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コップにギリギリまで水を注ぐ遊び

コップに水を注いでも中々溢れない。水と空気の境界線が滑らかに丸くなる。この現象を表面張力という。

子供の頃の私にとって表面張力は不思議なものだった。絶対に溢れるはずなのに溢れない。でもその理由を深く考えることは無く、地球の法則を覆す魔法のようなものだと捉えていた。よく水をコップいっぱいにいれて「表面張力〜」と言いながらキャッキャしていた。私は当時魔法が使えたのだ。

でもいつの日からかそんなこともしなくなった。コップ満タンの水を飲むのがしんどいのだ。

そしてそのまま月日が経って19歳の私は「表面張力」という名前を忘れていた。

今日ふと名前が思い出せないことに気づいた。1分ほど考えたけど本当に思い出せなかった。

こういう風に人間はしばらく経験しないと忘れてしまうものなのだ。多分他にも大事なことをいっぱい忘れているのだろう。

そう考えるとなんだか悲しい気がするのだ。



end

#エッセイ

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