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HPEのAI戦略:ジュニパー買収後のNVIDIAとのパートナーシップ

 HPEのCEOアントニオ・ネリ氏を迎えたYahoo Financeのインタビュー(10月17日)をご紹介します。同社はジュニパーネットワークスの買収を目前に控え、ハイブリッドクラウドやAI事業を強化しており、特にネットワークレイヤーを強化したハイブリッドクラウドとAI基盤の提供拡大を目指しています。また、HPEはエネルギー効率を重視したAIシステムを開発しており、業界初となる100%ファンレスの液冷システムを導入することで、消費電力の大幅な削減に取り組んでいます。さらに、NVIDIAとのパートナーシップを背景に、同社は大手および中堅のサービスプロバイダー、ソブリンクラウド、そしてよりシンプルで導入が容易なソリューションを求めるエンタープライズをターゲットにした開発を進めていることが紹介されています。

[サブテーマ]

  • ジュニパーネットワークス買収の状況

  • エネルギー効率の高いAIシステムの技術開発

  • ターゲット顧客とソリューション

  • NVIDIAとのパートナーシップとBlackwellチップ

  • 関税の影響について





1. インタビュー



[シーナ・スミス](Yahoo finance)
 
HPは、AI事業の拡大を目指し、数週間以内にジュニパーネットワークスの買収を完了する予定です。ここで、HPエンタープライズのアントニオ・ネリCEOをお迎えしてお話をお伺いします。
アントニオさん、本日はお時間をいただきまして、誠にありがとうございます。スタジオにお迎えできて嬉しいです。
 

[アントニオ・ネリ](HPE CEO)
 お招きいただきありがとうございます。
 

[シーナ・スミス](Yahoo finance)
 では、先ほどのジュニパーネットワークスの買収についてのタイムラインについてお話ししましょう。発表が数週間先だと聞いたとき、マーケットではかなりの盛り上がりが見られましたね。そのタイムラインについて教えていただけますか?また、この買収が短期的にHPに与える影響について、どうお考えでしょうか?


[アントニオ・ネリ]
 この買収に非常に興奮しています。当初より、この取引は今年の年末か来年の初めには完了すると発表していますが、まさにあと数週間のところまで来ており、タイムラインに変更はありません。規制当局とのやり取りも非常に順調に進んでおり、早く調整を完了させて、市場に対し、この買収のシナジーだけでなく、ジュニパーの素晴らしい技術とHPの知的財産を組み合わせることで生まれるハイブリッドクラウドとAIの両方についてお伝えしたいと考えています。


[ブライアン・ソッツィ](Yahoo finance)
 以前にもお伝えしたことがあると思いますが、マーケットは御社のことを正しく評価していないと思うんです。ジュニパーが加わった後、HPの財務状況はどのように変わるのでしょうか?


[アントニオ・ネリ]
 まず、財務面からお話ししましょう。取引が完了すると、当社は350億ドル規模の企業になります。今年のガイダンスで、我々は約300億ドル規模になると示していましたが、ジュニパーの予測を更新したことで、約50億ドルが加わることになります。つまり、350億ドル規模ということです。そして、ネットワーキング事業が当社利益の15%以上を占めることになります。財務構造的な観点から言えば、ネットワーキング事業は異なる利益構造を持っており、利益率もかなり成長する見込みです。
 しかし、特に私が興奮しているのは、ポートフォリオで何ができるかという点です。これまでも「エッジからクラウドへの体験」について話してきましたが、世界はハイブリッドであるという考えに至っており、特にここ2年ほどは、ハイブリッドクラウドとAIを実現するために非常に強力なネットワーキング基盤が欠かせません。AIは本質的にハイブリッドかつデータ集約型のワークロードであり、設計上、大量のデータを適切なモデルに接続する必要があります。トレーニングでも推論でも同様です。
 HPは、モダンでセキュアなAIドリブンのネットワーキング基盤を提供し、その上で、ハイブリッドクラウドやエンタープライズAIの分野でHP GreenLakeプラットフォームを活用し、「AI at Scale」と呼ぶAIモデルのビルダーやサービスプロバイダーに向けたソリューションを提供していきます。


[ブライアン・ソッツィ](Yahoo finance)
 それを実現するには多くのエネルギーが必要ですが、業界全体の問題ですよね。例えば、Googleのような大手テクノロジー企業が原子力に踏み切っていることについて、どうお考えですか?これらの動きも、あなたの手掛けるシステムを支える、未来を見据えた動きだと思われますか?
 

