入院日記2 病棟動物園(その4)
アニマルアワー
そんなわけで毎食事は非常に不快な音で病室は満たされる。屁こき太郎とハゲのクチャクチャ二重奏に始まり、ハゲの独り言ソロ、第二楽章かよと言いたくなるハゲのソロすすり込みと咽び、第三楽章に屁こき太郎の屁ソロが混ざってそのまま二人のゲップで締められる。
この地獄そのものの食事時間を最近ではアニマルアワーと呼んでいる。音で様子だけ聞いているとまさに動物が餌を食べている風にしか聞こえてこない。朝はクラハで知り合いがやっているニューストークからおちょやんへとシフトし、昼はR1のニュースから昼のいこい、そして夕方もR1ニュースと食事時に聞くものは楽しみで固定もされていたのにそれもすべてアニマルアワーに毒されてすっかりディープ・パープル、レッド・ツェッペリンやクイーンなどの美しいロックを大音量で聴く時間となってしまった。ハンパなジャズだのポップスなどではアニマルアワーは誤魔化せないのだ。
現在自分の居る大部屋はかつてのような人の入れ替わりも滞り、僕が部屋でも最長、そして屁こき太郎とハゲの「アニマル兄弟」ともう一人中学生のガキが一匹いるのだが、そんな大部屋の中で一番かわいそうなのは恐らくこのガキだと思う。僕などは我慢ができなくなればすぐにデイルームに逃げてしまう(そのかわりその分座っている時間も多くなり脊椎にはちょっと障るのだろう)、けれどもそれも容易くはできない身体のようだ。
しかしこのガキも負けてはおらず、食事の時はアニマル兄弟にも負けない勢いのクチャラーぶりを見せていた。とにかく大きな音を立ててものを食べ存在を主張する。食事時以外は全くもっておとなしくいるのかどうかさえもわからないのだが、食事の時だけは違っていた■
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