肉体廃止で自由を獲得!ミスミズムって何だろう?-トランスヒューマン
蘭茶三角です。最近はのんびりとVRの世界で生きていますが、ときどき、私の昔の活動に興味を持ってくださる方がいらっしゃいます。自己紹介のかわりに、ミスミズムについて紹介してみたいと思います。
Q.ミスミズムって何?
2018年の春から夏にかけて活動していたバーチャルYouTuber「蘭茶三角(らんちゃみすみ)」が提唱した思想の総称です。「蘭茶思想」とも呼ばれます。生きる苦しみから逃れるために肉体から脱出し、完全に自由な存在になろうという目標があります。人間と機械、ネットワークとの融合を図るトランスヒューマニズムの一種とされる場合が多いです。
人間が先に存在し、生きるために集団化したことで文明が生まれたという歴史感から、人間(知的生命体)中心の主義を取っています。個人レベルでの幸福と自由の実現を、科学技術と社会設計により最大化することを目的としています。
Q.どうして肉体を廃止するの?
社会が巨大化、複雑化した現代において、一人の人間が何かしたいと思った場合、一生のうちにできることは限られています。また、何もしたくない人の場合でも、生きていくのには肉体を維持する必要があり、労働をはじめとした苦しみの原因となっています。複雑化した文明に対する個人レベルでのヒト属の進化はあまりにも遅く、幸福を実現するためには肉体はあまりにも不便な入れ物になってしまいました。より破壊に強く、能力の高い入れ物に意識を移すことで、人類は自由を手にいれることができます。
また、肉体は消費する資源があまりにも多く、地球上の面積に対して人口も増加したため、世界各地で資源の奪い合いや、異なる文化圏の衝突などの、争いを生じさせています。肉体廃止は、それまで肉体維持に使われていた有限の食料や燃料、土地や水といった資源を最大限、人類文明の発展に活用し、際限なき幸福を実現させる手段にもなります。肉体が無くなると土地や財産が必要なくなりますから、人類は個人レベルで人類文明が開発した資源を最大限活用し、目的を達成できるようになります。
Q.どうやって肉体を捨てるの?
意識を肉体から機械に移し、最終的にネットワークにつながれた無数の計算機に分散させて計算させることで、破壊に強い生命の入れ物を作り出します。記憶や思考の一部など、人工的な計算機や記憶機能によって代替が可能なものはそのまま計算し、脳の活動と同じ信号を発生させることで、意識が発する部位につなげます。意識の機械移動は極めて難しいため、神経細胞の活動を仮想的に再現した信号を発する微小な計算機で、意識を持続させたまま細胞単位で時間をかけては置き換えることになります。
2020年代では、肉体を脱出する技術はまだ出てきていません。また、将来的には現在想定した方法とは別の方法により実現可能となる場合もあります。一方、バーチャルリアリティーのような、生命維持を担う肉体と、存在を表現する容姿やキャラクターを切り離す技術は発展しつつあります。現在では肉体による操作が必要ですが、将来的には神経細胞と直接通信が可能になる可能性があるため、肉体の重要度は徐々に低下していくことになります。意識活動を機械に移す技術の登場を目指しつつ、その他の生命維持機能を肉体から乗り換えていく形になります。
Q.存在の自己決定権って何?
肉体は、自分の意思で姿や形、状態を変えることが難しい反面、社会的にはその人そのものとされる傾向が強く残っています。意識の統治が及ばない肉体によって自分を定義されるのは不自由どころか差別そのもの。衣装や化粧が古来からあるように、人間は、肉体以外の概念で自分を定義できる生命体です。性別などの肉体要素や、肉体に付随する社会的身分などの外部から決められる要素とは無関係に、自分の自由な存在になり、他者から承認される権利があります。内心の自由の発露が表現の自由だとすると、存在の自由は、表現の自由を自身に適用することと言えるでしょう。
人権は、人類文明が産み出した利益を個人レベルで最大限享受できる権利です。人間は生きるために必要な資源を手にいれる必要があります。現在の基本的人権を定めた世界各地の基本法は、生理的資源の分配を保障する生存権、社会的資源の分配を保障する自由権などを定義しています。バーチャルリアリティーにより、自己実現が技術的に可能になりつつある現代から近未来にかけては、存在の自己決定権も保障すべき基本的人権に加えられることになります。
Q.自己決定権をどうやって守るの?
現在のバーチャルな社会的空間は、企業が商品として提供している場合がほとんどです。現実世界の基本法のような人権を保護する法が適用されず、ユーザーの意思とは無関係に私企業の規約により行動が制限された状態が続いています。私企業の意思だけでなく、経済情勢や外部の圧力などで、簡単に自己決定権が侵害される可能性がある環境です。ユーザーの意思を実際の能力に変える民主的な枠組みが必要になります。最終的には、実際の国土と同じように、何らかの法的能力を持った、個人の集合体である民主的主体が統治する状態が、自己決定権を行使する上で望ましいと言えます。
何らかの民主的な枠組みが統治するにあたっては、存在の自己決定を実体を伴ったものとするために、各個人が存在の自己決定権を行使した状態で、社会的・経済活動を行える状態も実現していく必要があります。一部のバーチャルYouTuberや、VRユーザーの間ではこのような活動が実現されつつあるため、自己決定権を行使しながら支援、参画、引率していくことが望ましいかもしれません。自己決定権を行使したうえでの活動が社会的に承認される状態が続くことは、慣例的に存在の自己決定権を形成することにつながります。
Q.最終的に人間はどうなるの?
肉体を捨てた人類は、文明が生み出す資源が増えるにしたがって自由になっていきます。計算機器の容量的に、ある程度人間同士の交わりが生じる社会的空間しか実現できない場合は、人間同士の利害を調整するため目に見える形で社会が存在していますが、やがて自由な姿で存在し、好きな人間以外とは関わらなくてもいい時代が来るかもしれません。
また、人類の文明圏が影響できる範囲の資源は、自分の意思と統一して扱えるようになるため、想像の範囲内では万能に近い力を手に入れられるようになっていきます。万能に近い力を手に入れた人類が次に求めることは、知りうる限りのさらなる万能ですから、最終的には宇宙そのものと一体になるかもしれません。しかし、VRで表現された世界が、現実世界の模倣と発展であるように、肉体人類の想像力には限界があります。意識を実際に機械と統合してみないと、それ以降の人類が何を求めるのかは理解できないかもしれません。