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AI、エネルギー、そして産業革新:超党派シンクタンクとの対談[9/27] - NVIDIA CEO ジェンスン・フアン氏


 2024年9月27日の午前に、ワシントンD.C.で「超党派政策センター」(BPC:Bipartisan Policy Center)が主催するNVIDIAのCEOジェンスン・フアン氏を迎えてのBPCの会長兼CEOであるマーガレット・スペリングス氏との対談が行われました。

 概ね1時間にわたるこの対談では、主に「エネルギー」をテーマに議論が進められました。AIがエネルギー環境に与える影響や持続可能性へのAIの貢献、また、気候変動やライフサイエンス分野におけるNVIDIAのアクセラレーテッド・コンピューティングが話題となりました。最後には、参加者からの質問に答えるQ&Aセッションでクローズしています。
 議論は、エネルギー分野での変革を支援するNVIDIAと連邦政府との連携について、また、原子力発電や再生可能エネルギー、パワーグリッドにおけるAIの活用など、幅広い議論とそれらテーマに対するジェンスン・フアンCEOの見解が示されています。以下は主なサブテーマです。

  • アクセラレーテッド・コンピューティングの発展

  • AIの高い省電力性能

  • エネルギー効率に貢献するAI

  • AIと労働市場

  • AIにより生まれる新たな産業

  • AI主導の国家安全保障

  • 規制とリスク

尚、個人的に興味深かったのは、以下の2点です。 

  • AI技術によってライフサイエンスに革命をもたらし、デジタルバイオロジーの進化型として「生命工学」を築き上げ、未来の医療や科学技術に貢献することが、NVIDIAにとっての最大の可能性であり、そのことに取り組むことが我々の使命だと考えている、とジェンスン・フアンCEOが言及したこと。

  • 蓄電システムのコストや、発電量の日中変動といった再生可能エネルギーの効率的な利用に関する課題に対しては、エネルギーを必要な場所に運ぶのではなく、エネルギー発生源の近くに、エネルギーの供給変動に柔軟に対応可能なデータセンターを設置することで、再生可能エネルギーを効率的に有効活用して、AIのトレーニングや計算が実現できるという解決策をジェンスン・フアンCEOが示したこと。

以下、長文コンテンツとなりますが、ご興味次第でご参照ください。




(1)イベントの背景とBPCについて


 「超党派政策センター」(BPC:Bipartisan Policy Center)は、2007年に設立された米国のシンクタンクで、主に異なる政治的立場の議員(民主・共和の両党の議員)や専門家が協力して政策提言を行うことを目的とする組織です。米国内の複雑な課題に対して、超党派(bipartisan)の協力を通じて、現実的かつ実行可能な解決策を模索・検討しており、特に経済政策、エネルギー、教育、移民、医療などの幅広い政策分野を対象に活動しています。
 BPCの特徴としては、民主党と共和党双方から議員や専門家を集め、意見の対立を超えて合意形成を図り、持続可能な長期的解決策を目指すことが挙げられ、また、政治的に中立な立場でありながら、政策決定に影響を与える提言を行う点も特徴となっています。
 このような背景の中、BPCのエネルギープログラムでは、クリーンで手頃なエネルギー供給を目指し、脱炭素化や技術革新の推進を通じて、AIの進展がエネルギーシステムの近代化にどう貢献できるかを探る重要な取り組みが進められています。政府と業界がどのように米国のAI技術とエネルギー政策の未来を切り開いていくかが、現在の主要なテーマとなっており、今回、ジェンスン・ファンCEOを招いて開催されたイベントもこのような背景があってのものとなっています。



(2)対談

 (※ 冒頭のイベント・イントロダクション部分は省略)


[マーガレット・スペリングス](BPC)
 
本日はお越しいただき、誠にありがとうございます。ご存じの通り、私たちBPCは、人々が集まり、共通の理解を見つけ、解決策に向けて進むための場を提供する役割を誇りに思っています。特に、AIとエネルギーに関しては、今まさに深い議論と優れたアイデアが必要とされている分野です。そのため、皆様を今日お迎えできることを大変嬉しく思います。

 ジェンスンさん、一緒に過ごせることができて本当に光栄です。

[ジェンスン・フアン](NVIDIA)
 
こちらこそ、参加できて嬉しいです。

[マーガレット・スペリングス](BPC)
 
ご存じの方も多いかと思いますが、テレビをご覧の皆様にはお伝えしておきます。ジェンスンさんは、約3万人の従業員を擁する3兆ドル規模の企業、NVIDIAの創業者です。

[ジェンスン・フアン](NVIDIA)
 
3兆ドルに達するよう取り組んでいるところです。

[マーガレット・スペリングス](BPC)
 
あなたには本当に感銘を受けています。さて、最初にどのようにして始められたのか、いわゆる「オリジン・ストーリー」を教えていただけますか? そして、どうして本日、ここで私たちと一緒にいることになったのかもお聞かせください。

[ジェンスン・フアン](NVIDIA)
 
ええ、本当にゼロからですか?

