マルチジョブホルダー制度
1. 65歳以降も働く人は増えています。
総務省の労働力調査(基本集計)によると、65歳以上の就業者数は令和3年912万人と、10年前に比べて60%増えたそうです。金銭的な理由や社会とのつながりを持っていたいという理由もあると感じます。65歳以上にはフルタイム求人が少ないことによるのかもしれませんし、また体力面や自分の時間も大切にしたいということで、短時間労働で複数の勤務先を掛け持ちするケースもあるようです。
2. マルチジョブホルダー制度
令和4年1月に雇用保険で始まった新制度「マルチジョブホルダー制度」をご紹介します。雇用保険は通常、1つの事業所で週労働時間が20時間以上、31日以上の雇用見込みの条件を満たすと加入できます。マルチジョブホルダー制度は、65歳以上で複数の事業所に勤務し、2つの事業所の週労働時間が計20時間以上、それぞれの雇用見込みが31日以上などの条件を満たすと雇用保険の加入対象になり、雇用保険の被保険者(以下「マルチ高年齢被保険者」といいます。)となることができる制度です。
マルチ高年齢被保険者であった方が失業した場合には、一定の要件を満たせば、高年齢求職者給付金(被保険者期間に応じて基本手当日額の30日分または50日分)を一時金で受給することができるようになります。
65歳以上の労働者に限定して令和4年1月1日からこの制度を試行実施し、その効果等を、施行後5年を目途に検証することとしています。
3. 保険料の負担
加入後の保険料は労働者と事業主で負担しますが、新制度では、労働者の保険料は2つの事業所それぞれの賃金に保険料率を掛けて計算します。令和4年度の料率は、建設などを除く「一般事業」が9月末まで0.3%、10月からは0.5%。月賃金が合計10万円の人が毎月払う保険料は天引きで、それぞれ300円と500円になります。
4. セーフティネット
失業手当にあたる高年齢求職者給付金を受給できます。
給付金は失業した事業所の分が対象で、2つの事業所のうち、1つで失業しても受給できます。離職前1年間に2つの事業所合算で11日以上働いた月が原則6カ月以上あることなどが条件になります。なお家族の介護が必要になり、介護休業を取得したときの介護休業給付金も通常の被保険者と同様に受給対象となります。
さらには教育訓練給付も対象となるとされています。
5. 雇用保険加入は自分で申請。
雇用保険は一般的には雇用主が加入手続きをしますが、マルチジョブホルダー制度では、“利用者が自分で申請する”必要があります。
手順としては、利用者が条件を満たす事業所を2つ選び、必要書類に本人と事業主がそれぞれ記入する。事業主は雇用の事実を確認できるように雇用契約書や出勤簿なども利用者に提供する必要があります。その後に利用者が自分の住む地域を管轄するハローワークに書類を提出することによって、申請日から被保険者となることができます。
詳しくは管轄のハローワークでご確認ください。
参考:厚生労働省「【重要】雇用保険マルチジョブホルダー制度について」
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000136389_00001.html)
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