見出し画像

国境を超えるCSRDの行方

企業サステナビリティ報告に関する指令(CSRD:Corporate Sustainability Reporting Directive)が、25年度から段階的に義務化されますが、この規制の大きな問題は、国境を超えること。

日本企業であっても、EU域内に一定規模の子会社がある企業は、その会社だけではなく、親会社含めて報告義務が発生します。
当然、EU以外に本社を置くグローバル企業からは不満が出ます。EU以外の国の中には、治外法権だと気分を悪くしている国も多そうです。勿論、トランプ米次期大統領が、CSRDを好きになるとは思えません。

さらにはEUの内部も一枚岩とは言えません。EUの仕組みとして欧州委員会が指令を発した後、実際の法令化は各国で個別に行うことになっています。
ところが、期限である7月になってもベルギー、ドイツ、スペインを含む17のEU加盟国が法令化していないとして、EUから警告を受ける事態になっていました。

EU規制を推進してきたドイツは、選挙で与党が大敗し、連立政権が崩壊してしまいました。

ドイツのシュルツ政権の中には「みどりの党」が入っており、これがドイツを環境政策で先進的にさせてきました。しかし、ドイツ経済を支える自動車産業は、先鋭的なEV化が中国の格安EVに対抗できず、遂にはフォルクスワーゲンが史上初めて国内工場の閉鎖を宣言。それに反対する大規模なストが発生するなど、EUのグリーンニューディールが経済活性化にはつながらないことを国民に痛感させてしまった典型例となっています。

既にEUは森林規制であるEUDRについて、多くの反対に会い遂に1年延期に追い込まれたばかりです。
一方で、CSRDがビジネスにメリットをもたらすと回答している企業も多くあるようですが、殆どがグローバル大企業です。
PwC:CSRD報告への期待と現実

環境を守るには、規制も必要です。でも、前にも書きましたが、EUが経済規模で世界をリードする存在ではなくなっている現状で、グリーンニューディールでEUが新市場で独り勝ち、なんて、明らかに無理。世界中の多くの国々がEUの説教と傲慢さに辟易としているのも隠せない事実です。
COP16に参加されたnatcapのCEOであるLeapeさんが、「会場でTNFDには注目が集まっていたのに、CSRDは明らかに影が薄かった」と言われていたのも、物凄く気になっています。

「CSRDよ、お前もか」

になるのなら、早めにお願いします。
と思っている企業は多そうです。

いいなと思ったら応援しよう!