[マーガレット・スペリングス](BPC)
 
いえいえ、そうではなくて、NVIDIAとあなた自身の物語をお聞かせください。

[ジェンスン・フアン](NVIDIA)
 
私たちはシリコンバレーのエンジニアで、コンピュータを設計していたときですが、もっと効率的な設計方法があることに気づきました。現在私たちが使っているコンピュータは「汎用コンピュータ」と呼ばれ、1964年、私の生まれた翌年にIBMによって発明されました。このシステムはIBM System/360と呼ばれ、中央処理装置(CPU)、マルチタスク機能、オペレーティングシステムとハードウェア・ソフトウェアの分離、入出力サブシステムなどの概念を取り入れました。この基本技術は、今日も使われており、改良されて高速化されていますが、基本的なアーキテクチャは変わっていません。それは何でもできる汎用コンピュータです。
 しかし、30年前、1993年に私たちは特化した問題に対しては、汎用コンピュータが必ずしも最適解ではないことに気づきました。これは、作業を専門家ではなくジェネラリストに任せるようなものです。ソフトウェアにも同様の課題があります。例えば、シミュレーションや物理エミュレーション、データ処理、コンピュータグラフィックスなどの分野では、非常に計算負荷の高いアルゴリズムが使われています。こうした問題に特化したプロセッサや専用の処理が可能なチップを1つ追加するだけでコンピュータの性能を100倍に向上させることができるのです。
 では、どうして1つのチップを追加するだけで100倍速くなるのでしょうか?それは、それぞれのチップが得意分野に集中できるためです。このように特化した処理をオフロードして加速することを「アクセラレーテッド・コンピューティング」と呼びます。この手法の驚くべき点は、その適用領域が時間の経過とともに拡大していることです。アプリケーションの処理速度を10倍、20倍、さらには50倍に加速するのは珍しいことではありません。そして、50倍に加速しても、追加するのは1つのチップだけですから、消費電力、エネルギーコスト、そして全体的な費用は25分の1に削減できるのです。このアプローチは、さまざまな問題の解決に大きく貢献します。
 最初にこの技術を商業利用したのはビデオゲームの分野でした。多くの方にとって、NVIDIAは未だに「ビデオゲームの会社」として認識されています。実際、私たちは世界で最も多くのゲーム用コンピュータを製造しています。PCゲームをするなら、たいていNVIDIAの製品が使われていますし、任天堂のゲーム機にもNVIDIAの技術が採用されています。ですが、私たちにとっては産業用アプリケーションも重要です。最初に取り組んだのは、バーチャルスクリーニングのための分子動力学シミュレーションやエネルギー探査のための地震波解析、さらに流体力学や気象シミュレーションなどでした。
 そして、ある日、人工知能が私たちのもとに訪れて来たのです。このように、アクセラレーテッド・コンピューティングは将来のコンピュータのあり方を見越したものであり、それが正しかったことが証明されたのです。

[マーガレット・スペリングス](BPC)
 
早速ですが、「サステナブルコンピューティング」という話に拡げると、エネルギーの節約が重要なポイントになってきます。

[ジェンスン・フアン](NVIDIA)
 
