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ごめんねジュリエット。

「もう、あの教授が終了10分前に訳の分からんフランス映画流すから…ごめんね?遅くなっちゃって。」

合流する時間が少し遅くなってしまったことを詫び、友人と一緒にサークルへ向かう。サークルの活動場所までは約7分。授業の愚痴から始まったはずの話題はなぜか映画のロミオとジュリエットに変わっていた。確か若い頃のレオ様がカッコイイとかそういう話から派生したような。

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映像は綺麗だけど台詞がクサくてむしろこっちが恥ずかしくなってくるんだよ。と笑うと友達が例えば?と聞いてきた。例えば…

第2幕第2場、かの有名なバルコニーのシーン。感情が高ぶったロミオは美しい月にジュリエットへの愛を誓おうとするけれど、ジュリエットはこう遮るんだ。

やめて、夜ごとに形を変える月なんかに誓うのは・・・貴方の愛まで移り気に思えるから、誓わないで。

「え!賢いね!!ジュリエット賢い!」

ロミオの台詞は全力の苦笑いでスルーした友達がジュリエットの台詞に目を輝かせた。

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賢い、かぁ…と心の中で首を傾げる。

何日か前に見上げた中秋の名月はとっても綺麗だった。それを見てロミオの台詞はクサいけれど、こんなに月が綺麗なら気持ちはわからなくもない、なーんて思ったんだっけ。

雲ひとつない闇の中に浮かぶ満月があまりにも綺麗だったから、本当にジュリエットの言葉が理解できなかった。あんなに綺麗な月に誓ってもらえるなら幸せじゃないか。

最初から最後までロミオ大好きオーラをずっとずっと纏ってるのになんでそこでノれないの?ジュリエット、素直じゃないなぁ。ヒロインとしては主人公を全肯定してる方がかわいく見えるし、愛され女子としての賢い行動じゃない?

そうジュリエットに頭の中で説教はしていたものの、感心しきっている友達に反論はしなかった。そもそも、今はそういう時間じゃない。実際、話題はタイタニックのレオ様へとすぐに変わった。

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サークルが終わり、1人の家路。ふとさっきの雑談を思い出して空を見上げる。

月は……見えなかった。

あぁそうか、見たくても見えないことがある。それが問題だったんだ。

ただ月が見れないだけでも、期待してたのに…とどことなく寂しくなる。ジュリエットは台詞の行間に"変わらぬ愛をちょうだい"と込めたんだ。なるほど、ただ嬉しい!とロミオの台詞に便乗するよりもよっぽどいじらしいし、それをストレートに言わないのも愛しい。ロミオの誓いに喜ぶだけを80点とするならば、間違いなく100点の回答だった。どうしてそれに気づかなかったんだろう。高校の時の国語の先生に行間を読めと散々言われてきたのに。

ごめんねジュリエット、前言撤回。完敗です。やっぱりあなたは生粋のヒロインでした。

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秋月みのり
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