育っている。2人とも、もう亡くなっているし、私が成人したあとはほぼ家族とは絶縁していたし、2人が亡くなる10年位前には直接対峙したりもしてるので、私にとってはもう終わったことなんだけど、とにかく2人とも、全く自覚がなかった。日常的にこういうことを言っていた、と話しても、それを口にしてない方の親は覚えてるけど、実際に口にした方は全く覚えてない。こういうことをされた、ということも同じ。実際にそれをしていた方は、覚えてないか、違うストーリーの記憶になっている。それをしてない方の親は覚えている記憶なのに。私自身、虐待を受けていた期間、虐待の辛さは勿論あったけれど、それ以上に、2人のことが恐ろしかった。この人達はおかしい。関わりたくない。幼少期からそう思い続けて生きていた。多分そう思って親を異端視し続けていたことが、私の心を救ったのだと今では思っているけれど、
私はこの人達と血が繋がっている。世間的に家族として同一視されてしまう。という恐怖は、本当に底知れなくて、実はそれが一番私を苦しめていた。両親と絶縁してからも。ずっと。
その恐怖を克服する為に、その両親の心理を理解~理論上での理解。頭での理解。~する為に、心理学や精神医学に携わる仕事を、大学卒業後に就いていた仕事を辞めてまで選んだほどに。)

❄❄❄


…と、ここまで、個人的な話を書いたのは、この話の正隆もそうなのではないか、という思いから。

記憶の改ざん。
自分を守る為の改ざん。
人は時々、日常的にそれを行う。
軽いものから、深刻なものまで。
事実を知った人が溜め息をついて済ませられるようなものならまだ良いけれど、正隆は殺人の記憶まで改ざんしかけていたのではないか?

私は、編集長と正隆の会話シーンと、初回からの正隆の様子を振り返って、そんな風にも感じた。
だから、心底ゾッとした。
これはドラマだけど、実際にもそういうことは起こり得る話、どこかで起こっているかもしれない話だと思って。

考えてみれば、戦争に行って相手国の人を敵として殺した人は、相当数にのぼる。
その人達は、戦争が終わったあと、その非常時の記憶をそのまま保っていられただろうか。
それを思うと、有り得ない話ではない。

正隆は、編集長から“麻美を壊した“と責められるけれど、正隆自身も、麻美を殺した時点で壊れたのかもしれない。
だからあんなに平然と、感情を高ぶらせることもなく、沙織を殺し、沙織殺害のあとも、落ち着いた様子で編集長を迎えることが出来たのではないかと。


原作とは違う最終回らしいし、編集長と正隆の会話は原作にはないものらしく、この話が描いているものも、主に麻美の心情だと思うし、私のこの感想は、伊藤淳史さんによる初回からの正隆の演じ方によるところが大きいので、
このドラマ版での正隆(演・伊藤淳史)に対する感想でしかないけれど、本当にゾッとする最終回だった。

(でもこの感想、制作側が意図してなかった感想かも。
初回からの正隆の演じ方は、単に真相にたどり着きにくくするものだった可能性の方が、相当に高い。
私の感想は、単なる深読みかもしれない)


※麻美と正隆に纏わる感想については、それこそドラマの最終回に出てきた、互いへの愛情と執着というテーマになるんだろうけど、その辺りのことについては、また気が向いたら。追って。





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