「ポルノグラファー」「インディゴの気分」「劇場版ポルノグラファー~プレイバック~」を観て…
書こうかどうしようか迷ったのだけど、やっぱり書いてみることにした。
単なる私の憶測、若しくは想像にしか過ぎないことを前提だけど、でも、世論やネットニュース、SNS等の大きな声だけを読んで、実際を判断することの危うさというか、何事も、実際はどうなのか、自分で考えて自分で感じることが一番大事だと、あらためて思ったことの記録として。
そもそものきっかけは、ドラマ「そんな家族なら捨てちゃえば?」に、ドラマ「25時、赤坂で」で、明野マネージャー役を演じた片山萌美さんが出演してることを知ったこと。
そして、「そんな家族なら~」の片山さんが、明野マネからは想像出来ないような演技をしていたこともあって、ドラマを一気見して、そのドラマで主演(岩本蓮加×竹財輝之助のW主演)していた竹財輝之助さんに興味を持ったことから。
「そんな家族なら~」の竹財さんは、役柄の為もあり、多分、この役ならではの声の出し方、演技なんだろうなと容易に想像出来たのと、何となく色気があって演技が上手そうな俳優さんだな…と思ったのとで、別の作品を見てみたくなった。
wikiで竹財さんの出演作を調べ、竹財さんが注目されるきっかけになったらしい「ポルノグラファー」という作品があるのを知った。
(この時点で「ポルノグラファー」の内容もジャンルも、私は一切知らない)
で、私は結構、動画配信サイトを登録しているので、「ポルノグラファー」がFODで配信されてることを知り、即、竹財さんを視聴してみることに。
視聴前、あらすじを軽く読んだけど、それだけでは内容がよく分からなかったので、見た方が早い…と思い、とりあえず1話。
竹財さんは、このドラマで独特の色気を放っていたし、やっぱり魅力のある演技をしていて、話の続きも気になり、そのまま2~3話と見続け…かなり濃厚なキスシーンの場面を見て、これって男性同士のそういう話?と思いながら、全6話を視聴。
内容は、とても良かった。
鬼束ちひろの切ない主題歌、それをアレンジした物悲しいBGM、竹財さんが演じる "書けなくなった作家・木島"という人物、その木島に惹かれていく久住、ワケありのような城戸と木島の関係。
で、「ポルノグラファー」全6話を見たあと、作品及び原作について少し調べたところ、これは『BL』のジャンルに分類されていた。
ただ、自分の主観としては、"『BL』と呼ぶには、ファンタジーっぽくないな"…という印象。
何か、リアリティーがあるというか、美しいだけに描いていないというか、私は木島という人物が抱えている様々な葛藤めいたものに、凄く興味を引かれて見ていたので、『BL』と呼んでしまっては、この作品に失礼な気さえした。(恋愛が主軸のようには思えなかった…という意味)
そして、続編の「インディゴの気分」を見始めた。
内容は、恋愛というより、男性同士の性愛。
しかも、その性愛描写が中々ヘビーで、私自身の頭の中にあった『BL』というジャンルとは、似て非なるもの。
また、性愛、性愛衝動という形で性描写を交えながら、本質的には人間を描いているだけ…とも、私は感じた。
この作品の性描写は、その性行為の最中の微妙な心情を、どうしても考えざるを得なくなる。
それは、1作目の「ポルノグラファー」も同じで、かなり濃厚なキスシーンから始まって、描写そのものは相当際どい感じなんだけど、性行為そのものを鑑賞しているというよりは、性行為、性衝動がそのまま心理描写になっていて、言葉を介さない心理描写・人間描写を見ているような気分だった。
3作目の「劇場版ポルノグラファー~プレイバック~」は、私的には『BL』と呼んでも大丈夫な作品のようにも感じるけれど、1作目の「ポルノグラファー」、2作目の「インディゴの気分」に関しては、私はどうしても『BL』と呼ぶには抵抗がある位、人間の本質的な部分を描いてる作品のように感じる。
性欲は人間の本能でもあり、性欲や性衝動をきちんと描くことは、人間を描くことだと私は思っているので。
…と、ここまで書いてお分かりのように、私は、このシリーズをかなり高く評価していて、それは勿論、全編あちこちに出てくる性描写あってのもの。
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で、実はここからが本題。
作品にハマった私は、メイキングや作品関連のトーク動画を全部見た。(FODで作品と一緒に配信されている)
キャストの方々の話の中には、性行為の演技に関する内容も割とあって、その話の端々から、竹財さんを筆頭に、役者同士が意見を交わしながら性行為の演技をしていることが窺えたのと、その役者同士の演技が、2度と同じ演技は出来ないものであること(事前に細かい動きの段取りがあらかじめ決められてはいない、そこは役者同士に任されている、の意)が窺えた。
つまり、私が何を思ったかというと、この作品の性行為演技には、インティマシーコーディネーター等は入ってはいないんだな、ということ。
