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【過去記事】国際経験豊かな首相の登場でラオスの動きが活発に

※本稿は、2017年6月に『ザイ・オンライン×橘玲 海外投資の歩き方サイト』に執筆した内容を、掲載元の許諾を得て掲載しています。
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 これまでもレポートしてきたように、2014年から構想を始め昨年ようやく形となった、日本ラオス初の合作映画『ラオス 竜の奇跡』が、6月24日(土)公開される。現在、東京、名古屋、大阪と回り、順次全国ロードショーの予定だ。

 そして、先日、東京駅最寄りの商業施設「KITTE」で映画公開記念プレイベントとして「ラオス博2017」を開催した。地下1階のインドア会場で、ラオス関係者による講演、ライブミュージック、ラオス大使館による本格ラオス料理や1番人気のラオスビール「ビアラオ」などを提供した文化発信型イベントだった。

 来場者は2日間で1万人を超え、盛況で無事終えることができた。正直、ここまで順調に来場者があるとは意外だった。というのも、外国のフェスが盛んな代々木公園ではなく、丸の内エリアで初めてのラオスイベントだったからだ。来場者の中には、ラオスをまったく知らない人も多かったようだ。

 日本でラオス関連の動きが活発だが、ラオス本国の動きも変化してきている。

国際経験豊かな首相の登場

 2016年4月にラオスではトーンルン新首相が誕生し、それまでの体制から一変して矢継ぎ早の改革を実施している。自由な質問形式による自由な記者会見、フェイスブックでの首相動向の発信、木材の不法伐採及び輸出の禁止などなど、これまでの首相が手付かずで残していた問題の解決や税収の確保に取り組んでいる。これらの国民視線の政策はラオス国民の熱烈な支持を集めている。

 こうした動きは、トーンルン首相が外務大臣として諸国を外遊してきた中で培われた国際的な感覚が基本となっているのかもしれない。2016年は2回目となるアセアン議長国を引き受けた年でもあったが、これまでにASEM(アジア欧州会議)など、数々の国際大型会議のホストを経験してきたからか、これまでに比べてかなり余裕の対応がなされていたのではないだろうか。

首都ビエンチャンの国家主席府(©Japan-Laos Creative Partners)

 ラオスへの国際航空路線の拡張も昨今の著しい発展の一つだろう。現在、直行便が就航しているのは、タイ、ベトナム、カンボジア、シンガポール、マレーシア、中国、そして、韓国だ。韓国との直行便は、毎便満席に近く、多くの韓国人観光客をラオスまで運んでいる。本国に比べ安価なゴルフツアー客が多いというが、芸能人の訪問などでもラオスの露出は韓国で高まっているようだ。

 そして、気になる日本との直行便である。今年3月下旬にラオスのソーンサイ副首相が来日し長崎を訪問した。それは、この夏を目処にしたラオスとの直行便計画に基づいた訪問で、ラオス航空が持つ小さなジャンボジェットだと偏西風の影響があるため、途中給油が必要になる。その給油地として目をつけられたのが、長崎だった(ちなみに、復路はラオスー成田の直行である)。それから、水面下の調整が続いていたようだが、6月初めのトーンルン首相の訪日時に出た発言では、年内の就航を目指したい、と修正されていた。

 年内というのは、現在ラオス政府内で企画が進む「ラオス旅行年2018(Visit Laos Year 2018)」行事の一環としての就航を目指すということになるだろう。ニューヨークタイムズ紙で「今一番行きたい国」に選ばれたラオスは、これまでの東南アジアの内陸国という閉鎖的な立場から、着実に世界へ向けて、ともに歩む姿勢を打ち出してきている。

 とはいえ、ラオスは社会主義国だから、同盟国との協調路線も維持しなければならない。顕著な例として中国や北朝鮮が挙げられる。日本の外務省は、東南アジアで5カ国に囲まれたラオスは地理戦略上重要なパートナーとしている。

中心部の凱旋門から眺めたランサーン・アベニュー(©Japan-Laos Creative Partners)

ときには自然の流れに身を任せて

 さて、このような昨今の日本とラオスの関係だが、映画『ラオス 竜の奇跡』の中では、原題『サーイ・ナームライ(川の流れ)』にあるように、ラオスに流れる緩やかな川の流れのように、立ち止まり自然の流れに身を任せよう、というメッセージを込めた。

 4年後にオリンピックを控えた1960年(昭和35年)の熱気溢れる東京からラオスに渡った青年と、同じく急激な都市開発が進む現代の首都ビエンチャンから過去にタイムスリップする少女が出会い、人の絆の大切さに気がつくという物語である。

 本作の熊沢誓人監督は「人は、強く生きなければならない。強くなって世の中をちゃんと渡れるようにならなければならない。そのためにどうすれば良いのかを求めてしまう。しかし本当は、他者に生かされ感謝すること。それに気がつかせてくれたのがラオスだった」と言っている。

 日本に東京タワーが建つ前の時代や今のラオスの田舎社会から比べて、人々は寝る間を惜しんで仕事に没頭するようになった。スキルを極め、キャリアを積み、人生の残り時間をも数字で計算する生き方が普通になっている。

 しかし、ラオス人はこのように言う。「予定どおり進むことなんてないんだから、先のことを計画しても仕方がない」と。お互いが「ボーペンニャン(なんとかなるさ)」な国民性が良く表れているのだが、生真面目すぎる日本人の性格に疑問を投げかけること、立ち止まって自分を見つめ直してみることも大切ではないだろうか。

 ラオスが持つ緩やかな空気、他者を思い感謝する社会が、現代の日本人にとってのラオスの最大の魅力であり、価値観なのではないかと思う。

 それを体感できる映画やイベントを通して、日本全国を巡回する。これから1年間の日本ラオスの動きに、注目していただければ幸いだ。

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