文芸フェス:2. 「めくらやなぎと眠る女」特別上映会

文芸フェス:2. 「めくらやなぎと眠る女」特別上映会にて、村上春樹氏とピエール・フォルデス監督のポストトーク付き先行上映を見てきました(日本語字幕版)。
不思議な画面だった。
以下、対談のメモ+αです。

日本人にフックになる表現

・日本のどこにも無い「高畝仕立てススキ」花壇
・影のある日本人、無い人日本人/眠る日本人の区別
・日本の四季について(桜、雷雨、紅葉、釧路の寒さ)
・ミニキッチンのある、空想の日本のインテリアデザイン
・日本のビジネスホテル/ラブホテル
・存在する母が電話をかけてくる/母と無縁のカタギリ(ヒーロー)

片桐さんの家がすごい不思議で、あのバス・トイレのコーナーの丸みははなんだろう?というか、バス・トイレが出っ張ったビジネスホテルに泊まったとこがエキゾチックだったのかなー?と思いました。

わたしが良いと思った点は、「ねじまき鳥クロニクル」の壁抜けに挑戦している点

アチャーと思った点は、
・東日本大震災の5日後の風景を感じられるマジックリアリズムが無いこと
(雨が降らない)
・釧路から生きて帰ってくるところ
・バースデーガール
家が赤い箱はいかがなものか。
・すすきや人間の幽霊表現(異界)
・ねじまき鳥の家の造形が映画オリジナルであること
・あみあみのフェンスでないこと
・そう考えると「バーニング」の踊りは優れていたのかなあ、改めて。
です。
日本の資本も入って村上春樹原作を3つ映画化するというのは、
「バーニング」「ドライブマイカー」「めくらやなぎと眠る女」だったのだろうか?

【トークのメモ】 米国向けの短編集の村上セレクトが、映画のストーリーに影響している

権)バースデイ・ガールの〓のことが分かった。
村上)2回見て、楽しかった。アニメをあまり見ないが興味を持てた。アニメと意識しないで見ることができた。ずっと昔に書いた短編の映画化なので、次の展開が分からず、映画のためのシーンなのか自分が書いたシーンが分からなかったが、最後に〓が出てくるのは書いてないことは分かっていますよ。
フォルディス)自分は音楽家であり本を読み始めた時、NYに住んでいた。当時のガールフレンドが「象の消滅」を勧めてくれて気に入った。
オリジナルでユニークなスタイルが素晴らしいと思った。ストーリーを語る以外のところ。

短編集は一冊分の集積として異界が侵入してくる(とは?!)


村)「神のこどもたちはみな踊る」は、ロックで言うとコンセプトアルバムの様に作り、6つの小説が入るので、個性的な話を書く中で変なものが出てくる。異界から侵入してくる。「かえるくん地球を救う」は、純文学と余りにもスタイルが違うため、連載時に編集から難色を示されたが、本にしてみるとあれが一番世界中でウケている。

ピ)(映画化でかえるくんが登場するのは)自然だった。意外ではない。
村)一冊の集積として、出てくる。
ピ)フランス語版のかえるくんのCVをやっている。
村)僕もカエルくんはうまい。
ピ)声優のオーデションもしたが、私自身がかえるくんの声をやりたいことに気がついた。

村上マジックリアリズムの理解点が見える面白さ

村)映画は3つほどの小説が再構築されている。6つ?そうか、そんなにあったかな。その組み合わせは面白いと思った。
ピ)6という数は、
「かいつぶり」は、当初入れていなかったが、間に入れようとなり、最終的に〓だけ残った。
神秘的でマジカルな物を捉えたかった。
植物の根が絡み合うように、同じ人物の別の側面であると感じるようになった。
繋ぎ合わせていき、ストーリーと人物が反映し合う創作へとつながった。
村)ドライブマイカー、バーニングなど、短編の映画化は嫌いじゃない。(小説だけでは足りない部分を監督自身のもので)足していかないといけない。
短編から作った方が意欲的なものが出てくる。 
〜短編の映画化を打診し、了承を得たが、複数の短編を複合して作りたいと申し入れた経緯がある〜
ピ)どうぞ短編から好きに選んでくださいと言われた。
〜制作は実写を一度スタジオで撮影し、演者のモーション等々を落とし込んでいる〜
ライブアニメーション実写だ。

「風景が面白く、よく描かれている」

村)日本に長く暮らしたのですか?風景が面白く、よく描かれていた。
ピ)4回来日した。私のアプローチは、現実の日本を描くのではなく、私のインスピレーションに忠実であれ、と描いた。そのもの、ではなく、解釈。
村)ラブホテルの内装がリアルだった。
ピ)行ったことはないので、行かないといけない。写真を見て自分のバージョンを構築した。

果たして、マジカルな長編アニメ化では「人々の声」は描かれていたのか

村)映画にしてほしいのは「アンダーグラウンド」。あれは、人々の声が書かれているので。
ピ)個人としては、村上春樹が地震をどう位置付けて「アンダーグラウンド」を執筆したのかに感銘を受けた。

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