CSRDの施行の延期や実際の運用負荷低減の可能性
どうやら、CSRDの施行についてもEUDR同様に、延期や実際の運用負荷低減の可能性が出てきたと、Responsible Investorが報じています。
この記事によると、11月20日の時点で、CSRDの国内法化まで辿り着いた国が15か国。7か国は議会に法案を提出している段階で、2か国は協議段階、ベルギー、オーストリア、ポルトガルは協議すら開始できていません。EUは指令までを行い、実際の国内法は加盟各国で個別に法令化することになっています。
国内法への適用状況は、以下で確認できます。
本来、11月中旬までにCSRDの国内法制化ができない場合、その国はEUから制裁される仕組みですが、そういう動きも見えません。EU本体に躊躇が見える感じです。
Responsible Investorの別の記事によると、EU議会議員の約半数が、CSRDの厳しい内容を緩和することに共感しているとのこと。一番最初に法制化したフランスでは、国内で撤回の大合唱が起こっているとも言われています。
これらの反応を受けて、CSRDの「簡素化」が唱えだされています。CSRDは報告に必要な指標(約1200?)が多すぎるという批判が多いため、指標の数を削減する事を指していると思われます。
また、一度にすべての項目を対象にするのではなく、実績のある気候変動から始め、その他は順次で展開する案もあるようです。こちらは、ISSBの歩みと歩調を合わせるという意味で理解できます。
ダブルマテリアリティが複雑さの原因という意見もありますが、これを除くとCSRDの根本が変わるので、ここは変えない気がします。
このような状況の中で最もあり得るのが、各国の実施段階で、法の執行を「支援的」にする案です。
いきなり厳しい罰則で縛るのではなく、まずは報告してもらうことを優先し、細かな齟齬は問わない。徐々に全体の報告レベルを上げていくことを優先するという方法です。
ドイツがこれを考えているとの報道が出ています。一番厳しい罰則を制定したドイツも、連立政権崩壊、政権選択選挙が目の前と言う状況では、厳しいことばかりも言えないものと思われます。
この記事でも批判していますが、EU委員会は規制の法制化は得意ですが、実施と報告をどうやるのかの方法論を示すことが不得手すぎます。
いずれにせよ、EUDRのように、直前でバタバタするのはやめてほしい。というのが、多くの企業担当者の気持ちのように思えます。
尚、11月19日にあったESRSの非EU向けウェビナーでは、非EU企業の要件はかなり緩和されそうなことを言っていました。適応案は来年1月に提示され、それから3〜4月のコンサルテーションがあるそうです。実際の適用は28年からですので、まだ先のようにも思えますが、意見はしっかり提出した方が良いと思います。アメリカで政権が変わることもあり、意見を通しやすい環境になるかもしれませんし。