欲と冥加/昔話が伝えようとしていること
『文渓堂・発行 「むかしむかし3」 かぐやひめ/したきりすずめ/おむすびころりん 内田麟太郎・文 ザ・ギャビンカンパニー・絵』
写真はこの絵本の帯の一部です。最近この本を知り、青と黒を基調として描かれた表紙に惹かれて買って読みました。
昔話は、念を押して、さらに念に念を押して、抜け目のないように、落ち度のないように、同じことを幾つもの違う物語で知らせようとしていると思います。
欲が強いと、優しさを失うこと。
悪を働けば、最後は取り返しの出来ないことになること。
善がわからない心でいると、神が救えないこと。
「したきりすずめ」では、おばあさんが、「おむすびころりん」では、となりのおじいさんが、悪度胸で暴れまわりますが、それは欲に切りがないからで、冥加を知っていればしないことが極端に表現されています。
本来、人は天地の花で、この世ではないところから天地の世界へ来ることに恵まれ、人生の本義を知って身魂(みたま)を研(みが)き、命の略奪ではない正式なお迎えが来たら安らかにあの世へ旅立つ。その幸せを知ることの大切さ。「かぐやひめ」の物語には、五人の求婚者の悪度胸のことに加えてそのようなメッセージがあるのかもしれないと思いました。
久しぶりに昔話を読んだのですが、日々に新しい自分になっていきなさい、と呼びかけられたような気持ちになりました。
(了)