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3年ぶりの師との対話

私には師がいる。
デザインの師であり、私に人生のイロハを教えてくれた大きな人だ。
(実際名前が大で始まって大で終わるという大が二つもある大きな名前をしている)

そんな師とは仕事を一緒にしなくなって10年以上がたった。

それでも年に何回かは庭の手入れをさせてもらう口実で家を訪れて、お昼を共に過ごし、近況を報告などしていた。せめて私ができる恩返しは庭の草刈りくらいしか思いつかなかった。

師は私の現状の報告を聞くと
「10年遅い」
といつも叱咤激励する。

私はいつも、それを聞いて感謝する。
その言葉を聞くと「なにくそ」と馬力がかかる。

・・・

しかし、世界中で移動制限がかけられ私は丸2年以上ラオスでの滞在を余儀なくされた。
師はガラケーでネットというもの以前にパソコンすら持ち合わせていないため、連絡が途絶えてしまった

唯一の連絡手段であるショートメールはどうやらラオスから日本へは届かないらしい。

・・・

そんな移動制限も徐々に解除され、私は一時帰国で日本の地を訪れた。
早速ショートメールを送る。

「先生、ご無沙汰しています。2年ぶりに帰国しました。草は伸びてませんか?また刈りにいかせてください。」

師からメッセージが返ってくる
「連絡ありがとうございます。草は気にせずまずはゆっくりされてください。」
電話に出ない師とのやりとりはショートメールが一番なのだ

・・・

そうこうしているうちに、あれよあれよと忙しくなってしまった。
バタバタバタバタしてるうちに、月日が過ぎる。

・・・


帰国してすでに10か月。思ったより長い滞在になってしまったけれど、そろそろラオスに戻るころ。
忙しさに流されてしまっていたけれど、行く前に一度やっぱりあって話がしたい。
そう思いメッセージを入れた。


・・・

「11時半に駅での待ち合わせ」も、私は知っている。
師はもっと早く来て待っているだろうことを。
それを見越して11時10分にいったら、そこにはすでに師の姿が。
なんという速さ!
さすが予想を常に上回る。
やっぱりまだまだ追い越せない。

・・・

「お久しぶりです。先生元気でした?」
などとお決まりの挨拶をしながらランチへ向かう。

しばらく話をしていると
「世界はマッハへと向かっている」
と相変わらずの面白い洞察の言葉が飛んできた。
「一方で自分へ向かう軸も持ち2極化している」
と深い言葉にうなずきながら、今度は私の近況を伝える

今、ラオスで自然栽培で森を作って、生体材料でケア製品をつくってるんです」
・・・などと端的にまずは伝えた。
言ったところで理解などされないのが普通だろう。
ところが、この短い説明に、師の反応は全く私の予想を覆すものだった。

「面白いじゃん!」

それを皮切りに次々と言葉がでてくる

だね。どんな白にするか、そこにどんな線を引くか」
「化ける化粧じゃなくて、細胞に話しかけるケア
呼吸を変えて自分と向き合うこと」
「きれいなモデルじゃなくて樹木希林さん」
「音は音楽じゃなく、。水が落ちる音、木がこすれる音、風の音。」
宇宙であり量子である」
「森のなかで自分と向き合うこと」
「当たり前の日常
などなど。

私のほんの少しの報告からイメージが浮かんでくるんだろう。
そしてそれがどれも的確なのが驚かされる。やはりかなわない。

間違いない。と確信し私は師にこう尋ねた。
「先生、私はまだまだです。ぜひこのプロジェクトのデザインをCI計画から一貫してチェックしてくれませんか?」と。
師は言う
「山本が本気でこれをヒット商品にしたいなら、全力で力をかすよ」

ほとんどの仕事を断っていると聞いていたため、ダメ元だったけれど、まさかのありがたい言葉。
「また一緒に仕事ができる!」
と喜びを覚えていると

「山本がここまでいくとはな。海外でいろいろ肌で見てきたからやろうな。山本は5割くらいしか見てないから気づいてないと思うけど、実は肌が残りの5割を見てるから。」
と続けて話し始めた。

肌が見てる」これもまた商品のコンセプトともつながるなぁ
と感心していると、

最後に一言

ここまでいったかぁ。追い抜かれたな

とポツリと付け加えた。

私は鳥肌が立ち、肌がしびれた


「10年遅い」と会うたびに叱咤していた師が
「追い抜かれた」
という言葉を使ったのだ。

とてもとても追い抜いたとは思えないけれど、その言葉がとてもうれしかった。一方でこれは「10年遅い」という言葉より、もっと重い叱咤激励のようにも思えた。

私ができることは、本当に追い抜くことだ。

このプロジェクトを通じ、世界でここしかない最高を作ることで、その恩に報いたいと思う。

感謝。

サポート頂いた場合は、食べれる森作りを中心に、南ラオスの自然を大切にする農場スタッフのための何かに還元させてもらいます。