トランポノミクス2.0(Trumponomics 2.0)の解読:減税・移民・次期FRB議長候補、そして投資家への影響について
「トランプ2.0」の経済アジェンダについてYahoo Financeが行ったトランプ氏の経済アドバイザーであるスティーブン・ムーア氏への最新インタビューです。
トランプ氏の2回目の大統領としての経済アジェンダはまだ明確となっていませんが、法人税(Corporate taxes)と家計税(household taxes)の引き下げ、移民政策の厳格化、国内エネルギー生産の拡大が行われる見込みながらも具体的な内容は不足しています。
スティーブン・ムーア氏は、次期トランプ政権を見据えた経済戦略について見解を述べています。
(Original:2024/07/18)
【1】プロローグ
ヤフーファイナンスのポッドキャスト「Opening Bid」へようこそ。Yahoo Financeのエグゼクティブ・エディター、ブライアン・ソッツィです。
今回のエピソードでは、長年の経済学者であり作家でもあるスティーブン・ムーア氏との特別対談をお届けします。彼はヘリテージ財団の経済学の上級客員研究員で、プロジェクト2025(https://www.project2025.org/)に非常に力を入れています。
スティーブン氏は、ドナルド・トランプ前大統領の長年の経済アドバイザーです。今回、彼に話を伺うことにしたのは、トランプ氏が再び大統領になった場合、投資家や経済にどのような影響を与えるのかが注目されているからです。
トランプ2.0の経済アジェンダについては、既にいくつかの点が明らかになっています。その一つが減税です。前大統領は、2025年に期限が切れる減税を維持したいだけでなく、富裕層や企業に対してさらに減税を実施する可能性があると言われています。これは、彼が経済的見地から掲げている重要な方針の一つです。
次に、彼の中国に対する関心も無視できません。ウォール街の一部では、彼の政策が他の国々にも影響を及ぼす普遍的な関税と見なされていますが、特に中国に対してさらなる関税を課す可能性が高いと言われています。トランプ前大統領が関税政策に関してどのような行動を取るのか、多くの注目が集まっています。
彼が以前、中国に関税を課した際にはホワイトハウス内で賛否が分かれました。私たちが話を聞いたウォール街のエコノミストの多くは、欧州に対する普遍的な関税や中国に対するさらなる関税がアメリカの経済成長に悪影響を及ぼす可能性があると考えていますが、具体的な影響についてはまだ不明です。トランプ氏の経済計画の詳細は、現時点では明らかになっていません。
また、前大統領がジェローム・パウエル現米連邦準備制度理事会(FRB)議長についてどう考えているのかも注目されています。トランプ前大統領の過去のツイッターやXの投稿を振り返ると、彼はパウエル氏に対してあまり好意的な発言をしておらず、パウエル氏の仕事ぶりを評価していないことを公にしていました。しかし、最近のインタビューでは、パウエル氏が「良い仕事」をしていると判断すれば、パウエル氏の任期を全うさせることに前向きであることが分かりました。
また興味深いことに、イーロン・マスクがドナルド・トランプを支持しています。前大統領はバイデン政権が推進する電気自動車(EV)構想の多くを削減したいと考えていました。トランプ2.0政権の下でのEV生産スケジュールや計画の詳細について、多くの関心が寄せられています。
最後に、移民問題も重要な懸念事項です。前大統領は数百万人の不法移民を強制送還することを明言しています。これに対して、ビジネスリーダーや投資家は、特にハイテク分野でのビジネスの成長を支える合法的な移民の扱いについて懸念しています。
それでは、長年の作家であり、ドナルド・トランプ前大統領の経済アドバイザーでもあるスティーブン・ムーア氏との新しいエピソードをお聞きください。
【2】インタビュー
[ブライアン・ソッツィ]
多くの話題に入る前に、まず現地の雰囲気についてお話しします。現地の様子はどのような感じでしょうか?現地にいない方々のために、見たり聞いたりしていることをいくつかご紹介ください。
[スティーブン・ムーア]
ここ数週間の出来事の後、共和党員の間には楽観的な雰囲気が漂っています。トランプ氏は英雄のように扱われ、戦火の中で信じられないほどの勇気を示し、支持者たちは盛り上がっています。トランプ氏がリードしており、このレースに勝てるという実感があります。
一方、バイデン側では、何が起こるか誰にもわかりません。既にトランプ氏は征服した英雄のように見られています。
[ブライアン・ソッツィ]
共和党全国委員会(Republican National Committee)の会場で有権者と話をしたときのことですね。スティーブン、彼らの経済的な懸念のトップは何でしょうか?
