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スタンダードとパスト・オブ・ザ・ロード


「Standard Products」、少し前の話題かもしれないがDAISOの新しいブランド。まだ、岡山に店舗がないのが非常に残念ではあるけれど、1時間半ほど車を走らせれば広島県福山市の夢ポートプラザにお店はある。綺麗に整えたれたシンプルなサイト(https://standardproducts.jp/)は、どこかノスタルジックな要素を感じる。日常の趣が容易に想像できてしまう写真は、その製品を使ってみたいという意欲に駆られるほどである。

県外に出向くことが億劫になっていた僕は、お店に行くことをしばらく先延ばしにしていた、何も予定していない2連休に「せっかくなら福山でラーメン食べて飲んで一泊でもしようかな、ついでに」と思い立ってからはすぐさま室内エアコンが壊れた車へ飛び乗り、猛暑日の中、汗をダラダラとかきながら鉄の塊を走らせた。

風景があまり変わらない田舎道、それでも久々に一県跨ぐ高揚感に駆られた僕は夢中でそれを楽しんだ。福山には一年半ほど住んでいたことがある。久々にみる景色、田舎道が続くと思いきや、スーパーやドラッグストアなど商業施設が密集している箇所がポツポツと存在する。この道中(2号線)にある極端なまちづくりは福山へ向かうという行動ならではの風景といってもいいかもしれない。福山駅近辺のよく通った吉野家を見ただけで、懐かしさと嬉しさでいっぱいになる。

一通り数年前の記憶に想い馳せ終えたところで目的地に到着。
明らかに狙ったとしか言えない、LOFTの真隣に「Standard Products」はレイアウトされていた。夢ポートプラザの2階の奥まったところにひっそりと佇むが、宝箱を漁るような感覚で入る店内はワクワクで僕の心をすでに満たしていた。




店内はグレーのクロスに”Standard”にふさわしい”Products”がジャンルごとにしっかりと整えられ販売されている。某アパレルブランドを感じさせる色使い、ポップでカジュアルな収納箱や飴色、藍色がきれいに映える食器たちは見た瞬間に欲しくなった。決して種類が多いわけではないが、用途に合わせたお皿のサイズと、「こういうのが欲しかった」と思わせてくれる絶妙なカトラリーや箸置き。「Standard Products」のコンセプトの中にも書かれていた”ちょっといいのが、ずっといい”というテーマになるほどとすぐに共感できた。

僕は「Standard Products」に行くまでの間、着いてからもずっと物欲に塗れていたので、案の定しっかりと買い物をした。それもこれも”プライス”にある。ぐるっと店内を見た印象だと、一番高い商品で1,100円(税込)。それ以外は数百円がとにかく多いイメージだ。一番びっくりしたのが某家具ショップだと4,400円(税込)くらいしそうな時計が1,100円(税込)で販売されていたこと。最近時計を新調したこともあって複雑な気持ちにはなったが、ほぼ同じようなデザインでこのクオリティはずるいと感じるほどだった(写真がないや….)。

そして今回(まだ初めての来店だけど)買ってよかったランキング第1位は「包丁」。有名な岐阜県関市「世界三大刃物産地」としても知られる場所で作られたペティナイフ、三徳包丁、パン切り包丁だ。サイトの写真を見たときから気になっていたが、改めて実物を見るとやっぱり即買いした。”一番高い商品で1,100円(税込)”と書いたが、包丁はどの種類も1,100円(税込)同額という迷う理由がどこにあろうかと思わせる金額、そして持ち手は絶対木製がよかった僕にとって嬉しいデザイン。早くこれで白ネギを切りたい。

ほかには、特に用途を決めていないイエローとグレーの収納箱や布類、200円か300円か忘れたが、男前なペンケースも見つけたので買い物カゴへ。ペンケースはサイズ展開されていた、メモ帳や電卓が入るサイズもあったので是非検討してみようと思う。

お会計….3,740円(税込)。買いすぎた。ペティナイフと三徳包丁がほとんどを占めているが、それでも箸置きくらい我慢できなかったのかと思ったりはしたが、後悔の念などそもそも存在していない僕は思っただけに終わった。
自宅に人を招くことなど年間でも数えるくらいしかないのに、来客を想定して買い物を楽しんでいたのは不思議な体験で、僕が勝手にそう思っていただけなのか「Standard Products」にそう思わされたのかは分からない。楽しいひとときを僕は満喫した。

気付けばショップ内に2時間も滞在していた。物欲はほとんどない僕は、どこのショップに行ってもせいぜい30分程度。時間を忘れるほど夢中に買い物をしたのはハタチの頃古着屋巡りをして以来の出来事かもしれない。

ここまで2000字近く「Standard Products」について書いたが、あくまで僕のメインは「ラーメンを食べること」だ。忘れてはいけない、わざわざ福山まで車を走らせた理由を。数年前までは細々と、人も疎らにしかいない味わいのあるカウンターだけの店内が僕の心をぶっ刺した「尾道ラーメン一丁」。
福山駅から徒歩5分圏内、裏路地を入ったところにあるのだが、一体どこで何がバズッたのか店前は行列が出来ていた。なんだか寂しい。いや、嬉しいか、でも寂しい。仕方無いので様子を見ながら並び店内へ。

店内は数年前と変わらない景色が広がり「この感じ…」とシミジミ心の中で呟いた。まずは食券を買う、明朝体で書かれた「日替わりセット」を押すつもりが「ラーメン大盛」を既に押していた。頭の中でラーメンの文字しか浮かんでいないので当然の買い方と言えば当然。マックでわざわざハンバーガー単品とナゲット単品で頼むような買い方だけ少し後悔した。奥の席に案内されしばらくスタッフの動きを目で追いかけていた。

これだけ行列のできるお店で、カウンターもいっぱいになる状況だというのに、スタッフの動きはスマートで、暑苦しさを感じない。淡々とラーメンができていく過程は実に美味しそう。食器のカチャカチャとする音も聞こえない。ただただ麺をすする音だけが聞こえる。それはまさにBGMそのものだろう。こんなことを考えながらラーメンを待つなんて気持ち悪い気もしたが、全てを言語化したがるクセをやめられないでいる。頭の中がそんなことでゴチャゴチャしたころ、僕の「ラーメン大盛」「揚げ餃子」は完成した。

アツアツの背油が浮いた濃厚醤油スープと中太麺をすすり、コロッとした揚げ餃子を頬張った。故郷へ帰ってきたと思うのは何をしているときですか?と聞かれてたら「今です」と僕は答えるだろう。一年半という短い間ではあったが、僕にとってはなかなか濃いものあったから沁みるものがあった。




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