チョコミントと憂鬱。
私が大学1年生の時好きだった人は、チョコミントのアイスクリームが好きだった。
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同じ演劇サークル、同じ大道具の先輩。学年は1つ上だけど年齢は先輩が浪人をしていたから2つ上だった。パッチリとした二重で、器用、ゲームが好きで、とことんネガティブ思考の先輩。口は悪いけれどなんだかんだ優しくて、私がサークルを辞めたいと泣いた時にも慰め、相談に乗ってくれた。
そして、先輩には…同期の照明に所属する彼女がいたんだよな。
先輩と、先輩の彼女のInstagram。ストーリーに同じ場所が上がるのを見ると落ち込んだ。サークルの中で茶化されてるのを見た後は、現実を突きつけられてるような気がして、家で泣いた。今思うと笑ってしまうくらいくだらなくて、些細なこと。でも18歳の私はその些細なことにひたすら振り回されていたんだ。
私達のサークルは、講演前、週6で活動する。彼女よりもよっぽど同じ時間側にいるのに。サークルに行くと先輩に会えることがとても楽しみで、とても嬉しかったのは嘘ではない、けれど。一種の空しさは先輩とたくさん話をしても、一緒にたくさん笑っても埋まることはなかった。
先輩の彼女と自分を常に比べていた。何で私は先輩の隣にいられないのか。自分と彼女の違いは何ですか??何度心の中で先輩に問いかけたかわからない。
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ある日、大道具の仲間との雑談の中で、好きなアイスの話になった。私は何と答えたか忘れた。バニラかイチゴのどちらかだと思う、多分。同期はなんて答えてたっけ。7人同期はいたはずなのに誰の答えも覚えていない。でも、先輩の好きなアイスの味はハッキリ覚えてる。
『俺はチョコミントが好き』
俺も私もと声が上がる中で、私は黙りこくっていた。
私はチョコミントが苦手だ。チョコと歯磨き粉を一緒に食べたような気分になるから。
あぁ、でももしかしたら先輩の彼女はチョコミントのアイスが大好物なのかもしれない。勝手な自分の妄想に自分で落ち込んだ。先輩の彼女の好きなアイスの味なんて知らないし知りたくもないけれど。
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当時、遅刻した人はアイスを買ってくるという大道具独自のペナルティがあった。
その日寝坊してしまった私は、昼休みにスーパーに行き、お昼ご飯とアイスを買った。色んな味があった方が良いかなと思い、選んだのはバニラバーと聞いたことない会社が出しているパルムもどき、そしてチョコミントのアイス。
もちろん、チョコミントは先輩のために買った。そして、先輩はチョコミントを選んだ。先輩は嬉しそうにアイスを食べ、こう言った。
『俺、チョコミントのアイス大好きなんよ』
知ってます、だから買ってきたんです。と言えたらどんなに楽だっただろう。
そうじゃなくても、せめて隣で同じようにチョコミントのアイスを食べ、
「やっぱりチョコミント最高ですね!」
と共感できたら。好きな人が好きなものをちゃんと好きだったならば、少しはマシだったのに。
良かれと思って買ったチョコミントのアイスは憂鬱を私に連れてきただけだった。なんだよ、ミントが入ってるのに、全然さわやかじゃないじゃないか。