私たちが気づいたのは、あらゆる問題を汎用的なアプローチで解決しようとすると、エネルギー効率が悪いということです。つまり、非効率な方法で物事を進めているということです。これを例えるなら、車を作る工場を考えてみてください。すべての車が異なる仕様で作られると仮定し、ジェネラリストのチームに「次はバンを作って」「次はスポーツカーを」「次はトラックを」と指示していくようなものです。すべての車を個別に作るので、工場の設計もジェネラリスト向けにしなければなりません。しかし、もし「次の100万台は全く同じ車を作る」と決めた場合、製造効率は劇的に向上します。これは、職人が1台1台手作りするのと、大量生産を行うのとの違いです。使用するエネルギー量も大幅に減少することになります。
 私たちは32年前に、作業には汎用的に順序立てて進めなければならない部分と、並列処理が可能な部分があるという結論に至りました。たとえば、物理計算をする場合や分子の動き、人工知能のニューラルネットワークが次の単語を予測する場合など、このような特定のアプリケーションでは、一度に膨大な処理を行うことが可能です。
 少し難しく聞こえるかもしれませんが、プログラムの実行は「スレッド」と呼ばれます。1つのスレッドに沿って処理を進めることができるのです。汎用的なCPUは1回に1つか2つのスレッドを処理できますが、私たちは数万のスレッドを同時に処理することができます。したがって、多数の小さなスレッドに分割できる作業であれば、私たちははるかに高速で、しかもエネルギー効率良く処理することができるのです。

[マーガレット・スペリングス](BPC)
 
AIとエネルギーの関係についてもう少しお話ししましょう。現在、AIがエネルギー需要を圧迫し、停電を引き起こすのではないかという懸念が広がっています。特にアメリカでは、エネルギー供給の安定性は非常に重要な問題です。私はテキサス出身ですが、そこでもこの話題はよく議論されます。そこで、NVIDIAにおけるAIとエネルギーの関係について、そしてより広い視点でどのように捉えているのか教えてください。

[ジェンスン・フアン](NVIDIA)
 
AIにはエネルギーが必要ですが、まず最初に理解していただきたいのは、AIは使う前に「教える」というプロセスが必要だということです。これは、人間の知能も同じで、使う前に学ばなければならないのと同じです。この学習プロセスが非常に多くのエネルギーを消費します。その理由は、人工知能のネットワークが試行錯誤しながら、パターンや関係性を見つけ出し、何かを予測する方法を学習するからです。大量の情報の中から、そのパターンや関係性を見つけ出し、そこから知識、つまり「表現」(Representations)を獲得します。データの中に埋め込まれている知識を発見しようとデータを何度も処理し、関係性を探し出すのです。最終的にその知識を学び取ると、新しいパターンに直面した際にそれを理解し、予測することができるようになります。このプロセスがAIの学習の目的です。
 現在のデータセンターは100メガワット程度のエネルギーを消費しており、将来的には10倍から20倍に増える可能性があります。こうしたエネルギー消費は必ずしも一か所に集中して行う必要はありませんが、AIの学習に使うデータ量はますます増加します。さらに、今後のAIモデルは合成データを使用することが考えられており、例えば、2つのAIが互いに会話をし、私たちが話し合って賢くなるのと同じように、AI同士で学び合います。つまり、AIが他のAIを使ってデータを整理し、さらに次のAIが別のAIを教えるという未来が訪れてきます。このように、AIが学習する方法は今後ますます進化しますが、それには依然としてエネルギーが必要です。
 AIに関して重要なのは、学ぶ場所にはこだわらないという点です。AIがどこで学習するかは重要ではありません。世界には余剰なエネルギーが存在する場所がありますが、そのエネルギーを人口が多い場所に輸送するのは難しい。しかし、余剰エネルギーのある場所の近くにデータセンターを建設し、そこでエネルギーを利用することができます。
 AIの大きな意義は、生産性を向上させ、エネルギーを大幅に削減することです。例えば、AIを使って天気を予測することがその一例です。AIモデルを使って、気象予測に必要な大気の物理学を学ばせることができます。長期的な天気予測には、海洋や陸地、雲、放射、反射、吸収、熱伝導、対流、さらには熱力学や流体力学といった物理法則すべてが絡み合っています。AIにこれらの物理現象を過去のデータから学ばせることで、気象予測の精度が飛躍的に向上します。
 このAIモデルを使えば、従来のスーパーコンピューターを使うよりも数千倍、数万倍もエネルギー効率よく天気や気候を予測できます。AIモデルは何度か学習させれば、世界中で何度も使い続けることができます。現在のスーパーコンピューターを使った天気予測と比べ、AIを使うことで大幅にエネルギーを節約できます。このように、AIの活用例は天気予測だけでなく、さまざまな分野に広がっています。

[マーガレット・スペリングス](BPC)
 
そうですね、気候変動を考える際、AIは問題の一部というよりも、むしろ解決策の一部と見なすべきでしょうね。

[ジェンスン・フアン](NVIDIA)
 
