見出し画像

播磨の祭礼:水引幕の符号


古い水引幕の乳部分には、4つの図符を見ることができます。今でも屋台によっては4つの図符を残す水引幕を使用しているものがあります。

九字切

ドーマンと呼ばれ、播磨国岸村(現在の加古川)出身の蘆屋道満の図符。

五芒星

セーマンと呼ばれ、陰陽五行の理を表し、安倍晴明が用いた図符。

かつ。文字のごとく「勝利」を意味する。武将やその軍師に好まれた。

可(上に突き抜ける)

かなう。文字のごとく「願いが叶う」ことを意味する。武将やその軍師に好まれた。

粕谷氏によれば、これら4つの図符は、日本全国でも播磨の屋台幕にのみ見られるものであり、本来、魔除けの意味であったと解釈されています。屋台の4本柱の中には神様がおられ、太鼓は神を呼ぶものであるので神聖な場所であり、魔が入り込まないよう結界を張り巡らせたとのことです。

九字、五芒星、勝、可は、魔除けの他にも「福徳」の意味もあり、それぞれ、「心・願・成・就」と対応していると解釈されています。

セーマンドーマンの分布について

上記、粕谷氏は、「4つの図符は、日本全国でも播磨の屋台幕にのみ見られるものである」と述べていますが、詳しい人のお話によると、以下のことが言えるそうです。

セーマンドーマンの分布については、播磨をはじめ、淡路島、大阪府内の一部、三重県志摩地域に分布し、播磨が突出している。三重県志摩地域は、海女の魔除けとして信仰に使われている珍しい例である。

私信 2024/11/6

X印

水引幕の他の乳部や本幟の乳部にはX印が使われるが、神社や寺院で内陣と外陣を区切る格子戸に見られる。本来もこれも社寺の神聖な領域を護る役割があったが、時代と共に一般にも普及したものです。

九字切

町坪屋台 2022/10/16
和久屋台 2022/10/22

五芒星

糸井屋台 2022/10/22
坂出屋台 2021/10/22
中地屋台 2022/10/16
東釜屋屋台 2022/10/23
坂上二代目屋台 2021/11/14撮影

町坪屋台 2022/10/16
中地屋台 2022/10/16
東釜屋屋台 2022/10/23
坂上二代目屋台 2021/11/14撮影


可(上に突き抜ける)

糸井屋台 2022/10/22
東釜屋屋台 2021/10/24

X印

高田屋台 2022/10/22

富嶋神社の御旅提灯練り

水引幕に五芒星が記された東釜屋屋台。氏子の提灯練りにも、五芒星の提灯が見られました。

東釜屋地区 2022/10/22

本幟に見られるX印

都倉町の本幟 2024/10/20

本幟(セーマン、ドーマン、勝、叶、可)

宇佐崎の本幟 2024/10/15
2019/10/14撮影

参考

粕谷宗関(2001)イキマの美ー播州祭屋台学宝鑑. 友月書房.
私信(2024/11/6)



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?