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【過去記事】1つのお店でラオス・キープはもちろん、タイ・バーツも米ドルも流通!商品によって支払い通貨が違う、ラオスのお金の話

※本稿は、2013年3月に『ザイ・オンライン×橘玲 海外投資の歩き方サイト』に執筆した内容を、掲載元の許諾を得て掲載しています。
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日常的に2~3種類の通貨が財布に

 ラオスでは、様々な通貨が出回っている。まず、自国通貨であるキープ(LAK)。次に隣国タイのバーツ(THB)。そして、世界通貨の米ドル(USD)。これらがほとんどの場所で両替せずそのまま使用できる。

 だから、ラオス人(と在住外国人)は、日常的に2~3種類の通貨を財布に収めている。バーツ表示をされたからといって、キープで支払うことも可能だが、店側が決めたレートなので分が悪い。また、いちいちレート計算をするのは面倒でもある。だから、どの通貨で払うことになっても良いように財布にしまい込んでおくのである。

 1997年のタイ・バーツ危機で巻き添えを食って下落したキープは、現在は1ドル=7900キープほどで安定しているが、今でも信用度が低いのか、近隣国ですら両替することができない。

 キープは、ラオス国内でしか通用しない通貨である上に、追い打ちをかけるように外国通貨がそのまま国内で流通している。これでは困ったものだと、ラオス政府も「ラオスを愛するならキープを使おう」キャンペーンを実施したものの、強制するまでには至っていない(ただし、レストランの価格表示は、ほとんどキープに統一された)。それは、役人も生活上不便になって困るからなのだと思う。

 市場に行くと、面白い現象に出くわす。商品によって表示される(交渉制なので口頭で)通貨が違うのだ。これは、輸入されている国の通貨でそのまま計算するのが売り手にとって便利だからなのだろう。

こじんまりとしているが、これがラオス中央銀行【撮影/『テイスト・オブ・ラオス』】
空港入り口のビルボードに掲げられた「愛国ならキープ使おう」キャンペーン【撮影/『テイスト・オブ・ラオス』】
ラオスの通貨キープ。ラオス数字と西洋数字が並ぶ【撮影/『テイスト・オブ・ラオス』】


同じ棚に並んでいても、ワイシャツは「キープ」、ポロシャツは「バーツ」

 それでは実際に市場を見てみよう。

 生鮮食品は自国で生産しているので表示は当然キープ。日用品の石鹸、シャンプーなどはタイから輸入されているが、こちらも実はキープ表示。これは額面の小さいバーツの場合、コインになってしまうから受け取りが面倒だという理由が背景にあるのではないかと推測する(キープにはコインがなく、全て紙幣のみ。そのため、コインを収容する財布がないという事情もある)。

 その他、家電コーナーで販売されている物の表示通貨を調べてみた。

●「キープ」で表示のもの=アイロン、炊飯ジャー、電熱鍋、商店用冷蔵庫(中が透けて見えるタイプ)。

●「バーツ」で表示のもの=家庭用冷蔵庫、洗濯機、扇風機、電子レンジ、冷水機。家庭用スピーカー。

 店によってはタイ語の説明が記載され、タイ製品だと言われて売られていたが、キープ表示の商品があった。業界事情に詳しい人に話を聞いてみると、これらは実は中国やベトナム製だという。中国製やベトナム製はラオスでは人気がないようだ。

 次に、衣類・装飾品コーナーに覗いてみた。

●「キープ表示」のもの=ワイシャツ。

●「バーツ表示」のもの=ポロシャツ、サンダル、時計。

 圧倒的にバーツが多い中で、ワイシャツだけがキープ表示だった。また、面白かったのは、ワイシャツとポロシャツが同じ店の同じ列の商品棚に並べられていたのに、表示通貨が違っていたこと。覚える側の店員は面倒臭くないのだろうか。

 さて、最後に国際通貨である米ドルの表示。これは不動産や中古車市場で使用されていた。中古車のほとんどは日本・韓国から輸入されており、円は流通していないので、替わりにドルが充てがわれたのだろう。

 不動産の事情に詳しい人に、米ドル表示の理由を聞いたところ、キープやバーツだと額が大きすぎて買い手が怯んでしまうかららしい。1万ドル=30万3000バーツ=7900万キープという具合に。

 表示通貨を聞いて、生産国を判断し、偽物か本物かまで見分けることができれば、あなたも「ラオスの買物上手」と言われることだろう。

首都・ビエンチャンで一番有名なマーケット、タラートサオ近くの家電販売店【撮影/『テイスト・オブ・ラオス』】
「タイ製」と偽られて売られていた中国製、ベトナム製の家電【撮影/『テイスト・オブ・ラオス』】


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