深読み:怖い女神
インドには恐るべき女神カーリーがいます。ある説によれば、女神ドゥルガーがアスラの軍と戦ったとき、怒りによって黒く染まった女神の額から出現し、アスラを殺戮したとされます。勝利に酔ったカーリーが踊り始めると、そのあまりの激しさに大地が粉々に砕けそうだったので、夫のシヴァ神がその足元に横たわり、衝撃を弱めました。横たわるシヴァの腹を踏みつけて、ペロリと長い舌を出したカーリーの姿を絵や像が、インドでは見られます。端的に言うと、シヴァ神の妻パールバティの戦女神の姿(化身)がドゥルガーであり、怒りのみを抽出した姿(化身)がカーリーです。戦女神ドゥルガーは、力(シャクティ)の化身とされます。カーリーは、ヒンドゥ教の女神信仰の対象にもなっています。
世界中の神話には、各地域で怖い女神が描かれているようです。日本神話ではイザナミ、ポリネシアではヒネ、メソアメリカではトラルテクトリがいます。女神は命を生み出す側面がありながらも、一方で、その生み出した命に責任を持っています。つまり死を与えることにより命を回収しています。
このように世界各地の神話で、「命を与え、回収する」という共通したものが人類の祖先が生み出したというのは、「生と死」という避けては通れないものを、神々の姿として描き、言い伝えてきたのかもしれません。
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