左乳首を刺された話(君たちから見ると右の乳首)

 最近友人がnoteで文章を書き始めて、色々な人の共感を得ていた。それがなんだか羨ましくって、僕も文章を書く。承認欲求だ。

 というのは建前で、たとえば「何か書いてみたいなあ」みたいな人間がもし周りにいるのであれば、そのハードルを下げたいのだ。べつに人生の振り返りを全力投球しなくたっていい。あんたが日常で気付いたこと、ずっと思っていたこと、それを知りたいのだ。例えばあそこにある、あのY字路。右に曲がるのか、それとも左に曲がるのか。ほんとうに些細なことだけど、俺は聞いてみたいな。それがあんたのオリジナルの思想でなくってもいい。「人間は無意識に左に曲がるから、右が安全だ」とクラピカの言葉を借りたってもいい。俺はあんたと話がしたい。

 自粛が始まって家から出なければ、人との出会いも、何か面白いこととの出会いも少ないものだ。インターネットでディスプレイ越しの出会いはきっと陳腐なもんで、書くにはとてもとても難しい。だから、もう少し世の中が活発になったころ、ふと外で面白いことがあったら、俺のことを思い出して何か聞かせてほしい。

 「口に出すにはくだらないことだから、いちいち口に出さない」

 それでもパソコンに向かって打ち込むには、じゅうぶんな出来事がたくさんある。

 「書けることなんてないよ」なんて言わないでくれ。俺はずっと読みたがっている。

 部屋を閉め切って、ゲームをやり続けた。そうして3日経って部屋を出たとき、初めて自分の部屋の臭いに気付いたり。左の乳首を虫に刺されたり。朝日が昇ったり、沈んだり。月が朧に見えたり。ひとつの部屋にいても、俺たちの意識には絶えず何かが浮かび続けている。

 立て続けにちょっとええもんが投稿されたから、何かを書くには気が引けてしまうよな。「比べなくていい」っても、むずかしい。だから俺が先陣切って、くだらないことを書いてやる。だから、あんたのくだらない話を聞かせてくれ。俺のくだらない話を支えにしてくれればいい。

 乳首と言ったけれど、正確には左の乳輪を刺された(君たちから見ると右)。もちろん乳輪は輪なだけあって丸いので、具体的に示すと左の乳輪の右側。君たちからみると左かな。180°と呼んでいいのか、文系だからあまりわからない。ちょうど輪郭のあたりだ。乳輪だけにね。

 かゆいです。

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