資産運用マネージャーは、選挙の不確実性に投資したくない(強気ながら慎重なトム・リー)
2024年9月25日、Fundstrat Global Advisorsのトム・リー氏を迎えてのCNBCのインタビューです。現在の相場の見立て、選挙を前にした市場の見通し、投資家界隈で交わされている投資家達の市場見解について共有がされています。 またセクター別の動向や昨日中国政府から発表された景気刺激策の影響についての見解も示されています。総じて、FRBの大幅利下げ後の市場は、ポジティブな反応を見せているものの、選挙を控えた不透明な状況や投資家の慎重な姿勢が短期的な市場動向に影響を与えているという見解を示し、特にテクノロジー株のパフォーマンスが今後の市場全体の安定に大きく関わる他、現在不安定にみられる小型株は乱高下を繰り返しながら徐々に底値を形成しながら長期的な上昇する期待が持てるとしています。
[主なサブテーマ]
FRBの金融政策と市場の反応
選挙と投資家の行動
株式市場のセクターごとの動向
債券と株式の選好
テクノロジー株と小型株
中国経済の見立て
以上、ご参考下さい。
(1)インタビュー
[スコット・ワプナー](CNBC)
さて、株価は更にどれくらい上昇するのでしょうか?
Fundstratのリサーチ部門責任者であり、CNBCのコメンテーターでもあるトム・リーさんにお伺いします。
トムさん、今回も生中継でのご出演、ありがとうございます。
[トム・リー](Fundstrat Global Advisors)
お会いできてうれしいです。
[スコット・ワプナー]
FRBが大幅利下げをして以来、市場は先週の木曜日以外、ほとんど動いていませんよね。なぜでしょうか?
[トム・リー]
ええ、そうですね。FRBが金融緩和サイクルに入ったことから、ポジティブな動きになると思います。歴史的にも、3ヶ月後や6ヶ月後には良い結果が出ることがわかっています。ただ、来月の株価の動きについては予測が難しく、まさにコインの裏表のような状況です。
ポジショニングの再調整が行われたこともあり、更に選挙まで40日というタイミングをマーケットは意識しているのだと思います。
[スコット・ワプナー]
選挙まで40日しかないという事実が、FRB後の相場上昇シナリオを台無しにしているのでしょうか?
[トム・リー]
私は少し遅れると思っています。というのも、私が参加しているカンファレンスや話をしている富裕層の資産運用マネージャーやファミリーオフィスの方々は、その多くが選挙が終わるまでは資金を投入したくないと言っています。誰が選挙に勝つかではなく、単にそのイベントが終わってから動きたいという考えが強いようです。
[スコット・ワプナー]
選挙が終わった後は、一気にフィニッシュに向けて動き出す、そんな感じになるとお考えですか?
[トム・リー]
そのケースはよくあることですね。実際、選挙のある年は、11月から12月にかけて大きな上昇が見られることが多いです。特に、年初から市場が10%以上上昇している場合、11月から12月にかけてさらに大きな上昇が期待されます。ただ、9月は少し不安定な動きが続くこともあります。
[スコット・ワプナー]
投資家は、経済は乗り切ることができるし、FRBがうまくやり遂げると信じているのでしょうか?FRBの発表以来、目の前の市場動向に、大きな疑念点はないのでしょうか?
[トム・リー]
今のところ、順調です。今週金曜日にはコアPCEの発表がありますが、このデータでインフレがもはや大きな懸念材料ではないということを確認できるのを期待しています。ただ、気になっている点としては、すでに景気後退に入っていると考えている投資家やプロの資産運用マネージャーが非常に多いことです。ですので、予想以上に良いデータが出れば、そうした見方も「軟着陸」への期待に変わってくるのではないかと思います。
[スコット・ワプナー]
最近、S&P500の目標価格についていくつか話題が出ていますよね。ブライアン・ベルスキー氏(= BMOキャピタルマーケッツのCIO)が言及した例で、彼は目標を市場最高レベル(= 6,100ポイント)にまで引き上げました。あなたにも最近の市場について何度かお聞きしていますが、自身の目標を同様に引き上げるつもりはないのでしょうか?