まぁ、作品が制作されたのは、2018年(1作目)、2019年(2作目)、2021年(3作目・劇場版)で、まだそんなにインティマシーコーディネーターもポピュラーではなかった時代だから、そのこと自体、珍しくはないと思った。
役者さん同士が、話し合ったり意見し合ったりして、その時々の流れや役の気持ちで演技していたんだな、ぐらいに捉えていた。
役者さん達も、わざわざその話をしてくれるくらいだし、その話を、横で監督も普通に聞いてるし、役者さんやスタッフとの関係も良さそうだったし、私もその話をしている動画を普通に見ていた。
だから?多分、実際にも、何も問題は起きていないのだろうと思う。
性行為の演技中、カメラの位置がこっちだからこっちに来て、と竹財さんが相手役者に言った話などもしていたし、役者さん同士の絡み方やスタッフさんの動きなど、その場で意志疎通をはかりながら行っていたことが分かるような話ぶりだったし、メイキングでも、これから(性行為やキスの)シーンです、と役者さんが話されていたり、実際の絡みシーンの段取り中のメイキング映像があったほど、オープンな印象。
…と、何故、こんな話を書いてるのかと言うと、
作品を高く評価した私は、3作とも監督を努めた人の名前を検索…
その結果、分かったのは、この3作品の監督が、少し前、インティマシーコーディネーター導入問題で、散々世間から非難されていた「先生の白い嘘」の監督、その人だったからである。
当時、その監督は、かなり世間から非難されていた。
映画の舞台挨拶で頭を下げて謝罪したとか、主演女優が"私は大丈夫です"と口火を切ったとか、インティマシーコーディネーター導入を望む俳優の談話がSNS上に載り、相当数のいいね!が付いたり、映画公開についての批判さえあった。
私自身、役者さんが希望したインティマシーコーディネーターを拒否するとか、とんでもない監督だと思っていた。
勿論、役者さんが望むのなら、それを拒否するべきではないとは、今も思う。
また、インティマシーコーディネーターは、役者さんが望む望まないに関係なく、当たり前に配置されて良い職種だとも思っている。
ただ、私が見た「ポルノグラファー」シリーズは、性描写も含めて、本当に良作だったと思うし、性行為の演技に関連して、前述したように、問題が起こっていた、若しくは起こりやすい現場だったようにはとても思えないキャスト陣の発言が度々あったことも確か。
「先生の白い嘘」は、6年前ぐらいから企画していた作品だと何かで読んだ。
6年前というと、丁度「ポルノグラファー」が制作されていた頃。
ここからは、私の想像に過ぎないんだけど、監督がインティマシーコーディネーターを介在させたくなかったのは、「ポルノグラファー」シリーズの撮影現場が、あまりに良すぎたからだったんじゃないだろうか。
役者さん同士が、性描写の撮影に於て、遠慮なく自分の気持ちや意見を言い合えるような現場が目の前にあったからこそ、インティマシーコーディネーターは必要ない、と、思ってしまったんじゃないか…と、何だかそんな風に、「ポルノグラファー」の関連トーク動画を見ながら、私は思ってしまったんだよね…
勿論、これは別に、監督を擁護する目的で書いている訳ではない。
「ポルノグラファー」に出演した竹財さんは、既に役者としてベテランでもあり、性行為演技の相手役者も男性。
同性同士の性行為演技と、異性との性行為演技は、また違うということもある。
竹財さん自身、この作品ではキスシーンで舌を入れているけれど、女性とのキスシーンでそんなことは絶対出来ない、舌を入れたのはこの作品が初めてだと、ハッキリ言い切っている。(場面を変えて2~3回言っていた)
私は、その監督の他作品については、wikiでざっとタイトルを眺めた位の浅い知識なので、想像でしかないんだけど、ディープな行為がある作品を撮った経験、この「ポルノグラファー」を撮る前は、殆どなかったのでは?
だから、竹財さんを中心とした"自由にモノが言えるような役者さん任せ?の性行為演技の撮影現場" に拘ってしまったのでは?
…なんて、私の単なる想像かなぁ。
でも、ホントに、そう思ってしまうくらい、「ポルノグラファー」シリーズは、良さ気な撮影現場だったみたいに思えたんだよね…
一応、最後に再度書いておくけれど、私は別に、監督を擁護するつもりでこれを書いてる訳じゃない。
ただ、何故そんなことに…と思ったとき、「ポルノグラファー」「インディゴの気分」の濃厚な性描写と、その描写が、本当に良さ気な状況での撮影だったことが、無関係のような気がしなくて。
結果を非難するより前に、何故そうなったのかを考えたり検討してみることも大切なことのように、私はあらためて感じている。
何故なら、事情や経緯を無視して、画一的に何かを解決することは到底無理なことと思っているからと、1つのことで、その人の全人格や全部の仕事を否定してはいけないと思っているから。
最後に。
「ポルノグラファー」のシリーズは、映画「先生の白い嘘」のインティマシーコーディネーター拒否の一件で物議を醸した監督が手掛けた、濃厚な性描写のある作品ではあるけれど、この作品に関しては、性描写の演技も含めて、役者の方々は、それこそ納得づくで、精根込めて演技をした素晴らしい作品だと私は思っている。