モンパパ
【療養日記2024 5月16日(木)☀️】
今週は撮り溜めをしていた「虎に翼」を先週分まで一気に観た。今回の朝ドラは前作の「ブギウギ」と同様にかなり面白い。
ブギウギはストーリーよりも音楽が楽しめるような作りになっていて、歌のシーンが主に週の後半に多かったので楽しめるサイクルもあって緩急ついた内容が結果として成り立っていたと思う。
方や虎に翼の方はまだこれからの展開を見届けないとわからないけど、冒頭から戦後のシーンで始まっていたのでまだお話はスタートラインにも辿り着いていない、長い前置きの途中のような感じもする。
しかしながらテンポの良いボケやツッコミ、決してカッコ良くはない主人公の寅子など、こんな役に最適な俳優をよくぞ当ててくれたと言いたくなるような伊藤沙莉の演技はすごい。
さらに脇を固める学友たちも個性的だし、何よりも寅子の家族も個性的で楽しい。
このドラマでは第一週から寅子の十八番である歌が登場する。それは戦前に大ヒットした「モンパパ(うちのパパ)」だ。
今回のドラマは他の作品以上に戦前からの女性の地位向上と当時の女性の苦労を男性と対比させた内容になっている。つまり非常に女性の地位や立場が浮き立てられている。
そんな中でこのモンパパという歌は内容をしっかりと聴いていると当時の男女の立場が完全に逆転した歌だ。うちのママは大きくていつもキレイで声も大きいのに対し、パパの方は小さくてママにはとてもかなわないというデコボコ夫婦の内容。
ドラマで寅子が歌っている歌詞では、
パパの身体は揺れる揺れる クルクルと回される
と歌っている。
この歌をこの歌詞で歌ったのはエノケンこと榎本健一とぺーちゃんと呼ばれて親しまれたボードビリアンの二村定一がデュエットで歌ったものだ。
この歌はもともとシャンソンでフランス語のオリジナルの歌詞があるが内容は日本の歌とほぼ変わらないという。
後にエノケンがソロで歌ったバージョンでは同じ部分の歌詞が
パパの大きなものはひとつ 靴下の破れ穴
に変えられている。コメディ性をより強調したものだと思われるが実はオリジナルのフランス語の歌詞の内容はこちらである。
男尊女卑がまだ強い当時にこんな歌が流行し、みんなに愛されていたという事実もさることながら、ドラマではそれをことある度に女性が歌うというのはなかなかメッセージ性を含んだ設定だと思う。
そしてドラマでは寅子がこの歌をめちゃくちゃ音程をはずして歌う。戦前の一般的な女性(男性も)は人前で歌い慣れていないのかこの音程のはずし具合からも何かあるのかなと考えさせてくれる。
エノケンは先のドラマでも「タナケン」という登場人物として出てきて(配役は生瀬勝久)、最後は脚を患って入院するシーンで終わる。エノケンも実際舞台の小道具で負傷した足を脱疽によって失っている。
脚を失った後もハロルド・ロイドに励まされ60年代後半まで活躍をし、70年正月に逝去した。
おそらくエノケンはそんなにはかぶらないと思うがこの虎に翼はまさに同時代のアナザーストーリーのような感じもする。それだけモンパパという歌の存在は大きい。
またブギウギ、虎に翼とこの二つは時代がほぼ同時代と言うことを考えるとこれから先虎に翼も暗い時代を迎えるかと思うと少し嫌な感じもする。
実際に先週分を見ると苦楽を共にした学友達が一人また一人と去っていったし、今週分が気になるところだかそこはジッとガマンをして来週以降に見ることにする■