[トム・リー]
今後3ヶ月から6ヶ月先を見れば、かなりの上昇余地があると思います。ただ、今すぐ6,000ポイントを目標にして投資すべきと言うのは、少し難しいかもしれません。バリュエーションがそれほど割安ではないですし、すでにかなり大きく上昇しているからです。だからといって、私自身がベアリッシュだとは思っていません。ただ、3ヶ月から6ヶ月先を見据えると、自信を持って「魅力的である」と言えます。
特に、マージンデット(信用取引時の借入金)のような指標に関しては注目すべきです。これについては、投資家がレバレッジを減らしているおり、8月には減少します。そして、この4ヶ月間、株式市場が上昇しているにもかかわらず、大きな動きは見られていません。
[スコット・ワプナー]
私が思うに、あなたはいつもより強気じゃないように聞こえるのですが。そう思ってもいいですか?
[トム・リー]
そうですね、年末に向けては強気ですが、選挙日までの市場の動きには少し不安があります。ただ、大きな下落があるとは思っていませんし、仮に大きな下落があれば、私はそのタイミングで買い増しを検討します。但し、新高値をつけて選挙後に急騰するという展開も期待していません。むしろ、選挙が終わった後の方が、状況が大幅に良くなると考えています。
[スコット・ワプナー]
テクノロジー株がこれまでのようにリーダーシップを発揮しなければ、新高値を更新することは難しいのでしょうか?
[トム・リー]
テクノロジー株が市場のパフォーマーである限り、S&P500全体も安定します。しかし、もしテクノロジー株が下落したとして、他の銘柄がその分を埋め合わせるのは難しいでしょう。ただ、これまでの動きを見ると、特に最近のNVIDIAやTeslaのような銘柄は堅調に推移しています。それに加えて、他の銘柄もカタリストや回復の兆しを見せ始めているのが見て取れます。
[スコット・ワプナー]
市場全体に広がるトレードはどうでしょう?例えば、ラッセル指数を見てください。あなたは大きく予測していましたが、今週だけで1%を超えて下落していて、あまり動きがありません。以前、「FRBが利下げしてからラッセルに移るべきだ」という声をよく聞きましたが、どうお考えですか?
[トム・リー]
先週、ラッセル指数は大きく上昇しましたが、現在は利益確定の動きが見られます。ただ、これは底値形成の典型的な動きだと思います。底値というのは、一直線に上がるものではありません。2021年にエネルギー株が底をつけたときも非常に不安定でしたが、最終的には新高値を更新し、2020年から翌年にかけて大きな上昇を遂げました。ですので、ラッセル指数も長期的な上昇の始まりだと考えています。動きは不安定に見えますが、依然として史上最高値付近にあり、小型株を保有する根拠は十分に強いと思います。
[スコット・ワプナー]
一部では、市場の多くのセクターが今や過密状態だと指摘されています。多くのセクター、例えばインダストリー株や公益株などは高値付近で取引されていて、そうした中で債券のほうが魅力的だという声もありますが、どうお考えですか?
[トム・リー]
そうですね、債券投資家は株式投資とは異なる理由で債券を購入しています。株式はインフレ対策になるだけでなく、利回りの低下や資本成長、ポジティブなサプライズも期待できます。一方で、債券はポジティブなサプライズが起きることはほとんどありません。
債券投資家も、ある程度の収入とキャピタルゲインを期待することができますが、現在は非常に多くの良い投資機会が存在しています。中国が実際にパフォーマンスを改善し、ブレイクアウトする兆しが見えていることも良いサインです。過去数年間、そこが大きな足かせになっていましたが、今はプラスの要因になりつつあります。
[スコット・ワプナー]
今週中国で起こった動きについてはどう感じていますか?中国経済の転換点が市場全体にどんな影響を与えるか、これで見方が変わるとお考えですか? 一部の株、特にLVMH(LVMHF)やエスティローダー(EL)などの高級ブランドや、ゲーム関連株が好調ですが、全体的な視点ではどうでしょうか?
[トム・リー]
そうですね、中国に関しては、短期的な反発か、それとも本格的な底打ちかを見極めるのは難しいところです。私は、弊社のテクニカルストラテジストであるマーク・ニュートンと話す機会がありましたが、彼は今回の動きが本物のブレイクアウトだと考えています。これは、刺激策に加え、中国に対して絶え間なく悪いニュースが続いている中での上昇です。悪いニュースにもかかわらず市場が上昇するというのは、最悪の状況がすでに織り込まれているサインかもしれません。そうであれば、中国市場はしばらく上昇を続ける可能性があると思います。
(2)オリジナル・コンテンツ
オリジナル・コンテンツは、以下リンクからご覧になれます。
尚、本投稿の内容は、参考訳です。また、意訳や省略、情報を補足したコンテンツを含んでいます。
CMBC
(Original Published date : 2024/09/25 EST)
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だうじょん
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