環境保護活動をしている先住民やNGOの命がたくさん失われているという恐ろしい事実
golobal witnessという国際NGOによれば、2022年だけで、自分たちの土地や人権、環境を守るために勇敢に立ち向かったことで殺害された人の数は、確認できただけでも世界で177人にも上るとのことです。
2日に1度は環境活動家が殺害されていることになる、恐ろしい状況です。
しかも、2012年以来の殺害総数の累計は、1,910人にも及びます。
殺害されたのは先住民だけではなく、政府関係者、デモ参加者、公園管理人、弁護士、ジャーナリスト、そして子供までが含まれています。英国ガーディアン紙の記者まで殺害されています。
詳細は、下記のgolobal witnessのレポートをご覧ください。
このような恐ろしいことが起こっている現場の多くが、グローバルサウスと呼ばれている地域です。
これらの国や地域では、法律が未整備であったり、法があっても守られていないことが多く、先住民の権利も軽視されています。
では、なぜこのような恐ろしいことが起こるのでしょうか。
分かりやすい例がブラジルです。
ブラジルの広大なアマゾンには、非常に多くの先住民が住んでいますが、彼らが住んでいる土地の所有権は曖昧です。
彼らにも生活のための場所はある程度決まっていますが、そこで生活を営んでいるからと言って、彼らがその土地を所有しているとは限りません。その地域に複数の先住民がいる場合での、いわゆる”実効支配”はあるものの、法律に則った”登記”がある訳ではないことが多いようです。
法的に少数民族の居住地として定められていたとしても、実質的には国や地域行政がその権利を守る機能を果たしていないことも多く、単に紙に書いただけの権利となっている例も見受けられます。
このような背景があることから、アマゾンの木を切り倒し、その木材を売ったり、新しく畑を作ったり、牧畜や貴重な金属を採掘するなどして利益を得たいと思う人達にとって、そこに住む先住民は邪魔ものであり、簡単に追い出せる対象に見えてしまうのです。
先住民や、彼らの権利を守り、アマゾンの環境を守ろうとする人たちに対して、物理的に排除することを厭わない勢力が存在し、恐ろしいことに実際に実力行使をしている訳です。
同様のことは、南米ではメキシコやホンジェラス、アジアではフィリピンで多く発生しています。
しかも、これらの殺人事件は迷宮入りになることが多く、結果的に人権や環境問題と事件の関係性を明確に示すことも困難です。
このレポートで非常に興味深いのは。このような不幸な事件の背景としてフォーカスされているのが、”問題ある採掘”だと言うことです。例えば、ブラジルのアマゾンでは、違法な”金採掘”によって、先住民が様々な脅威にさらされ、それに反対する人たちが殺されているとされています。
私も長く食品会社に勤めていたため、”アマゾンの違法伐採”と聞くと、すぐに牧畜や大豆が思い浮かんでしまいます。まさか、ブラジルでマイニング(採掘)が問題になっているとは知りませんでした。
マイニングの場合、当然ながら、このような無法者たちは環境や人権に配慮しないので、採掘に伴って土地や川が水銀などで汚染され、住民に健康被害が起こります。日本人なら教科書にも出てくるので足尾銅山の例を思い出すことができるでしょう。採掘による汚染と健康被害は、非常に甚大です。
当然、違法採掘を止めようと、先住民をはじめとして、環境NGOや人権保護団体などが活動を開始する訳ですが、そういった人たちが迫害され、殺される例が多数出ているという構図になります。
さらに、このレポートの事例からは、このような問題あるブラジルの採掘によって得られた金を、グローバルなハイテク大手が購入しているとされています。
少数民族の問題は、日本人には身近とは言えません。まして、地球の裏側のアマゾンの森林の中で起こっていることを、手触り感を持って捉えることは中々できません。グローバルサウスの問題は植民地主義の現代版ともいわれていますが、これも日本人にはピンときません。
しかし、EUで企業サステナビリティデューデリジェンスに関する指令(CSDDD)が発行し、2年以内に人権・環境に関するデュー・ディリジェンスを企業に義務付ける法整備が進んでおり、日本でも準備を始める必要があります。もちろんそれ以前に、こんなことは規制がなくても対応するべき問題です。
EUDR(欧州森林破壊防止規則)の方に関しては、持続可能な農業を進めたいと思いながらも資金がなかったり、複雑なことに対応するのが難しい農園には配慮が必要だと思っています。しかし、このような人の命に関わることでは、厳しい規制が必要であることは理解ができます。
カーボンクレジット”も、”自然を基盤とした解決策”でも、実はクレジットを確保するために先住民が森から追い出されて得られたものが含まれる実態は良く耳にします。住民が殺され、それによって作られたクレジットだったら、やはり許されるものではありません。
“そこまでやる必要があるのか”、”そこまで責任はとれない”と思いがちですが、それが求められている背景には、このような深刻な問題があるということは、理解しておく必要があります。
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