[アントニオ・ネリ]
 今後、複数の分野でイノベーションが急速に進展すると思います。特に、エネルギーは非常に重要な要素で、ネットワークのスケーリング能力と同様に、核エネルギーや再生可能エネルギーが大きな役割を果たすことになると思います。我々の役割は、より効率的なシステムを設計することにあります。だからこそ、先週の「AI Day」で、業界初の100%ファンレス液冷システムを発表しました。このアーキテクチャに移行することで、空冷から直接液冷にすることで、消費電力を90%削減できます。エネルギー面での革新もシステム設計の革新も必要であり、それがAIを大規模かつ持続可能に推進する力になるのです。
 同時に、バックエンドでの「廃棄物」を削減する必要があります。これを循環型経済と呼びますが、資産のライフサイクルを管理することが非常に重要になります。そして最後に、フットプリントです。液冷システムに移行することで、密度が高くなるため、スペースを50%削減できることが証明されています。

「HPE AI Dayのサマリ・イラスト」(クリックして拡大)


[シーナ・スミス](Yahoo finance)
 それらの成長軌道についてどのようにお考えですか?今週、市場ではAI需要がピークに達しているのではないかという懸念が一部見られましたが、そのほとんどは解消されたようです。
 今後5年から10年の間に、その需要機会をどのように捉えていらっしゃいますか?また、そのポテンシャルにより、将来的にさらに大規模なAI契約がどれくらい期待できるとお考えですか?
 

[アントニオ・ネリ]
 まず、AI自体の成長が鈍化しているとは感じていません。これまでは、AIの話題は主にモデル構築者や大手クラウド企業に焦点が当たっていましたが、現在は企業向けの分野で大きな加速が見られます。最終的には、HPのような企業がどのようにこの技術を活用して、ビジネスの生産性を高め、より低コストで優れた体験を提供するかが重要になってきます。
 現在、企業は価値探索や実験段階から実際の導入へと移行しています。先週も、製薬業界における分子ドッキングから、ボットを活用したカスタマーサービス、保険業界での財務リスク評価まで、さまざまなユースケースが紹介しました。企業はこの技術に本格的に取り組み始めましたが、同時にコストがかかることも理解しており、投資対効果や生産性向上の成果を知りたがっています。ですが、2025年と2026年には、企業の導入がさらに加速する年になると確信しています。
 

[ブライアン・ソッツィ](Yahoo finance)
 あなたはNVIDIAのジェンセン・フアンCEOと長い付き合いがあると伺っていますが、NVIDIAのチップを使用しているのでしょうか? また、顧客はBlackwellチップを入手できる状態なのでしょうか?
第4四半期にこのチップの需要が非常に高まっていると聞いていますが、多くの方がチップを手に入れることはできない状況だと考えてよろしいでしょうか?
 

