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恋沼 『最近奥さんと上手くいっていないんだ』叶子編

『子どもが熱がでて、お迎えがあるから今日会えない。ごめん』
そんなことを言われたら、
『そっか』
しか言えない。

秋になる、外で吸う煙草が心地が良い。

セッタメンソールに煙草を買う。
煙草の葉をトントンと煙草の箱たたく。
ビリビリと破いて、更にトントンと叩く。
『おぉつ一本だけ出てきた。今日はいい感じ』
ライターに火をつけて、思い切り息を吸う。
肺の中にメンソールが染み渡る。

『奥さんと別れるから後少し待って』
この台詞ほど嘘に満ちた言葉はない。

歩き煙草をしながら、路地を歩いていた。

思って以上に、商店街には人がいて、
煙草をいやそうに観る人が多い。
昔は堂々と吸えたんだけれどな。

攻められているような気持ちになり、
煙草を吸いながら路地裏に足早に逃げた。

路地裏は思った以上に暗くて、
明るい方へ走っていた。

そこには一件の中庭の綺麗な家があった。

『うわぁ綺麗なお庭』
中からリスが一匹でてきた。
『あら可愛いリスさん』

その様子をみていた庭の中の綺麗な女性。
『庭を褒めてくれてありがとう。入ってく?』

『えっいいんですか?』

『どうぞ』
綺麗な女性は庭へ案内してくれた。

『お茶?ビール?』
そういいながら、灰皿を用意してくれた。

『じゃぁビールで』
煙草2本目に火をつけながら、
『私もあんな美人だったらあの人は奥さんと別れてくれたのかな』
手の中にある缶ビールが少し冷たく感じた。
秋は深まってきているらしい。

『好きな人がいるの?』
綺麗な女性はマルボロを吸いながら、
私に聞いた。

『既婚者なんです。子どもさんもいるんです。
奥さんと仲良くないと言われたんですけれど、
別れる別れると言われて3年。
だまされるとわかってるのに』

綺麗な女性はただ私は見つめていた。
そして、そっと灰皿をかえてくれた。

『どこで出会ったの?』
『音声配信です』
『最初は聴き専門だったんだけれど、
彼の方法は楽しくてコラボして
それからどんどん彼にはまっていきました』

私は時計を見て、
『彼が生配信をする時間だ。聴かなきゃ』
音声アプリを立ち上げようとした。

綺麗な女性は私の携帯をすぅと取り上げて、
巾着袋にしまった。

『スマホを開けると底には沼があるのよ』
『今だけでも、あなたはあなたいなさい』

私は、言われてはじめて気付いた。
いつの間にか私は彼の沼にはまっていた。

『ありがとう。ねぇいい人いるかな?』
『もちろん、世界中にいるわよ』

『あなたの魅力にあなたが気づいたら、あなたはモテだすわよ』

綺麗な女性は地味な私に鮮やかな着物を譲ってくれた。
あなたは綺麗な深い赤が似合うわ。といいながら、
ボタンの花の浴衣を着付けてくれた。

ちょうど、商店街では盆踊りをしていたので、
ボタンの花の浴衣を着たまま帰宅した。

のんべえの私は、
商店街で立つ飲み屋でビールを飲んでいると、
『お嬢ちゃん、火かしてくれない?』
隣に座っていた人が声をかけてきた。
『その着物レトロで似合ってるね』

新しい恋を着物が連れていた。

横の男性と話しながら、
既婚の彼の電話番号をブロックした。
『さようなら、別れる別れるサギ野郎』

秋は恋のはじまりの季節。
新しい恋の火が燃えはじめた。


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ともりん@テレワーク講座・動画講師講師•ビジネスサポート
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