本当に大切なものは
みなさん、大切にしているものはありますか?
例えば家族とか、友だちとか。
人じゃなくても、大切な人にもらったネックレスとか、
学生時代に青春を費やした部活のユニフォームとか、
なかには、何度も捨てようと思ったけど捨てられない大切なものもありますよね。
4回の引っ越しで
私は人生で4回引っ越しをしました。
大学が家から遠かったわけでもなく、転勤があったわけでもありませんでしたが、
30歳までに同じ市内で4回引っ越しをしました。
そのたびに、捨てようか迷って、結局段ボールに詰めてしまい、
開かずの段ボールをそのまま次のワンルームマンションへ運ぶこともありました。実家から引き上げた小学校の文集とかもあったと思います。
私は人生を歩むにつれて増えていく大切なものと共に新天地へと腰を下ろし、いつのまにかその『物』たちが、
私の人生が在ったということを証明してくれるもの、とさえ感じていたように思います。
でも、34歳のとき私はその段ボールのほとんどを畳むことにしました。
つまり、長年一緒に連れ添った大切なものを捨てることにしたのです。
自分のアイデンティティを構築したと言えるような、幼少期から大事にしていたものもありました。
『ありがとう』の言葉と、思い出を浮かべながら、
ゴミ袋に入れました。
なぜなのか。
それは、本当に大切なものがなんなのか、
カンボジアのある女の子に教えてもらったからです。
貧しい暮らしの女の子
この写真は、カンボジアでの支援活動の中で行った、小学校で撮った1枚です。
カンボジアでは貧しい家庭も多く、学校に通えない子どもたちもたくさんいます。しかし、学校に来れているからと言って、貧しくないわけでもありません。
カンボジアで貧しさを見分けるポイントとして、
家の壁が何で出来ているかを見ると分かる、と教えてもらいました。
木材 ➡ トタン ➡ わら。
この順番は言うまでもなく、左から富裕層、普通階層、貧困層で、
右端の女の子の家は、わらで出来ていました。
2階から1階が透けて見える箇所や、
すっぽり足がぬけてしまうほどの穴もありました。
花束が教えてくれたこと
当時のSNSに投稿した文章を引用します。
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先日、1週間ほどカンボジアへ行ってきました。
孤児院や小学校を訪問させて頂いた中で、
ひとつ、わかったこと。
『 環境のせいにするのは、言い訳。』
言葉が通じなくても、
綺麗な服を持っていなくても、
靴を履いていなくても、
子どもたちには
豊かな心と、
思いやり、たくさんの笑顔がありました。
右端の女の子のこと。
一言も言葉を発しなかったけど
いつも笑顔で手を繋いできて、
道で摘んできた花を花束にし、
自分で作ったアクセサリーを
笑顔で腕につけてくれました。
精一杯の
おもてなし
子どもたちは美しかったです。
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この女の子は、とても懐いてくれていました。
いつも笑顔でした。
すぐに隣に来て、手をつないでくれました。
わらの家に住んでいる女の子は、いつの間にか花束をつくり、
自分で作ったアクセサリー2本も、私にくれたのです。
私が現地スタッフの方たちと昼食を取ったり、授業の準備をしている間に作ってくれたのだと思います。
無いからこそ、本当の豊かさが生まれる
なにもない。
必要最低限のものもない。
そんな生活をしてる人がたくさんいる国、カンボジア。
でも、ないからこそ生まれる豊かな心がある、そんな大事なことを教えてもらいました。
緻密に織り込まれたデザインのアクセサリー。
この紐やビーズは彼女にとって大事なものなんじゃないだろうか。
そう思った私は、
『もらっていいの?大事なものなんじゃないの?』
とたずねました。すると女の子は、
『全部ここにあるから』
そう言って、
ひらいた右手で自分の胸をトントンとし、ニコニコしていました。
本当に大切なものは、全部心の中にある。
そういうことか、と思いました。
『物』を残すことで大事にしていると思っていた私の思い出の品々は、
年に一度たりとも見てもらうこともなく、触れてもらうこともなく、
また、思い出してもらうこともなく時間だけがすぎていただけ。
たとえば子供の頃に買ってもらったおもちゃ。
買ってもらったことや、買ってくれたおじいちゃんの気持ちを考えたり、姉妹でこんなふうに遊んだりケンカしたりしたなぁと、
心の中で何度も思い出し反芻することで、
『物』としてではなく『家族』としての思い出が色褪せることなく心に刻まれる。
本当に大切なもを、大切にする方法。
それは何度も思い出すことだと知りました。
亡くなった人も同じだなぁと、ふと思います。
ある夏の終わり、お彼岸が近づいたときに家族でお墓参りの話になりました。
仕事でいけない、と言うとおじいちゃんはこう言いました。
『いつも心の中で手を合わせてたらそれでいいから。ご先祖さまも喜ぶから』
行くことが義務みたいになるよりも、
行ったとこでやった感を感じるよりも、
日頃の心をどう扱うかが大事なんだなと、改めて思いました。
話はそれましたが、
とにもかくにも、情報や物で溢れていることに慣れすぎないよう、
本当に大切なものを、
心から、大切にしていきたいと思いました。
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