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退院が見えてきた

【入院日記3 2023年2月13日(月) 29日目】

 今朝は起床してすぐに採血があった。入院にもさすがに慣れたので朝の採血が意味することはだいたいわかる。手術や退院など次の段階に向けての是非を問うものだ。検査結果が悪ければ次の段階(退院や手術)は見送りになるだろうし(経験済み)、検査結果が良ければさらに前向きな話に進める。当然合否の発表などはないのだが、事がその後滞りなければ話は順調に進んでいくし、ダメだった時にはそう遠くないうちに入院延期を伝えられる。

 結果発表なんて知らないが、今回に限って言えば自分が入院延期になるなんて気は全くしない。以前も書いたが他の患者と違って治ったから入院しているんだ。今日も安心してルーティン通りに動くだけだった。

 まずは今朝もコンビニは7時から開くので先にデイルームで写経をする。今日は採血などがありすぐには部屋から出られなかったのでデイルームにいる時間も短かった。朝のバイタルや血糖値計測などと食事前は忙しくなる。食事の前に「まいにちハングル講座」を聴く。

 食後ナースステーションでシャワーの予約。これも昨日まではできなかったことだ。自分で好きな時間枠を押さえたい。早朝から受け付けてくれるW5と違いE5は以前からずっとシャワールームの予約一つもタイミングを考えないといけない。朝早くから受け付けてくれることもあれば、9時ギリギリになってやっと受け付けてくれることもある。

 午前中には背中の消毒もあった。昨日抜糸が終わったがまだ一部治りきっていない部分があるらしい。どちらにしても自分で見ることはできないので全部他人任せになってしまう。これがきれいになれば退院できるのかと思うと速く治ってくれと願うばかり。

 午前中は12分ウォーキングを2度ほど行う。その間は基本的に部屋に戻る。というのも月曜日の午前中のデイルームはかなり賑やかでデイルームにいるだけで邪魔になってしまう。ウォーキングもW5にいた時のようにYMOをBGMにしてピッチとストライドの歩き分けまでできるようになった。しかし歩く量はこれ以上は増やさない。最高でも1回で15分。距離や消費カロリー量での運動はしないことにした。

 お昼直前になっていきなり皮膚科からの呼び出しがある。是非もなく1階の皮膚科へ。お腹が空いているのになと思いながらも、皮膚科の先生だって同じだ。診てもらえるのだから感謝しなければならない。

 前回診てもらった場所は背中の爛れと右脇の擦過傷らしき傷。背中の爛れはほとんど治ったようで昨日あたりから薬も塗っていない。一方もっと手術中に気をつけてもらえていればつかなくても済んだ筈の右脇の傷はだいぶ小さくはなったもののいまだにヒリヒリとしみる始末。傷口の手当を受けてとりあえず完治のお墨付きをいただく。これで退院できたらいいのにと思うが、皮膚科で入院しているわけではないので無理な話。ちなみにE5には少数だが皮膚科の入院患者もいる

 他の患者よりも遅く昼食を食べ、しっかり休んだ後午後のウォーキングを始める。数日前くらいはできるだけ部屋に居ないようにと努めていたが、やっぱり多少の休みも欲しいし、デイルームでする事もそれほどない。以前ほどデイルームは一日のルーティンの中で重要な役割を示さなくなっていた。とは言っても今でも早朝と消灯前の居場所はデイルームだ

 同室の患者のことはもうあまり書きたくないが書く。同室の3人の中で大阪おじさん以外は宇宙人だ。この部屋に移動して来た時と比べたって格段にいやらしさがグレードアップしているはずだ。前にも書いたが患者としてクズすぎる。以前の入院の時の「屁こき太郎」だの「ハゲ」だとか、教育入院の時の「こども帰り極道ジジイ」や「ササニシキ」「おたんこナス」と同じように勝手に綽名を付けるのでさえも最初は腹立たしかったが「オッサン」だの「ジジイ」だのでは足りないので隣のオッサンは「ブツ臭」、ジジイは「ナース大好き爺」と命名してやった。そのくらいしないと怒りも治まらない

