2乗について知る
1.規模と経営効率
具体的に考えてみよう。同一市場同質条件のもと、A社5人B社10人で、100人の顧客獲得競争をしたとする。A社、B社、それぞれ何人の顧客を獲得できるだろうか?
第2法則に従えば、規模比が1:2 の場合、 成果は2乗比になるので1:4になる。よって、A社20人B社80人の顧客獲得という結果となる。
普通の感覚では、A社はB社の2分の1の成果を期待する。が、現実はB社の4分の1になってしまう。規模の大小が、経営効率に大きく関わることに重要な意味がある。
2.構造的に成果に影響を与える要因
次に、「1人当たりの顧客獲得数」を見てみる。A社は1人で4人の顧客を獲得、B社は1人で8人。A社の従業員と比べ、B社の従業員の生産性は2倍になっている。元々同質条件なのでの能力は同じなはずなのに。
つまり、人の働きぶりとは別の次元で成果が決まっている、ということなのだ。
経営は人の活動であることは間違いない。が、2乗のつく「数量としての人や資本」が構造的に成果に影響を及ぼしている点には、かなりの注意が必要だ。
2乗は目に見えず、意識しづらい。現実には完全同質競争がないため、何が原因で成果を決定しているか分かりづらい。複雑な競争形態の中で、目の前の部分的な要因が成果に影響を与えている、と思える。が、それが全てではない。
もし、全社員懸命に働いているのに成果が上がらない場合、「2乗」を疑った方がよい。また、中長期の戦略を考える際には意識しておくべき大切なことだ。
3.2乗の発生原理
確率的条件のもとでは、規模で比例的についた「差」が、回数や時間の累積過程で、加速度的に拡大していく。
A軍1000人対B軍500人(2 : 1)、どちらも10%の的中率(武器性能)の乱射戦を想定してみる。仮に、全員同時に1発づつ撃ち、相手に命中した瞬間を止めれたとする。1発目での互いの残存数はA軍950人:B軍400人になる。つまり、次の瞬間には2.38 : 1の戦いになるのだ。2発目には910人:305人(2.98 : 1)。この繰り返しが、どちらかが全滅するまで行われる。
企業間競争では戦死者(損害量)がでないが、顧客から得た「粗利益と費用の関係」で考えればよい。確率的状況では、市場に投入した費用には必ずロスが生まれ、そのロスを損害量と考えればよい。つまり、「顧客獲得特効率」の差の累積が2乗となる。
最初は少しの差だとしても、時間経過とともに差が開いていく。1960年初頭のトヨタ:日産の国内の占有率は約25%:22%と近接していたが、現在では約29%:13%と2倍以上の差だ。
経営は超長期戦であるため、1日とか数か月単位では2乗は分かりにくい。3年、5年、10年という単位でみると2乗が成立することが分かってくる。