〔詩〕ウソだよ、ほんとだよ
トイドローンがほしかった
絶対に手に入れなきゃいけないと思っていた
あの丘の上で二階建ての屋根を見下す
大きなクヌギのてっぺんに、
知らない鳥を見つけてからずっと
その鳥はね、ウソだった
ほんとだよ
スズメより大きくて
文鳥よりカラフルで
どうしてだか
ちょっと肥満で坊ちゃん刈りした
カシミアかなんかのセーターを着た
お金持ちの家の小学生を思い出す
そう、昭和の白黒写真ぽい子ども
トイドローンでね、
至近距離からウソを撮るんだ
ほんとだよ
それからね、南の道の向こうにある
トンビの巣を撮るんだよ
ヒナの声が聞こえるからね
そっとそっと、
距離を置きながらね
ある日、丘の下に立ったら
大きなクヌギが消滅していた
切り株がそこにあった
うずくまったサイみたいに
あたしはダイアン・フォシーの気分で
怒り狂いそうだった
クヌギが殺された
クヌギが殺された
クヌギが殺された
でも何も言わなかった
あたしの木じゃないから
トイドローンなんていらんわ
草地も森も死んでるようにしか見えなかった
シャッターを下ろしたから
あたしはすぐにシャッターを下ろすから
でもね、クヌギは今年、
逆さまにした庭箒みたいな枝を
いっぱいに生やしてた!
残念ながら、
ウソが止まるにはまだまだ背が低いみたいだ
ほんとだよ
ダイアン・フォシー ルワンダの森林で18年間にわたりマウンテンゴリラの生態系の調査を行ったアメリカの動物学者、動物行動学者、生物学者