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先住民・地域コミュニティーとは誰か?
EUDRを巡る混乱は、世界的な環境課題をローカルに適用し、解決に結びつけることが如何に難しいかを私たちに明らかにしました。
前職で、スリランカの小農園への認証取得支援を2015年から始めましたが、中々進んでいません。
その理由は、小農園のグループの複雑さにあります。
スリランカでは歴史的な理由から、イギリスが始めたプランテーションの流れをくむ大農園と、支配者に反発して自律的に始めた小農園の2つの農園タイプが存在します。
茶摘みをすると茶葉は直ぐに発酵してしまい小農園では処理が難しいことから、小農園の茶葉は大農園に売却され、そこで加工されます。
小農園は数十から数百の農家でグループを作っており、国から許可をもらっているコレクターと言われる人たちが集めて大農園に運びます。
ところが、この小農園のグループが、必ずしも行政の単位ではなく、且つ国が農業を管理する際に使うグループとも完全には整合していません。
そのため、小農園をグループ化して認証取得トレーニングをする際に、どうやって、どのグループに、どういうルートで接触し、且つ管理するかが非常に難しい状況です。
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多分、これは他のグローバルサウスの小農園に共通ではないかと思います。
先日聴いていたEMMA4EUのウエビナーでも、グループ化されているカカオ農園は支援を受けているが、そうでない小農園は放置されている問題点が指摘されていました。
私たちは非常に安易に「先住民」や「地域コミュニティ」という言葉を使いますが、具体的にそこに接触した経験を持つ人は日本では少ないと思います。つまり、実態を理解していて、この言葉を使っていないのです。
実際は、先住民や地域とエンゲージメントしようにも、それを代表する人が誰なのか、そもそもグループ化されているかも良くわからないことが大半です。
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また、EUDRの場合は土地領域のポリゴンが必要ですが、グローバルサウスでは、そもそも土地の所有権、使用権の概念が違う場合が多くあり、混乱を招いています。所有権の概念が薄く、使用権の意味合いが濃い場所もあります。
国が管理しているのではなく、地域の長が管理している場合もありますが、そうなると特定の地域に組み込まれていない人には何のルートもないことになり、彼らを放置してよいのか?という議論も発生します。
私たちは固定観念からは逃れられません。そのことを肝に銘じ、それぞれの国や地域には複雑さがあることを想定し、理解し、その中で解決策を探る努力が必要です。