播磨の祭礼:水引幕の符号
古い水引幕の乳部分には、4つの図符を見ることができます。今でも屋台によっては4つの図符を残す水引幕を使用しているものがあります。
九字切
ドーマンと呼ばれ、播磨国岸村(現在の加古川)出身の蘆屋道満の図符。
五芒星
セーマンと呼ばれ、陰陽五行の理を表し、安倍晴明が用いた図符。
勝
かつ。文字のごとく「勝利」を意味する。武将やその軍師に好まれた。
可(上に突き抜ける)
かなう。文字のごとく「願いが叶う」ことを意味する。武将やその軍師に好まれた。
粕谷氏によれば、これら4つの図符は、日本全国でも播磨の屋台幕にのみ見られるものであり、本来、魔除けの意味であったと解釈されています。屋台の4本柱の中には神様がおられ、太鼓は神を呼ぶものであるので神聖な場所であり、魔が入り込まないよう結界を張り巡らせたとのことです。
九字、五芒星、勝、可は、魔除けの他にも「福徳」の意味もあり、それぞれ、「心・願・成・就」と対応していると解釈されています。
セーマンドーマンの分布について
上記、粕谷氏は、「4つの図符は、日本全国でも播磨の屋台幕にのみ見られるものである」と述べていますが、詳しい人のお話によると、以下のことが言えるそうです。
X印
水引幕の他の乳部や本幟の乳部にはX印が使われるが、神社や寺院で内陣と外陣を区切る格子戸に見られる。本来もこれも社寺の神聖な領域を護る役割があったが、時代と共に一般にも普及したものです。
九字切
五芒星
勝
可(上に突き抜ける)
X印
富嶋神社の御旅提灯練り
水引幕に五芒星が記された東釜屋屋台。氏子の提灯練りにも、五芒星の提灯が見られました。
本幟に見られるX印
本幟(セーマン、ドーマン、勝、叶、可)
参考
粕谷宗関(2001)イキマの美ー播州祭屋台学宝鑑. 友月書房.
私信(2024/11/6)
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