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友からの電話

【入院日記3 2023年1月17日(火) 二日目】

 日頃から寒い部屋で羽毛布団に包まって寝ていたものだから四六時中無駄に暖かい病室ではなかなか寝付けない。布団をかけてなんてとても寝られない。消灯も夜9時。そんな時間にはさすがに寝られない。そんな訳で入院初日の夜はあまり眠れなかった。そのくせいつ寝たのかわからないが朝はナースに起こされる。

 前回入院では起床時間を待って時間が来るとまずはナースステーションに行きシャワーの予約を入れ、その後一階にあるコンビニに行き缶コーヒー(もちろん無糖)と新聞を買ってクラハにいる徹夜組の仲間と他愛もない話を朝から楽しむのがルーティンだった。その後朝食までの時間を写経をして過ごしていた。全く同じではないがそういった古いルーティンに従って今日も朝の時間を過ごす。

 今日は血糖測定日といい、食後だけでなく食前食後と深夜の合計7回血糖値を測定する日だったが、それほど煩わしいものでもなかった。午前中から実習生と話をする。昨日は事態をよく飲み込めてはいなかったが、この実習というのは集団実習ではなく1人が2週間1人の患者に付きっきりになるものだったらしい。そんなわけで入院の前半は担当ナースの他に昼間は実習生のお世話にもなる。だからか、昨日は仰々しい書類にサインをさせられたのを今になって思い出した。

 今日は滅多に来ない清掃日ということで部屋から追い出され、デイルームで隣の人と話し込む。以前の自分だったら考えられないことだ。人間見た目だけでなく中身も丸くなったか、自覚がまるでない。ただせっかく仲良くなったのに部屋替えになり、清掃が終わった時は別々の部屋に戻る。実習生と話をしたのはその後小一時間ほど。

 今日もスケジュールをいろいろとこなしたりしているうちにいつのまにかお昼時になり、午後は午後でビデオ学習などもあってなかなかのんびりできそうでできない。そんな中間隙をぬってウォーキングもするし、シャワーも浴びれば大相撲もラジオで聴く(本当はテレビで観たいのだが)。部屋で寛いでいると隣に新しい人がやってきたが典型的な子ども返りした爺さんでやたらとうるさいしナースには甘えるし大袈裟なジェスチャーを大きな声で行う。2日目からいきなりうっさいのがやって来た。おかげでイヤホンが手放せない。

 夕方6時には夕飯の時間。今日はこの時間に細々とやっている仕事が入り仕事をしながら食事をする。食べ終わると隣の爺さんがうるさ過ぎるのでデイルームに避難して仕事の続きをする。これまでにも何度となくデイルームには避難しているが今日はなんだってこんな顛末になってしまうのか理解ができない、と言うか腑に落ちない。

 そこに友達から電話がやって来た。付き合いの長い悪友とでも言うか、放送作家として順調に仕事もしているが、高橋幸宏の訃報に相当なショックを受けて考えるところもあったのだろう。僕を思い出してくれただけでも嬉しいのにすぐに電話をよこしてくれた。話の内容は他愛もないことばかりなのに、入院してデイルームで1人っきり仕事をしている身にはこんなに嬉しいことはなかった。

 退院したら時間を作って他の友達にも声をかけてたまには会おうと約束をして電話を切った。小一時間くらいは話しただろうか。入院して塞ぎ込むことも多少はあるし、今回はこれまでの入院とは違って自分では「希望の入院」と勝手に思ってはいてもよるともなればやっぱり孤独だ。前回の入院の時のようにclubhouseで話す仲間も集まらない。

 いつ退院できるかもわからない前回、前々回の入院と違い今回は退院の目処もある程度立っている。前半の入院は来週金曜日まで。後半の入院が2月の2日、翌3日には手術。そしてその翌週には一応退院ができるのではと言われている。それがわかっているだけでも気は楽なはずなのに隣に訳のわからないジジイが腑に落ちない形でやって来たりと余計な不安材料もある。

 そんな夜だから友達からの電話はとても嬉しかった。明日は眼科検査があり午前から午後にかけては散瞳で鬱陶しい時間が待っている。それでも前向きに頑張ろうと言う気持ちが強い。これまでの入院とはそのあたりが違っている◾️

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