 ブツ臭最大の兵器であるぶつくさうるさい独り言と声を伴う溜息はほぼ24時間。これをブロックするのにはブツ臭が隣にいる時は常にテクノを大音量で聴くのが効果的とわかってきた。イヤホンから音が漏れていようとお構いなしだ。そもそも誰のせいで音漏れするくらいの大音量で音楽を聴かなければならないのか。

 午後も何度かウォーキングに出ては10分、12分と歩き、4時半からはシャワーにも入った。やっぱりシャワーは生き返る。入院生活の中でも大事なイベントだ。多少気分が塞いでも、同室患者に腹を立ててもシャワーを浴びれば気分も変わる

 夕方、時間があったのでブツ臭対応のテクノプレイリストも作っておいた。退院まではそれを聞きながら寝る必要があるが、そんなに先が長いわけでもない。しかし今我慢できないものに我慢はできない。

 夕方には主治医(執刀医)もやって来て初めて退院について言及した。この先生はとにかく退院という言葉を直前まで出さない。予定では問題がなければ今週末。この先生、とにかくE5ではメチャクチャ慎重な人でも有名で、それをネタにナースと笑い話をすることもある。例えば先日の抜糸の時も思い切って最初に全部取ってもらっても良かったのかも知れないが。「いや、担当の先生があの先生ですので今日は見送ってください。」と言えばスタッフは全員わかるくらい。慎重にしてもらえることはそれに超したことはないが、最初の退院の時にもああ動くな、こんな動きはするなと徹底的にたたき込まれてそれを2年以上も守ってきた。その間床に直接座らない。布団ではなくベッドで、ちゃぶ台ではなくテーブルで食事。外食時も高いテーブルで、お座敷には座らないなどなど色々とライフスタイルが変わった。

 退院の話に戻るが、退院は多分金曜日だ。それまでは毎日同じルーティンで入院生活を送るように心がけたい。ウォーキングの量もこれ以上は増やす必要はない。ちなみに今日は7㎞強歩いている。これくらい歩くと歩数も一万歩を超えているはずだ。

 勝手に金曜日に退院と考えると僕よりブツ臭の方が先に大部屋を出て行くことになるだろし、ナース大好き爺はどうやら金曜に退院なので一番最初に大部屋から出て行くのはやっぱりブツ臭になりそうだ。今から木曜日が楽しみだ。何だったら木曜日の起床時間と同時に部屋を移動してもらいたい

 ナース大好き爺ももう退院だというのにまだ全身が痛いらしく、ナースにもドクターにも現状を訴えている。このまま退院して大丈夫なのか心配になっているのではと勝手に想像してはそれはちょっと気の毒だなとも思う。しかしながら…

痛いんで今日も背中を拭いてくれる?

 と相変わらずナースに甘ったれているのでやっぱり同情はできない。まったく自分の孫と同じくらいの年頃のナースにデレデレ甘ったれていて恥ずかしくはないのかね。しかしまだこの爺さんのほうがブツ臭よりもずっと人間っぽい

 そんなこんなで今日もそろそろ消灯時間。大阪おじさんはまた消灯時間を守らないのだろうか。昨日は電気を消さなかったのでついにナースに叱られていたけど、そんなことで改まるとも思わないし。眠れないのだろう、真夜中2時くらいにトイレに起きた時テレビを観ていた。向かいにあんなブツクサうるさい奴がいるんだから気持ちはわかる。この大部屋、言うなればみんながブツ臭被害者会会員みたいなものだ。

 きっと大阪おじさんもナース大好き爺も後々振り返ればこんな人もいたなと笑い話にもなるはずだ。しかしブツ臭は前回の入院の時の「屁こき太郎」と同じで今でも思い出すと腹が立つ存在に必ずしやなるはずだ

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