[アントニオ・ネリ]
 まず、我々はNVIDIAとの素晴らしいパートナーシップがあります。HP Discoverで「NVIDIA Computing by HP」を発表したことを覚えているかもしれませんが、ジェンセンと共に協力し、特に企業向けに注力することを決定しました。大規模プロバイダーが求めているのは、最新技術を使って迅速に市場に出すことであり、そのためにBlackwellが重要な役割を果たしています。彼らは空冷から液冷に移行し、さらに高い電力密度と性能を実現しようとしています。現在、その計画は順調に進んでおり、我々はエンジニアリング検証など、通常の作業を進めています。スケジュールも予定通りです。そして、大手プロバイダーが最初にBlackwellを採用するでしょう。
 その次に採用するのが、我々が「Tier 2」と「Tier 3」と呼ぶサービスプロバイダーです。彼らは、データセンターを必要とする顧客にホスティングやキャパシティを提供するビジネスをしています。そして3つ目のグループは「ソブリン」、つまり政府や国家が公的・民間セクター向けにAIクラウドを提供している分野で、ここでも大幅な成長が見られています。
 そして最後に企業ですが、企業が求めているのは最新技術そのものではなく、シンプルさと導入の容易さです。そこで、ジェンセンとは、箱から出してすぐに使えるようなソリューションを共同で設計しました。実際にそのプロダクトのデモでは、3回のクリックだけで、30秒以内にAIアプリケーションを導入可能なことを示しています。企業顧客は、他の顧客に比べるとBlackwellの導入は先のことになりますが、それでも十分な利便性を提供できると考えています。
 

[シーナ・スミス](Yahoo finance)
 最後に少しだけお聞きしたいのですが、大統領選挙についてどうお考えでしょうか?
 特に、他のテクノロジー業界のビジネスリーダーたちとの間で、政策に関する議論がどのように進んでいるか興味があります。候補者によってビジネスに与える影響が変わると思いますが、どちらの方が御社にとって有利だとお考えですか?
 

[アントニオ・ネリ]
 まず、我々の会社では、6万1千人以上の従業員に投票を促し、彼らの声がしっかりと届くようにしています。しかし、会社としての焦点は、雇用を促進し、従業員に利益を提供し、知的財産を保護し、競争力を維持する政策にあります。最終的には、企業に対する税制や関税など、どこでバランスを取るかが重要です。我々は、公平な競争環境の中で、自社の実力で勝ち取ることができるような状況が必要だと考えています。ですので、特定の候補者を支持するということではありません。時々、どちらか一方に焦点が当たりがちですが、実際にはその中間の立場が大切だと思います。選挙が終わった後は、米国にとって最もバランスの取れた方法を見つけつつ、企業が投資を続け、知的財産を保護し、イノベーションを起こし、労働力を育成するためのインセンティブを与えることが重視されると考えています。
 

[ブライアン・ソッツィ](Yahoo finance)
 関税は、あなたのビジネスにとって困難をもたらすものでしょうか?それとも、実際に困難になると思われますか?
 

[アントニオ・ネリ]
 一般的に言えば、そのような状況は誰にとっても厳しいものだと思います。というのも、市場で競争力のある製品を提供しなければならないからです。ただ、重要なのは財務モデルだけでなく、製品そのものの優位性にも関わってきます。法人税の引き上げは、最終的には投資先をどうするかという問題を引き起こすため、事業を難しくします。
 我々は知的財産に多くの投資をしてきました。この驚異的な液冷システムを設計するためには、何年もかけた多大な投資が必要でした。だからこそ、企業がさらにR&Dや人材育成に投資するよう、インセンティブを提供すべきだと思います。今では誰もがAIに触れる必要があり、我々自身もそうですし、いずれは全員がAIの基礎知識を持つべきだと考えています。もちろん、リサーチも欠かせません。
 

[シーナ・スミス](Yahoo finance)
 いつもお話しできて嬉しいです。お越しいただき、ありがとうございました。
 



2. オリジナル・コンテンツ

 オリジナル・コンテンツは、以下リンクからご視聴になれます。
尚、本投稿の内容は、参考訳です。また、意訳や省略、情報を補足したコンテンツを含んでいます。

Yahoo Financeより
(Original Published date : 2024/10/17 EST)

[出演]
  HPE
    アントニオ・ネリ(Antonio Neri)
    CEO

  Yahoo finance
    ブライアン・ソッツィ(Brian Sozzi)
    シーナ・スミス(Seana Smith)



<御礼>

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だうじょん


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