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CDPの「自然を育む:アジアにおける自然ベースの金融のリスク軽減」レポート
最近、CDPが活発な動きを見せています。正直、ISSBやEU規制など、非財務情報の開示が義務化されていく中で、自主的な開示と評価を行うCDPの立ち位置は微妙になってきているのかな?と勝手に想像していました。
その危機感があったのかは不明ですが、ここ数か月、CDPは様々な開示ガイダンスの団体とのコラボレーションをアグレッシブに進めてきたように見えます。
そんな中、10月に入ってCDPが発表した「Nurturing Nature:De-risking Nature-based Finance in Asia(自然を育む:アジアにおける自然ベースの金融のリスク軽減)」レポートがまた、非常に面白い内容になっていたので紹介します。
内容が、アジアのNbS(自然を基盤とした解決策)の課題と促進策に絞られているのも、大変に興味深いところです。
ポイントを簡単に箇条書きで示すと、以下の通りです。
アジアには世界の森林の18%があるにも拘わらず、生物多様性が棄損されることで、自然に依存するアジアのGDPの3分の2が危険にさらされる危険がある。
途上国では、自然関連のプロジェクトは必ず土地が関わってくるが所有権の問題など複雑になり費用が掛かりがちである上に、政府に長期計画がない。
途上国でのNbSでは、マルチステークホルダーのプラットフォームの上で議論するランドスケープアプローチが必要。
しかし、CDPフォレストで開示されているランドスケープアプローチで、信頼ができる開示は50%しかない。
NbSは助成金に頼る時代から、商業的に実行可能なプロジェクトに変わる必要がある。
以上のようなリスクがあり、回収期間が長く、さらに評価ツールも揃っていないために金融機関はNbSへの投資に躊躇しており、企業にさらに透明性ある開示を求めている。
一方で、金融機関がそもそも自分たちの自然リスク評価をやっていないことが課題。
金融機関が自ら自然関係の依存度、影響、リスクと機会の評価をしっかり行うことが、NbSの投資を促進することに繋がる。
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実際のNbSでのランドスケープアプローチの重要性にも言及していますし、ランドスケープアプローチでは適切な「介在者」がいる、というのも大切な言及ですが、最も面白いのが、
「開示を待つのではなく、金融機関がまずは自らポートフォリオの自然関係の依存度、影響、リスクと機会の評価を徹底的に行うことが必要。」
と、金融に文句をつけていることですね。同感です。幾ら企業が頑張って開示しても、金融がこれを正しく分析・評価する能力や、そもそもやる気がないなら、ネイチャーポジティブに資金はやってきません。ボールの片側は金融にあるのです。
CDPは投資家側に立って「企業に点数をつける組織」と揶揄して見られている面もあると思います。
しかし、そういう狭い役割から、より広い役割を担おうとしているのだとしたら、今後の活動には大いに期待したいところです。
シンプルに構成され、非常に納得性のあるレポートですので、読む価値はあると思います。