それでもまだ、誰かを怒りますか? 誰かを憎みますか?
怒るとき、憎むとき、それらが自分に他人に先祖にどのような影響を与えるか、知っていますか?感情のコントロールができなかったために、また生まれ変わらなければならなかったら、また自分の子供や家族に自分のカルマを背負わすことになったら、どう感じますか?
怒りや憎しみを抑えることで、自分の何かを失うのではなく、物凄いポジティブな神聖なエネルギーが蓄えられていくことを知っていますか?
スワミが語られた以下の小話に、答えが見つかるかもしれません。
『ある時ひとりの弟子が、グル(霊性の師匠)のもとへ行き、ブラフマン(神)についての至高の知識をお授け下さいと、頼みました。グルは弟子にマントラを与え、少しの利己心もなくひたすら途切れることなく、マントラを唱えることを命じました。グルは彼に、1年間おこたりなく、全身全霊を込めて修行を続けた後に、ブラフマンの英知を受けるために、グルのもとに来てよいと告げました。
弟子は帰依の真心で、グルの教えを1年間実践した後、再びグルのもとへ行きました。至高の知識を授かる希望を胸に抱いて、彼は神聖な水浴を行い、グルのもとへ出発しました。
アーシュラムの境内を掃除していた召使の女が、弟子のいることに気付かずに、彼に土埃を浴びせてしまいました。するとその途端、彼は怒りを発しました。神聖な水浴をして清めた身体が、塵のために汚れてしまったからです。彼は埃をかけたことに対して、その掃除婦を怒鳴りつけました。彼は立腹して掃除婦を睨みつけたので、女は恐れおののきました。
弟子はグルのもとへ行き、敬礼して言いました。
「お師匠さま、わたくしはあなたの恩寵にあずかりたいと、この1年間待ち望んでおりました。今やっと願いが叶う時が参りました。わたくしはお師匠様から、至高の知識を授けて頂きたいのです。」
グルは言いました。
「そなたは至高の知識を授けてよいほどに、修行は積んでいない。そなたは蛇の属性を持っているね。不注意から埃を浴びせてしまったあわれなはしためを、そなたは怒鳴りつけたね。そんなささいな忍耐もできない者に、どうしてブラフマンの英知を授けることができようか。故郷に帰って、もう1年修行にはげみなさい。」
更にもう1年修行を重ねた弟子は、再びアーシュラムに出かけました。グルは召使の女に、掃除をしてその埃を全部、弟子に浴びせるように指示しました。彼女は前年、弟子にたいそう怒られたこと、もしまた同じように弟子の機嫌を損ねるようなら、きっと弟子に打たれるに違いないと言いました。しかしグルは彼女に、言われた通りにするよう命じました。
彼女は言われた通りに、掃きよせたゴミを全部、弟子に浴びせました。彼女の振る舞いにたいそう怒った弟子は、彼女を打とうとしましたが、ようやくその気持ちをおさえました。
彼はアーシュラムに入り、グルに挨拶をしました。グルは彼にいいました。
「そなたはまだ、最高の知識を授ける境地に至っていない。そなたは犬の属性を示したね。動物の属性を除去してからここへ来なさい。」
まる3年が過ぎ、弟子は神聖な水浴を済ませた後、アーシュラムに行きました。グルが指示して、掃除婦は弟子に汚い水を浴びせました。
しかし彼は掃除婦にうやうやしく挨拶して、言いました。
「母よ、私はあなたに敬礼します。あなたは私がグルの恩寵を授かるにふさわしいまでに、私の忍耐力を強めてくださいました。」と。彼は掃除婦に対して、少しも怒らず、彼女のしたことを常にありがたく思っていると語りました。
彼がアーシュラムに入ると、グルは彼を歓迎して言いました。
「息子よ、今日こそ、そなたは至高の英知を受けるにふさわしい!」
この話は、すべての霊性修行者は身体への執着を捨てるべきことを教えます。しかし、それだけで十分ではありません。利己的な感情を根こそぎ、除去しなさい。所有感を追放しなさい。そうしてこそ、神性を実感認識することができます 。
- スワミ・シヴァナンダ -
- サティヤ・サイババ - 』
『クジャラートの王国の跡継のゴパール少年は怒りや憎しみを抑えることができませんでした。なぜなら、王家の会計士がお婆ちゃんを騙して銀行口座から大金を引き出したり、慈善事業に寄付したお金を横領したからです。
その事を知った家族は全て聖者をグル(師匠)として帰依していましたので、謙虚に物事を受け入れました。王家の家族全員が「この世で起きることは全て意味があること。全てを神に捧げたと思い、カルマを支払っていると思うべきだ。」と言いました。だけど、ゴパールは受け入れることができませんでした。
