ナウルという島
【日記#28 2024/09/17(火)☀️】
かつて現役で高校に勤めていた時、授業の時間があまり単元の区切りが良くて先に進みにくい時などの余談ネタというのをいくつか用意していた。
そのネタの中に「世界の変な島」というのがあり、「ナウル島」「北・南大東島」「エロマンガ島」の3つを用意して生徒に選ばせてその島の話をしたことがあった。
大抵はどんな場合でも「エロマンガ島」が選ばれる。これはその後中学校教諭に仕事を変えても同じだった。エロマンガ島は社会科で使われている地図帳にも載っていて大抵の中高生はその名前を知っているが、どこの国のどんな島なのかを知る者は少ない。
なお、ネタは3つで1セットだが、1年の間には3つ使い切る事もよくあった。なので「世界の変な島」の他にも「海外失敗談」だの別の3本立てシリーズも用意していた。
先ほどの島話、「エロマンガ島」は正直面白がる子どもたちが落ち込むくらいの重たい話だった。そもそもこの島はカニバリズムの国だったこと、白人による白檀伐採の為に島の住民は絶滅しかけた事。とにかく内容が重いので、
「聞き終わったら多分沈む人もいるかと思うけど、それでも聞くかい?」
と予め確認をとっておいた。しかし子どもたちときたらもう「エロマンガ」という名前からだけで浮かれ上がっていて、どんな話でもエロ話に繋がるとでも思っているのだろう。「大丈夫大丈夫」と適当に答えてとにかく話を始めさせたがる。
そこいくと「大東島」の話も聞き終わるとお通夜の後みたいな雰囲気になる。
要は戦前戦中に朝鮮や中国、沖縄から連れて来られた人が口車に乗せられサトウキビ畑で強制労働を強いられ、脱出防止のために私製通貨を渡されて事実上貯金も禁止されて働かされ続けるという話。中々に暗い。
そして最後の「ナウル島」は地学で教わる「グアノ」の島の話。まずグアノが何かをひと言「鳥のうんこでできた島」と言った感じて教え込み(もちろん鳥のうんこ以外のものもある)、もっと詳しい話は理科の先生に聞いてねと、半ば丸投げのような無責任な話の振り方をしていた。
そのうんこがリンという貴重な鉱石になり、島の土を掘ってそれを売るだけで大儲けができる。ここまで話をすると他の島と違って子どもたちの反応も大きくなり、目もキラキラ輝いていた。流石偉大なるはうんこパワーだ。
そしてこのナウル島の話をあたかもギャグのように話をしてから、リンが涸れてしまって今度は一気に貧乏になり島ごと夜逃げしたというオチで終えた。
そんなわけで僕が担当した授業を受けた当時の生徒たちはエロマンガ島は悲惨な島、大東島はひどい人間は想像を絶することを平気でする、ナウル島は盛者必衰のような教訓を思い出す事だと思う。
それから1週間くらいは職員室で「なぜか教えてもいないのにグアノについて質問する子がいる」だの、「うんこでできてる島が本当にあるのか訊かれた」などと理科や社会科の先生方が不思議な質問攻めに遭ったと首をかしげていた。
そんなお話のネタに長い間利用していたナウル島、ナウル共和国の観光局アカウントがある時突然Twitter(Xとも言わせたいらしい)で目の前に現れた。しかも適当にバズり、誰でもフォローしてしまう不思議すぎるキャラクターとして登場したから驚いた。
まずそれを見て僕はいくらなんでもネタ不足だったからと言って授業ネタとして散々に使い倒して笑い物にしてしまい悪いことをしてしまったと胸が痛くなった。
そんな訳でせめてもの罪滅ぼしにとアカウントをフォローして通販で売っていたTシャツまで買った。そのくらい笑いのネタに勝手に利用していていつかは謝りたかったのである。
今でもナウル共和国政府観光局はフォローしているし、今年に入ってからはフォローバックも来た。僕はそれでもあの時に散々にネタにした罪深さと申し訳なさばかりが募って今でも頑張ってもらいたい一心でいる。
そんなナウルなんて云う赤道直下にある島国、最近Twitterでのフォロワー数は50万人を超えたと云う。当該国の人口は1万数千人なのにすごい数だ。
ここ最近は自国の対中外交姿勢で叩かれたりとちょっと見ていても不憫だ。しかし他国の外交に関する文句を政府観光局に言ってくるのはそっちの方が理解に苦しむ。外務省職員に文句を言うところ、観光庁職員に文句を言って攻撃をしているのだからそれはちょっとおかしいと思う。
いくら親しみやすそうな発言やフォローバックがあっても、ひとつの国連加盟国家の政府機関のアカウントである。そんな機関に外交面で気に入らないことがあるからと見下した態度で詰る輩がいること自体がみっともないなと思ってしまう。さらに南の島国だからと言いたげな差別的発言もあったりで恥ずかしい限りだ(これに対してはナウル側も法的措置を執ると毅然な態度で臨んでいる、いいことだ)。
今日は最近気になっている事をひとつ思い返して書いてみた■
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