[スティーブン・ムーア]
昨日、ロサンゼルスで経済サミットが開催されました。そこで、国境管理の喪失と安全な国境の必要性という二つの重要な問題が議論されました。多くの経済学者は、移民が必要であると考えていますが、800万人もの人々が国境を越えることなく、我々が求める移民を確保できるような、より賢明な制度が必要だと主張しています。
また次に、どのようにすれば経済成長率を3~4%に再生させ、債務を減らすことができるのかという問題です。7兆ドルの予算を続けることは現実的ではないとの意見が出されています。
[ブライアン・ソッツィ]
多くのビジネスリーダーや最高経営責任者(CEO)、最高財務責任者(CFO)、そして一般の投資家が、トランプ前大統領の経済政策について関心を持っています。特に、財政赤字があるにもかかわらず、どうして減税を推進できるのか、再びホワイトハウスに戻った場合、どのくらいの速さで政策を実行できるのかを知りたがっています。
[スティーブン・ムーア]
増税しないようにしなければなりません。もしトランプ氏が勝利しなければ、バイデン氏は減税を中止するつもりですが、これは非常に困ったことです。私が執筆を手伝った減税措置は、経済に大きな恩恵をもたらしました。世界で最も高い事業税率がなくなったことで、雇用と資本が米国に戻ってきました。また、標準控除額が倍増し、税制も簡素化されました。この現行の税制を維持することは非常に重要です。バイデン氏が勝利すれば、これらの減税を取りやめることとなり、それがマイナスとなって5~6年前の状態に戻ってしまうでしょう。
[ブライアン・ソッツィ]
もし減税が中止されたら、アメリカ経済はどうなるのでしょうか?
[スティーブン・ムーア]
バイデン大統領は、トランプ政権による減税を中止し、アメリカ史上初めて含み益に対して課税する方針を示しています。彼はキャピタルゲイン税率を24%から40%以上に引き上げる考えであり、これにより株式市場が下落する可能性があると述べています。課税が実施されれば、価値が下がることが予想されます。
この動きは投資家にとって大きな懸念事項となるでしょう。
[ブライアン・ソッツィ]
先日のブルームバーグのインタビューで、トランプ前大統領はFRBのジェローム・パウエル議長の任期を2028年まで延長する可能性に言及しました。前大統領の時期と比べてトーンが変わった理由は何でしょうか。
[スティーブン・ムーア]
私はこの件について前大統領と話をしました。2025年の任期満了までパウエル氏を続投させ、その後、ジュディ・シェルトン(Judy Shelton)氏、
ラリー・クドロー(Larry Kudlow)氏、アーサー・ラッファー(Arthur Laffer)氏など、彼の経済哲学に近い新しい人物を探すということです。それは理にかなっていると思います。
[ブライアン・ソッツィ]
もう一つ質問です。プロジェクト2025は、労働市場の雇用に焦点を当て、それをFRBの任務から外す計画です。なぜそれが重要なのでしょうか?
[スティーブン・ムーア]
FRBはインフレ抑制に専念すべきですが、最近はあまり良い成果を出していません。インフレ率は下がってきていますが、物価はまだ20%も高いままです。
FRBが気候変動や雇用、社会政策に関心を持つべきではありません。中央銀行の役割は、物価を安定させることです。私は、FRBの次の動きを予測する必要を避けるために、FRBルールや価格ルールを設けることに賛成です。前大統領も、ドルを金と同等に保ち、世界の基軸通貨として維持することに重点を置くことに賛成しています。
【3】エピローグ
[ブライアン・ソッツィ]
経済学者で作家であり、トランプ前大統領の長年の経済アドバイザーであるスティーブン・ムーア氏の興味深い話でした。ムーア氏は、2016年にトランプ前大統領に助言し、減税案を作成する手助けをしています。
まず、ムーア氏は、FRBジェローム・パウエル議長の後任候補として、ジュディ・シェルトン氏の名前を挙げました。この2人の名前は過去にも取り沙汰されており、ムーア氏のようなトランプ陣営の経済インサイダーがジュディ・シェルトン氏やアーサー・ラッファー氏、経済界で長年活躍してきた現在FOX司会者のでラリー・クドロー氏を次期FRB議長候補として挙げるのは非常に興味深いことです。
次に、ムーア氏は、財政赤字が増えるにもかかわらず、トランプ2.0ではさらに減税を推進し、初期の減税を定着させることができると確信しています。これが興味深い点は、赤字がそれほど懸念されていないことです。
最後に、トランプ前大統領はジェローム・パウエル氏をFRB議長に留任させたいと考えていることを確認しました。投資家にとって、FRBの政策における継続性は重要です。特にFRBが低金利政策や利下げサイクルに入る可能性があるため、この継続性を維持することは非常に重要です。
以上、スティーブン・ムーア氏との話から得た興味深い点をお伝えしました。
最後までお読み頂きまして誠に有難うございます。
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だうじょん
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