ある日ゴパールが聖者のアーシュラムのベランダにいる時に、突然グルが部屋から怒った顔で出て来て、「ゴパール、部屋の中に入りなさい。」と言われました。
ゴパールが恐る恐る部屋に入ると、聖者は「お前は一体何をしているんだ!」と叱りつけました。
ゴパールは困惑して答えました。「自分はベランダに座っていただけなのに、なぜスワミ(先生)はお怒りなんですか?」
すると聖者は言われました。「お前はベランダで30分座っている間に、3回も人を殴り殺したじゃないか!」
ゴパールはハッとしました。確かにベランダにいる時、家の大金を横領した会計士を殴り殺すことを想像していたからです。そこで、ゴパールは聖者に言いました。
「スワミ、あなたは何でもご存じのはずです。あの男は僕の家の大金を盗んだので、決して許せません。あなたが彼を何とかしてください。」
しかしグルは言いました。「だからこうしてお前をここに呼んで、殺される前に救っているのだよ。」
ゴパールはグルの言葉の意味が理解できませんでした。
グルは答えました「お前たちが住んでいる世界では、悪い奴らは殺して消してしまえばいいと思っているかもしれないが、神の法則は全く違うのだ。神の法則では、頭の中でイメージした途端にそれが実現してしまう。だから、悪いことを想像すると7倍になって、本人に戻って来るので気をつけなさい。
お前の場合では、3回も人を殴り殺したので、その7倍だから21回も将来殺されそうになる。でも、その男はお前の事を全然何とも思っていないので、お前のようなカルマを作っていないのだ。さあ、これでもまだその男のことを、嫌いかい?」
ゴパールは泣きながら言いました。「そんなの不公平です。まだ嫌いです。あの男を絶対に許せません。」
そこでグルはゴパールにあるヴィジョンを見せました。ゴパールがいた部屋が突然、断崖絶壁の上に変わり、目の前に家の大金を盗んだ会計士の男がいました。
グルの声がしました。「ゴパール、お前が殺したい男が、目の前にいるぞ!」
ゴパールは迷わず男を殴りました。すると男は悲鳴を上げて後ろに倒れ、崖から落ちそうになりました。ゴパールは当然だと思い、その光景を冷たい目で見つめていました。
さらにグルの声がして「ゴパールよ、何が見える?その男は手に何か持っているだろう?」と言われました。
よく見るとなんと、なんと、男は片方の手にかわいい赤ちゃんを抱いていました。その赤ちゃんは、ゴパールを純粋な目で見つめて笑っていました。ゴパールは男を憎んでいましたが、赤ちゃんは何の罪もないので、助けなければならないと思いました。
ゴパールは、崖から半分落ちかけている男を、全力で思いっきり引っ張り上げましたが、男は重くてびくともしませんでした。
ゴパールは全身全霊で「スワミ、どうか彼を助けてください!」叫びました。すると、何とか男も赤ちゃんも引き上げることできました。
ゴパールが目を覚ました。するとグルがゴパールの肩に手を置き言いました。「ゴパール、これでもお前は、まだあの男のことを嫌っているかい?」
「いいえ彼に対する恨みは消えました。もう嫌いではないです。」とゴパールは答えました。
「これはお前のために、私が仕組んだ、恨んでいる人を恨まなくなるレッスンなのだ。もしこれから先、誰かを嫌いになりかけたら、今日のようにお前の中にある愛の泉から愛の水を汲み出し、相手にお前のその愛の水を与えなさい。今回は赤ちゃんだったが、可愛い子犬でもいいので、自分の愛の泉から愛を引き出せるものをイメージして、その自分が恨んだり嫌いだったりしている人の上に、重ね合わせなさい。そうすれば、誰も嫌いになったり憎んだりしなくなるでしょう。男もお前もお互いに愛を持つことが理想だが、困難ならお前だけでも、あの男を嫌いにならないようにイメージしなさい。そうしないと、さっきも言ったように、あの男ではなく、お前が新しい悪いカルマを背負うことになるのだ。大切なのはお前がその男を愛しているかどうかなのだ。」
『私たちは自己の抑制によって何かを失うのではなく、我々の想像をはるかに超えるものを得ているのです。怒りや憎しみの感情を抑えるごとに、非常に大きなエネルギーが私たちに有利な形で蓄えられます。そしてそのエネルギーは最も高次なる力へと転化されるのです。
-サティヤ・サイババ- 』
愛と優しさをいっぱいありがとうございます!