昴
【療養日記2023 10月16日(月)】
昨夜から一睡もしていない。昨晩は夜中に背中がムズムズするので寝られなかった。背中の右側、本当に手の届かないところに大きなおできみたいなものがあり、これまでは妻に頼んで薬を塗ってもらっていたが、昨晩はそれがいつになくムズムズするので孫の手で搔いていたら脂肪の塊のようなものが引っかかっていた。
この後のことは気持ち悪いのでリアルには書かないが、ただの腫れ物ではなくて中で化膿していたようだ。手が届かないので薬も思うようには塗れないが、取り敢えず膿は出して薬をつけておいた。
不思議とこの腫れ物は地腫れをするでもなく痛むこともなかったのだが、その後もなんとも言えぬ違和感があって結局朝まで寝ることは出来なかった。
朝起きてからはいつものルーティンが始まる。まずはラジオ講座を聞き、ウォーキングに出た。帰って来てからはすぐに寝ようと思ったのだが相変わらず寝つけられず、昼過ぎまで韓国語の勉強。昼食を食べてそのあと録り溜めてあるビデオを見て、結局眠くなるのを待ってもなかなか眠れず。夕方に1時間ほど寝たんだろうと勝手に決めつけている。
夕方くらいにネットで谷村新司の訃報を見た。初めは目を疑ったけどどうやらそうらしい。しかも数日前のことだ。
我々世代は谷村新司といえば燦然と輝くアーティストだったことはいうまでもないが、その一方でラジオのエロ話がやはり印象深い。文化放送「青春大通り」の「天才・秀才・バカ」あたりのインパクトが絶大だ。なので「アリス」のメンバーでもあるが、ラジオで話すエロ親父のイメージが強い。当時のエロトークの帝王といえば笑福亭鶴光だが、谷村新司も負けてはいなかった。もう一人挙げるとすれば福山雅治だろう。
そんなイメージが強いのもおそらく我々の世代の話で、もっと若い人たちにはミュージシャンというイメージしかないのかもしれない。作品のインパクトが絶大だったので数曲具体例を挙げてみようと思う。
さらば青春の日々
アリスの名曲。普通我々の世代ならアリスと言ったら「チャンピオン」などの大ヒット曲を挙げると思うが自分はこの完成されたバラードがとにかく思い出深い。アリスと言えば中学から高校にかけてよく聴いたが、自分の周囲にはアルバムも全て買い込むような大ファンが多かったので自分ごときがファンを名乗るのは烏滸がましいと思っていた。なので好きな曲も他の人はあまり選ばないだろうなと思えるような歌を選んだのかもしれない。
サビの部分の矢澤透のコーラスがとにかくグッと心を揺する。
いい日旅立ち
言わずと知れた日本の名曲。この歌の作詞作曲は谷村新司。作者は言うまでもないがなんと言っても山口百恵が偉大過ぎて誰が書いた歌なのかはもはや問題にされないほど山口百恵の一部と化している。
日本人のDNAのような「旅情」を見事なまでにメロディで表現している。そこにこの歌詞だ。この歌はこれからも末永く歌われ続けていくことだと思っている。
今はどうだかわからないがこの曲はJR西日本では列車が近づいてくる案内アナウンスのBGMにも使われていて本当に旅情を掻き立ててくれたが、地元の人にとっては生活の場面でこの曲を使われたらどうなのかなと疑問に感じたこともある。瀬戸内海を挟んだ四国側は「瀬戸の花嫁」が流れるのも忘れてはいけない。
砂の十字架
機動戦士ガンダムの映画版で使われていたやしきたかじんの歌。ガンダムに関してはアニメ嫌いな自分にはどうでもいいことだ。
この歌はインパクトが強い。この歌のメロディのなんとも漂う悲壮感といい歌詞と言い、やしきたかじん歌の中では異色の存在だ。
生前やしきたかじんも自分で作曲していないこの歌が自分の代表曲になるのは嫌だったと不快感をあらわにしていたらしいがこの歌はあの声だからこれだけ売れたのだと思う。
昴
この歌がヒットチャートに上がっていたのは中学生の頃だ。アリスではなく谷村新司のソロというところで当時囁かれていたアリス解散説などがチラつく頃だったのではと思う。
今ではオッサンの応援歌みたいな扱いで他の年代には「ただの演歌じゃん」と軽く見らているみたいだが、そもそも谷村新司は演歌ではない。演歌は堀内孝雄の方だ。それとこんな素晴らしい歌に背中を押されることのできる世代でよかったとも思っている。
この歌のおかげで人名に「昴」という漢字が使えるようになったり、一部の車が売れるようになったりと社会的な影響も大きかったことだと思う。
「我は行く」という部分に対してどこへ行くのかが明確になっていないことになんの疑問も抱かずとにかく「行く」事だけが全てだと前向きにさせてくれた。自分の人生の中でも何度となくこの歌の「命ずる」ままに人生の選択をして来た。仕事、結婚、人間づきあいからまさに旅に至るまで、その都度何かとの訣別があり、それを一つの「昴」に喩えて歩み出した、そんな人も多いことだと思う。
今、ひとつの指標のような存在がなくなり、これからは「心の命ずるまま」に進まなくてはならない寂しささえも感じてしまう。「さらば昴よ」の昴とは谷村新司そのものなんだなとつくづく思った■
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