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GAPのパーカーを着て中指を立てる



あの時の私は
GAPのパーカーを着ている人を
一人残らず滅ぼしたかった
GAPが嫌いだったわけではない
GPAがヤバかったのだ



単位がヤバい…

正確には評価がヤバい
単位が取れなくてヤバいのではなく
GPAがヤバいのである


私の行っていた短大は
セメスター制で半年分で成績が出る

うわー
Bばっかり…

そりゃあ1限をできる限りサボってたら
こんなもんだよね
うちの短大は出席厳しいもん…


私は卒業後は大学に編入するつもりで
この短大に入学した
MARCHの短大なら
姉妹校に入りやすいと踏んでいたからだ

編入にも学内推薦入試がある
もちろんGPAによって
受かるかどうかが左右される

前期の成績が出た時点で
残りの単位をすべてS評価になったとしても
姉妹校への学内推薦を受ける事は
ほぼ不可能だった


おそらくだが編入志望の同級生は
1年の前期から気を抜く事などせず
出席も試験も万全にしていた
推薦を狙っている子たちは
全出席した上で評価はSをもらっていた


うちの短大は
MARCHへの内部推薦のほかにも
お茶大や上智など
けっこう良い所に
毎年編入試験をパスしている学校だった

姉妹校への推薦はオールA以上が求められるらしい
姉妹校が無理でも
どこかに入らなければなるまい


よく同じ講義を受ける子と
ちょいちょい話すようになった
名前はマイだ

その子は帰国子女枠で
うちの付属の高校に入ったものの
成績が芳しくなく
外部受験もうまくいかず
うちの短大に進学したのだった

「お母様がね、親戚の方に
マイちゃんはどこに受かったの?って
聞かれた時に、ただ"大学です"っていうの。
短大じゃ恥ずかしいんですって。」

暗い表情でそう語る姿は
まるで自分を見ているようで
少しつらかった


「私の家も同じ感じだよ。
お母さん、短大っていうだけで拒否反応でてるし。
お互い頑張って編入しようね。」



編入すると公言していると
仲間が集まるものだ

「レナちゃんだよね?私も編入したいの。
教育学部に行って教師になりたい。
やっぱ成績良くないとダメかな?」

同じ講義を取っている
話したことがない子が
隣に座り話しかけてきた
かなり真剣な面持ちだ

「たしかユウコちゃんだよね?
私前期のGPAヤバかったから
これから頑張るよ
姉妹校の推薦は無理だろうけどね。」

こんなふうにして
編入や留学希望者の友だちが増えていった
友だちというより戦友だ

みんな
「ここで終わりたくない」
「自分はまだ頑張りたい」
そんな悲痛な叫びを
胸に秘めていたように感じた

それと同じくらい
メラメラとした熱いやる気も持ち併せている
格好いい子たちだった


編入試験は普通に大学受験をするよりは
簡単らしいと聞いた

それは本当だろうか…?

なにはともあれ
後期はまじめに出席しようと決めた


いつかGAPのパーカーを着て
大学受験に中指を立てる人生を
歩んでみたい

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