AIアートで稼ぐのは本当に簡単?30日間のEtsy販売実験から見えた現実
最近、AIを活用した副業が注目を集めています。特にMidjourney、Stable Diffusion、DALL-Eなどのテキストから画像を生成するAIの登場により、「AIアートを販売して稼ぐ」という新しいビジネスモデルが生まれています。
今回は、とあるカナダの青年がEtsyという手作り品やヴィンテージアイテム、クラフト用品などを売買できるプラットフォームを利用して、どれくらい稼げたかという実証実験になります。
実験の概要
目的
AIで生成したシームレスパターンアートをEtsyで30日間販売
収益性と実現可能性の検証
必要な作業工程と時間の把握
使用したツール
Midjourney:AIアート生成
Gigapixel AI:画像のアップスケール
Photoshop:サムネイル作成
E-rank:Etsy向けキーワードリサーチ
ChatGPT:商品説明文やタグの生成
具体的な作業プロセス
1. パターン生成とアップスケール
まず、Midjourneyを使用してパターンアートを生成します。通常のプロンプトの末尾に「--tile」コマンドを追加することで、シームレスに繰り返し可能なパターンを生成できます。
しかし、Midjourneyの出力は72 DPIで1024×1024ピクセルと、Etsyの標準である300 DPI、3600×3600ピクセルには不足しています。そこでGigapixel AIを使用して画像をアップスケールし、さらに高品質な6144×6144ピクセルサイズまで拡大しました。
2. 商品リスティングの作成
Etsyでの出品にあたり、以下の要素を準備しました:
商品画像:サムネイルと詳細プレビュー用の2種類のテンプレート
価格設定:市場調査の結果、1パック2.49ドルに設定
タイトルとタグ:SEO対策を考慮したキーワード選定
商品説明:ChatGPTを活用して作成
ダウンロードファイル:Google Driveを活用して8パターンをまとめて提供
3. マーケティング施策
100以上のリスティングを作成
合計800以上の個別パターンを生成
Etsy広告(1日1ドル)を実施
30日間の結果
売上実績
販売数:2パック(ビンテージレースパターン1つ、ナバホ族パターン1つ)
総収入:7.47ドル
経費内訳
Midjourney購読料:31.50ドル
Etsy広告費:15ドル(15日間)
Etsy手数料:
取引手数料:0.48ドル
処理手数料:0.73ドル
販売者税:0.15ドル
リスティング料:21.40ドル(107リスティング×0.20ドル)
最終損益
総支出:69.26ドル
純損失:61.79ドル
見えてきた課題
1. 市場の飽和
AIツールの普及により、誰でも簡単にパターンアートを作成できるようになった結果、市場が飽和状態になっています。差別化が非常に困難な状況です。
2. 低価格帯での競争
Etsyでのデジタルパターンの価格帯は1〜5ドルが一般的で、100ドルの利益を上げるためには53パック以上の販売が必要です。広告費を考慮すると、さらに多くの販売が必要となります。
3. 露出の問題
新規出店者は評価がないため、検索結果での表示順位が低くなりがちです。広告を出稿しても、即座に効果が出るとは限りません。
まとめ
というわけで、残念ながらこの実験は芳しくない結果で終わってしまったようです。
AIアートを活用したビジネスは、ツールの使いやすさから参入障壁が低く見えますが、実際には以下の要素が重要となります:
マーケティングスキル
商品の差別化戦略
長期的な視点での事業計画
適切な価格設定と収益モデル
単にAIで画像を生成して販売するだけでは、持続可能なビジネスを構築することは困難そうだということがこの実験から見えてきました。
しかし、この実験から得られた知見を活かし、より付加価値の高い商品開発や、効果的なマーケティング戦略を組み合わせることで、成功の可能性はあります。
AIツールは確かに強力な武器となりますが、それはあくまでもビジネスを構築するための一要素に過ぎません。成功への鍵は、これらのツールをいかに効果的に活用し、独自の価値を創造できるかという部分での勝負になってきますね。