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もっと早くに会っていたかったな。

「わかったさんとかこまったさんとか読んでなかった?」

「え!読んでた読んでた!!」

「やばい懐かしい、なんかこしょうめっちゃかけて敵撃退みたいな話あったよね?」 

「あったあった!!!」

「食べ物系だとぐりとぐらが好きだったな〜」

「「わかる〜!!」」

いやぁ楽しかったな…‼︎昨日サークル同期と会う予定があって、いつの間にか始まっていた小さい頃に好きだった本の話。

わかったさん、こまったさんシリーズ、怪談レストラン、ぐりとぐら、おばけのてんぷら、わすれられないおくりもの、フレデリック、スイミー。わかおかみは小学生!、黒魔女さんが通る!、パスワードシリーズに夢水清志郎事件ノート…。

話がどんどん弾んで、どんなシーンが好きだったかを話して共感したり、自分も読んだことある!と思い出したり。猛スピードで進んでいく話に夢中になっていたらいつの間にか時計の針は一周していた。

楽しい時間はあっという間で。同期と別れ、1人の帰り道。

…もっと早くに同期に会っていたらなぁ。

そんなことを考えながら、小中学生の頃の記憶に想いを馳せた。

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私は、本が大好きな少女だった。

両親が小学校の先生で読書家なこともあり、家にはたくさん本があった。たくさん図書館に連れて行ってくれたり、私が気に入った本は買い与えてくれたりした両親には感謝してもしきれない。

…でも、私は孤独だった。本について語れる同世代の友達がいなかったんだ。田舎の小さな学校。同じ学年は30人程度しかいない。そんな中で昼休みの度に図書室へ足繁く通うような人は私しかいなかった。みんなが鬼ごっこやサッカーをしている間、私は洋ダンスから広がる素敵な世界や華麗に事件を解決する名探偵達に夢中になっていた。

クラスメイトが本を読む期間なんて10月の本を読みましょう週間だけ。それも読んだ累計ページ数を競う、みたいなものだったから正直今思えばちゃんと読んでいたのかは怪しい(笑)それに、クラスメイトが読んでいたものは漫画やアニメのノベライズだったり、怪談話だったり…。児童文学の名作と呼ばれるものに夢中になっていた私とは圧倒的に読んでいたジャンルが違った。

学級文庫にあった大判で美術館みたいな絵が書いてあったあの本はまだあるのかな。私以外読む人がいなかったから読もうとする時にはいつも積もったホコリをはたかなきゃいけなかったっけ。

面白い本を私に教えてくれるのはいつだって母だった。エルマーの冒険には特に夢中になった。私も竜に乗って冒険がしたい!エルマーずるい!なんて思ったっけ。

でも、一度も友達に本を勧めてもらうことはなかったし、私も勧めることはなかったと思う。

中学3年生の時、痺れを切らした私は図書委員になって、"オススメの本の木"という企画を立てた。自分のオススメの本を葉っぱ型の紙に感想と一緒に書いて、幹の絵に貼る、というシンプルな企画。すごく楽しみだった。みんなのオススメする本を早く読みたいなと思ったし、先生達も企画を褒めてくれた。

でも、友達、後輩達の反応は悪かった。めんどくさい、ダルい…そんな言葉を吐きながらはられた葉っぱ達。それを見ているのも悲しかったし、オススメされた本もライトノベルと当時はやったケータイ小説がほとんどで。私は本のことを友達に話すのをやめたんだ、いや、諦めたと言っても良いかもしれない。…私と同じジャンルを好きだという人はマイノリティであることを突きつけられた瞬間だった。

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今の大学に入って、学問として文学に触れるようになった。今年の夏にとった授業は児童向けの絵本についての授業。初回にあなたが好きだった絵本を持ってきてねという課題が出た。

驚いた。同じ授業を受けていた人の手にあるものは私が小さい頃に触れてきた本ばかりだったから。カラスのパン屋さん、ぐるんぱのようちえん、きんぎょがにげた、いやだいやだ…教室が絵本の名作の展覧会みたいな状態になった。うわぁこれが大学か。そう思った。

話が合わないのは私にとって辛いことだった。私は地元を出て、大学に入ってようやく話が合う友達に出会えた。ようやく同じような経験をして、同じようなものに触れて夢中になった友達に出会えた。

地元の事が嫌いなわけじゃない。お祭りの雰囲気は大好きだし、人口が少ないからこそ良い意味での内輪感もある。

でも、やっぱり今出会えている友達と話がとっても合うから。私は今を、この大学生の時を大切にしたいんだ。

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秋月みのり
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