見出し画像

療養日記 2022年10月31日 『ハロウィンは嫌い』

 タイトル通り自分はハロウィンというものがどうしても好きにはなれない。ハッキリ書いちゃうとグロいし全くもって情緒がない。コスプレして悪ノリして時として集団で暴力的な行動を起こす。必要社会悪にしか思えない。

 少なくとも自分が学生の頃にはハロウィンなんてものは名前は聞いていたが今ほどの一大イベントにはなっていなかったと思う。それこそ平成の前半くらいにはあるにはあったがグッズやハロウィンバージョンのパッケージングは少なかったかと思う。

 今もその頃もあのカボチャのジャコランタンがハロウィンの代表スターみたいな存在だった。昭和の頃ホラー映画に名前は登場したがその頃はなんちゅうけったいなモンがアメリカでは習慣になってるんじゃと思われた事だと思う。異国から輸入された風習といえばやっぱりクリスマスだった。

 ハロウィンが市民権を得るに連れどうしてもクリスマスと比較してしまう。日本は高度成長期のあたりから外国ではこんな風習があるんだとクリスマスがやって来た。クリスマスでハッピーな気分になり、そのまま年末年始を迎える日本独特の風物詩へとなってゆく。

 お隣の韓国と違ってクリスチャンの数も少ない日本では異教の風習なのに戦後の社会を担った世代は自分自身はクリスマスの思い出がないのにもかかわらず子供たちにはクリスマスの楽しさを教えてくれた。それが現在にも引き継がれていると思う。楽しいのかどうかもわからないのに我々にクリスマスの思い出を作ってくれた。

 クリスチャンの人口比が日本とは比べ物にならない韓国ではクリスマスが定着する要素は日本より強く、今でも日本以上にクリスマスは盛り上がる。そして日本と違って年末年始に重点を置かないのでクリスマスがそのまま年明けまで続く。

 じゃあ一方のハロウィンは何だろう。同じ異国の文化にしてはあまりにクリスマスとは違いすぎる。まず神々しさがない。雰囲気も毒々しいし中には昭和の時代に公開されたホラー映画のイメージがまだ残っていると言う人もいるはずだ。

 ハロウィンはもともとアイルランドで始まった死者を偲び、迷わせないように迎える儀式だとも言われている。日本でいえば「お盆」とよく似ている。お盆もそうだが死者が主役になる祭りというものは世界中にあり、その時にどんな迎え方をするのかで違いがある。

 日本のお盆は確かに死者を迎える風習だが迎える人主体だ。死者を迎えるために火を焚いたり家を掃除したり、乗り物を用意したりと迎える側主体の祭りだ。

 一方迎えられる側主体の祭りもある、ハロウィンではないがメキシコには「ディア・デ・ムエルトス」(死者の日)という祭があり、これは日本のお盆と違って迎える側も死者に扮する。この習慣とハロウィンはかなり類似している。また時期もほぼ同じ日だ。

 これがクリスマスとハロウィンの決定的な違いであって同じ死者を祀る日本のお盆とも違う点である。日本ではご先祖様を迎える時に自分が幽霊になったりはしない。

 ハロウィンもメキシコのディア・デ・ムエルトスと同じく死者に感謝をして偲ぶのが目的。なのでアメリカやイギリスなどでは大切なイベントとして子供達に仮装をさせて楽しませるものだったのがいつしかハロウィンを元々は知らなかった国の人たちはこの日を「コスプレしていい日」という表面的なところばかり取り上げてそこだけ真似をしている。

 そしてそこから「そう言えばトリック・オア・トリートって呪文もあるんだぜ」程度で表面的な真似をし単にコスプレを楽しんで大騒ぎするのが目的になってしまっている。

 要するにクリスマスのように丁寧に真似されては来ず、見てくれの面白さに飛びついて真似しているだけ。それが日本や韓国のハロウィンなわけだ。

 なのでハロウィンの本場アメリカやイギリスの人から見ると日本のハロウィンは奇怪な部分ばかり真似をして大切な死者を偲ぶ気持ちがまるでないと言われる。

 もっとも今の理屈で本格的にハロウィンを真似しなければならないのなら日本では年に二度死者を祀らなければならなくなる。それもまたおかしな話だ。

 元々アイルランドには悪魔を騙して悪事の限りを尽くしたジャックなる男が騙した悪魔との約束で死後地獄には堕ちなくて済む代わりに蕪に身を窶したのがジャコランタンの姿で、それがアメリカに移った時に蕪がないので代わりに南瓜になったという話らしい。

 蕪に身を窶したジャックは改心をして自らランタンとなって死者が迷わないように闇の中で光を灯す役目を果たすこととなった。これがそもそものジャコランタンでありそのジャコランタンの導きで年に一度死者が帰ってくるようになり、迎える側はその存在に感謝して思い出をいつまでも共有するというのが本当のハロウィンの目的であり、パリピが変装して大騒ぎする日ではないのだ。

 何よりも仮装をするのは子供のみで大人はそれを迎えるだけ。大人が仮装することはない。

 なので今の日本や韓国のハロウィンは間違いだらけだし、そもそも表面的な部分ばかり取り上げて有り難がっているだけ。クリスマスとは大違いなのである。

 そんなことを書いている間に日付は変わり11月が始まった。ディア・デ・ムエルトスは今日から始まりだがハロウィンは終わった。あまり長くハロウィンを引きずってはもらいたくない■

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?