TENJIKU☆BOTAN

長年、出版社に勤務。女性誌や書籍の編集に携わる。

TENJIKU☆BOTAN

長年、出版社に勤務。女性誌や書籍の編集に携わる。

最近の記事

アートと本とコーヒーと:ぼんやりした宝物

ずっと自分は「空っぽ」のような気がしている。 これまでずっと、取材したりインタビューしたりして外から得たことを自分の胃くらいまで下ろして原稿に書いている……そんな気持ち。とにかく、他人の話はおもしろい、だけどお腹は「空っぽ」だ。 それでも、たとえ、胃袋までであっても、外から入ってきたものに自分なりにカタチを与えるために「書く」んだなあと思いながら、ン十年。 いしいしんじ著「書こうとしない『かく』教室」(ミシマ社)。長年のわたしの「空っぽ」な感覚の理由が見えてきたような気

    • アートと本とコーヒーと:シャネルと義経

      夏休みが取れたので、いまがチャンス!と「ガブリエル・シャネル展」へ行ってきました。平日だから空いているかなと思ったのは甘かった。マダムにおばちゃんに女子に……と9割は女性でけっこうな混み具合。でも、行って良かった~。 シャネルスーツにキルティングバッグ、バイカラーのシューズ、そしてマリリン・モンローと5番の香水のこと、恋多き女性だったこと、多くの名言を残したこと…など、伝説となっているあれこれで、シャネルのことをわかったつもりになっていたことが恥ずかしくなりました。 日本

      • アートと本とコーヒーと:散歩はココロのリハビリ

        NOV6th:東京湾東が吉方位と何かで読み、さすがに千葉は遠いなあと思い付いたのが東京湾。晴れた日、東の海上まで散歩に出ようと、桟橋のあるウォーターズ竹芝へ。 散歩のお供にはコーヒーをと、偶然、見かけたモリバコーヒーに立ち寄った。ブレンドを頼むと「5分ほどお時間いただきます」とのこと。時間を気にしつつ、急ぎ足で水上バスに乗り込んで気づいたのは、スリーブの手書きのイラストとThanks!の文字。期待以上のおいしさの理由は、少し時間を要するクレバードリップだったから。手軽なコー

        • アートと本とコーヒーと:駆りたてられる

          続くリモートワークで、目に映る景色はほぼ部屋の中。花を飾ったりカーテンやラグを変えてみたりしても、そうカンタンには弾まないココロ。惰性に押し流されて、低空飛行の気分が当たり前になってしまう……正しい生活かもしれないけど、これって、どこか良くなくない? とうとう、バスに飛び乗り向かった先は天王洲の運河沿い。『バンクシ―って誰?』展です。1990年代から活動をしているバンクシ―は、いまや、グラフィティアーティストのカリスマ。覆面でゲリラ的な活動への関心はもちろん、作品を通して政

          アートと本とコーヒーと:Septemberはアメリカの季節

          9月に入って読んだのは、偶然にも、アメリカ人の本2冊でした。 20年前の今日、9月11日8時45分頃、私はニューヨークのダウンタウンのビルにいました。ニューヨークコレクションの真っ最中で、あるブランドのプレゼンテーションが行われようとしていたその時、「みなさんに話があります」と責任者の方が重い口を開き、高層の角にある自室に招きました。 そこで、目の当たりにしたのは、ワールドトレードセンターが倒れる瞬間。私は座り込み、何が起きたのかもわからずただただ涙があふれていました。宿

          アートと本とコーヒーと:Septemberはアメリカの季節

          アートと本とコーヒーと:濃いめの昭和

          おこもり生活を少しでもいい気分にしたいと思い、久しく足を向けていなかった、サードウェーブ的なコーヒー店へ。「どんな豆がお好みですか?」と店主。「深煎りの濃くて苦味のある豆が……」「あっ、そういうのないですね」「……、ごめんなさい、昭和の人間のせいか、そういうのが好きで」と、自虐的な苦笑いとともに、テイクアウトのアイスオレを買って帰宅しました。 そういえば、仕事で色校正をするときも、写真に「もっと、クリアに、濃度アップ」などつい赤字を入れてたっけ。 たくさんの良いものおもし

          アートと本とコーヒーと:濃いめの昭和

          アートと本とコーヒーと:土砂降りと赤い花

          家族の暮らす地方に発せられた大雨特別警報に落ち着かないまま、昨夜は、東京も土砂降り。浅い眠りから覚めた今朝、ベランダのハイビスカスが大きな花を咲かせていました。 大きく真っ赤な花は上を向いて開き、どこか誇らしげ。 どんなときだって、花は咲くんだなあ。 収束するどころか事態は悪化しているとさえ思えるコロナ感染症、頻発する自然災害。お盆と終戦記念日。生きることそのものに向き合わざるを得ないときに、ファッションの話なんてと思いながら、ファッションが土砂降りの中の赤い花になるこ

