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【過去記事】中流家庭の家計はどんな感じ?ラオス人の家計簿をのぞいてみた!

※本稿は、2012年8月に『ザイ・オンライン×橘玲 海外投資の歩き方サイト』に執筆した内容を、掲載元の許諾を得て掲載しています。
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 ラオスは2004年、首都ビエンチャンでのアセアンサミット(東南アジア首脳会合)開催後、急速な発展の道を歩んでいる。いずれも国際会議など国を挙げたイベントが契機となり、09年のシーゲーム(東南アジア競技大会)が、日本の東京オリンピックと同じように国家発展の象徴として盛大に行われた。

 12年はASEM(アジア欧州会合)という過去最大の首脳級国際会議が首都で開かれる。ラオス経済の景気は、過去最高潮に達している。

 さて、日本で普通に生活しているとラオスの情報はほとんど入らないと思うが、ラオスというのはどのような国なのか。

 今回は、人々の暮らしぶりをあらわす家計という視点からラオス人の生活を見てみよう。

お金に無頓着なラオス人

 ラオスでいわゆる"家計簿"というものは、実は存在しない。熱帯気候に暮らす中で大らかに細かいことをあまり気にしない性格になったのか、仕事でもメモを取る職員は少なく、感覚で物事を覚えようとしている。家計も同様に捉えられているのだ。

首都ビエンチャンの目抜き通り、ランサーンアベニューに建つ凱旋門【撮影/森卓】

 11年前、私は長期貧乏旅行の最中に中国雲南省からラオス北部に入国した。舗装された幹線道路が国境を越えると赤土に変わり、国境職員の顔つきも穏やかになった。ストリートを飛び交う怒鳴り声、痰を吐かれる心配が無くなり、体力勝負で交通機関のチケットを競うように買う体験もせずに済んだ。一日中アドレナリンが分泌されなければ生きていけない肉食世界から、まさに時の止まった草食世界に入り込んだ。そこが、その当時の中華思想の限界線であり、同様に拝金主義の境界線でもあった。

 当時のラオスは、悪く言えば世界の発展から取り残された地域であるが、人々は余ある空間と時間を楽しんでいた。そのため、家計への圧迫もなく、人間関係を重視するゆとりが保たれ、旅行者に対する金銭の執着が全くなかった。

 そんなラオス人は現在、どのように暮らしているのか。ある一般家庭を覗いてみよう。

「妻と子ども2人、母親と同居、自営業」の中流家庭の場合

 ラットさん(仮名・42歳)は、妻、子供2人(13歳、10歳)、高齢の母親との5人家族で首都に暮らす。本人は自宅兼商店の店番をし、妻は民間学校で事務員として働く。

 家計はベトナム系ラオス人である妻が管理している。多民族国家ラオスの中で計算が優れているといわれるベトナム系の奥様だが、それでも家計簿はつけていない。

 彼女の頭の中での金銭管理を聞き取りし、表にして"家計簿"を作ってみた。

 かなりざっくりした"家計簿"である。収支の合計はいちおう黒字だ。

 ラット夫婦は自分達を中流家庭だと自称する。持ち家に暮らし、韓国製の小型車を所有しており、2人の子供の為に家庭教師を雇う余裕もある。そして、僅かではあるが貯蓄もできているという。今のラオスの、理想の中流家族(家計)像が、ラットさんの家計簿に表れている。

 妻は、「富豪にならなくてもいい。今は必要なものが揃っているので私たちは幸せです。これから子供の為に何をしていくかと夫婦でよく話し合っている」と話す。

 とはいえラオスも、日々の生活の中では、通信産業や外食産業で価格競争が繰り広げられるようになり、また、社会の中では高学歴が優先され就職事情も変化してきている。お金に無頓着で人間関係を重視するゆとりが保たれてきたラオスも、競争社会へと移行しつつあるのだ。

 彼らの子供たちの世代になれば、幸せを維持するのに親以上の努力が必要になるのだろう。

ラオスならではの特別な出費も!

 また、ラットさんの家計簿には出てこなかったが、ラオスならではの重要な家計支出として交際費がある。

 なかでも、逃れられないイベント交際費があり、その一つが結婚式のご祝儀だ。

 ラオスでは、結婚式で招待状が配られ一枚で2人が出席できる。 結婚式で用意される一人あたりの食費程度は包まなければという感覚が暗黙の了解で、それが大体一人8万LAK(約808円)、その倍以上を包むことになる。

 そして、恐ろしいことにラオスでは、親戚や近しい友達以外のよく知らない人にも招待状が配られるので、1000人規模の結婚式というのがザラにあるのだ。

 総人口650万人(首都70万人)であるから、一人あたりの結婚式参加回数は当然多くなる。週一は当たり前、知人の多い人だと1日に3軒はしごし、月に15回以上を超える人もいるという。

 人々は副業として出勤(出費だが)するように結婚式場へ足を運ぶのである。1カ月の間に15回出席し、月当たりのご祝儀が240万LAKともなると堪ったものではない。これはかなりの家計負担になる。

 だが、ラオスで生活する以上これは避けられない。というのも、ラオスはコネ社会なのだ。知人が多いと仕事にも役立つが、出費も同様に覚悟しなければならない。

 また、人間関係を重視するラオスでは、仏教関連の行事、村行事などにも寄付したりと多少の出費が発生する。こちらは、1~2万LAKなどの少額であるものの、月に数回発生したりもする。村での付き合いもお金がなければ始まらないのだ。

首都ビエンチャンに残るのどかな風景【撮影/テイスト・オブ・ラオス】
よくある商店はこんな感じ【撮影/テイスト・オブ・ラオス】

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