          アートと本とコーヒーと:土砂降りと赤い花

          アートと本とコーヒーと:神楽坂から熊本へ

          神楽坂『かもめBOOKS』で購入した辻山良雄著『小さな声、光る本棚』を読んでいたら、突然、私を熊本の『長崎次郎書店』へ連れて行ってくれた人の名前が飛び出して、はっとした。 ロングヘアのカメラマンの彼女は、美人を超えて、「かっこいい」という形容詞を久しぶりに使いたくなった女性。その彼女が、はじめて一緒に熊本へ出張した際に、「連れて行きたいところがあります」と2軒の書店へ案内してくれたのでした。 市電の走る町、熊本市新町に建つ書店は大正期、当時、スター建築家と呼ばれた保岡勝也

          アートと本とコーヒーと:神楽坂から熊本へ

          アートと本とコーヒーと:神楽坂の時空

          ためらいつつも、地下鉄に乗る。サンクトペテルブルグの骨董商、毛涯達哉さんの展示が8月3日までだからです。 『ラカグ』と『工芸青花』ができるまでほとんど足を運んだことのなかった神楽坂は、改札を出て地上への階段を上りながら、高揚感を覚える街。女性シェフの中華料理店に行列のできているブーランジェリーに路地裏の魚屋さん……訪れるたびに発見があり、まだ入店がかなっていないお店もたくさん。なにより、地上に出てすぐの『かもめBOOKS』でどのタイミングでコーヒーを飲もうかなあとつらつら考

          アートと本とコーヒーと:神楽坂の時空

          アートと本とコーヒーと:ファッション イン ジャパン1945-2020 流行と社会

          本当なら、東京2020オリンピック・パラリンピック大会に訪れた世界中の人たちに観てもらおうと企画された展覧会だったんじゃないかな……と思いながら、予約した時間に会場に足を運ぶと、すでに長い列。 会場は1920年代ー1945年(和装から洋装へ)、1945年ー1950年代(戦後洋裁ブームの到来)、1960年代(「作る」から「買う」時代へ)、1970年代(カジュアルウエアの広がりと価値観の多様化、個性豊かな日本人デザイナーの躍進)、1980年代(DCブランドの隆盛とバブルの時代)

          アートと本とコーヒーと:ファッション イン ジャパン1945-2020 流行と社会

          アートと本とコーヒーと:ダイアナ妃の真実

          1961年に生まれて1981年に英国チャールズ皇太子と結婚、そして1997年8月31日36歳の若さで自動車事故で亡くなったダイアナ元妃のことを、この頃、よく考えています。 わずか20歳で皇太子に嫁いだダイアナ妃は、遠く離れた日本の田舎の高校生たちにも強いインパクトを与えました。当時、同級生たちの髪型は、聖子ちゃんカットとダイアナ妃のヘアスタイルが二分するほどでした。 大学のため上京、そしてフリーランスのライターをはじめ多忙を極めていた頃、チャールズ皇太子、ダイアナ妃、それ

          アートと本とコーヒーと:ダイアナ妃の真実

          アートと本とコーヒーと:アナザーエナジー展のこと

          森美術館館長、片岡真実さんの記事が気になっていたので、先月末に足を運んだのが『アナザーエナジー』展です。(以下太字は、<HERO>森美術館館長片岡真実が語る「ベテラン女性アーティスト」時代に愛されるこれからのヒーロー像?より) もはや、全世界の現代アートの全貌を把握できている人はいないと思います。 白人男性の視点によって作られてきた美術史を再考しなければならないという気運も高まっています。 ちょうど、私なりに美術史をかじりながら、中世から眺めても歴史に登場する女性芸術家

          アートと本とコーヒーと:アナザーエナジー展のこと

          アートと本とコーヒーと最近のこと

          はじめての投稿になります。どうぞ、よろしくお願い致します。 アートと本とコーヒーのこと……、好きなことについて好きに書きながら、少しだけ、誰かの何かの役に立つといいなあと思って、書いてみたいと思います。 6月は仕事が忙しくて、22時になると、ソファに座ったまま即身仏になったみたいに固まってうとうと……の一方で、というより、だからこそかな、ベッドへ移動したらしがみつくように本を読みました。 石川直樹著『路上に星座をつくる』、平野紗季子著『味な店』、益田ミリ著『スナックキズ

          アートと本とコーヒーと最近のこと