人工知能を使って問題を解決すれば、従来の計算方法で問題を解決するよりもエネルギー消費量が少なくなるということです。これが最初の1つです。
 次に2つ目は、現在私たちは人工知能をスマートグリッドにも活用しています。今の電力網はスマートではありませんが、AIを使えばそれをスマートにすることができます。私たちはPG&E社と協力し、AIをスマートグリッドに統合しました。このAIを使うことで、持続可能エネルギーをグリッドに統合する方法を見つけることができます。たとえば、太陽光発電や車のバッテリーに蓄えられた電力を活用できるかもしれません。電力の供給が不安定になったときには、グリッドの弱点を検出し、分散されたエネルギー源をうまく使うことで電力供給を維持することができます。微細なサインからグリッドの故障をAIが検知・予測し、予防保全のために速やかに作業員を派遣することも可能です。
 また、電力の需要が急増する瞬間を事前に予測し、適切にエネルギーを振り分けることもできます。スマートグリッドは、過剰に設備を用意する必要を減らす手助けになります。
 現在の電力網は、多くの電力を供給できる能力を持っていますが、社会に対して、常体的に電力を供給し続ける必要があります。特に、電力需要が2倍に跳ね上がる日が年間ベースで数日あるため、そのピークに対応できるよう準備しなければなりませんが、それ以外の時期は需要が低いことが多いのですが、スマートなグリッドがあれば、より効率的にエネルギーを再配分できるでしょう。 このように、人工知能を活用した多くの例が存在しています。

[マーガレット・スペリングス](BPC)
 
あなたは本当に教えるのが上手です。
 ここワシントンでは、特に連邦政策が重要なテーマです。連邦政府は、あなたが話されているイノベーションの分野でこれまでも重要なパートナーとなっています。これまでの米国エネルギー省(DOE)の取り組みの歴史、そして今後どの方向に進むべきかについて、どのようにお考えですか? もしあなたがエネルギー省の責任者だったとしたら、どのように投資を行うのが最も賢明だと思いますか?

[ジェンスン・フアン](NVIDIA)
 
私が最もお勧めしたいのは、NVIDIAの全ての従業員や私が会う全ての企業のCEOやリーダーに、もっと人工知能を積極的に活用してほしい、ということです。AIというものは、神秘的に感じられるかもしれませんが、実際にはそれほど神秘的なものではありません。確かに極端な例では、私たちが今こうして会話をしているような神秘的な面もありますが、現時点で人工知能について注目すべき点はいくつかあります。
 これまでのコンピュータ技術の発明と発展によって、コンピュータがかつてないほど簡単に利用できるようになりました。今では、誰でもコンピュータに話しかけて何かを頼んだり、ソフトウェアの作成を依頼したりすることができます。コンピュータがソフトウェアを作ってくれるのです。また、図面や設計図、チャートやグラフを作成したり、何かを読み取って翻訳したり、要約したり、問題を解決することもできます。
 この驚異的なコンピュータ技術が、今では誰でも使えるようになりました。これまで限られた一部の人々だけが利用できた技術が、歴史上初めて、全ての人々に開放されたのです。最初にすべきことは、この技術をどのように自分で活用できるかを理解することです。そして、その次に進んで行きます。そうすれば、科学者やエンジニアたちが発見していることに、あなたも気づくことになるでしょう。
 AIは、よりエネルギー効率が高く、持続可能なエネルギーを実現するための新しい材料を作り出すこともできます。例えば、私たちが取り組んでいる重要な研究の一つに、炭素回収があります。炭素を地下の貯留層にどれだけ圧力をかけて注入できるか、その貯留層がどれだけ炭素で飽和しているかを見極めるのです。このシミュレーションは、従来のスーパーコンピューターでは膨大な計算が必要でしたが、AIを使うことで、約100万分の1のエネルギーで可能になりました。
 このように、人工知能を使う方法は数多く存在します。こうしたアイデアに触れることで、エネルギー省も大いにインスピレーションを得られるでしょう。
 ですので、私が特に強くお勧めしたいのは、まずは自らAIを使ってみることです。米国政府にもAIの活用を進めてほしいと思います。AIを単に管理するだけでなく、実際に使う側になってほしいのです。エネルギー省や国防総省など、すべての部門がAIの実践者となり、AIスーパーコンピューターを構築して、科学者たちが新しいAIアルゴリズムを開発し、国をさらに発展させるべきだと考えています。

[マーガレット・スペリングス](BPC)
 
素晴らしいです。あなたはかつてスタートアップとして革新を起こしてきましたが、現在も「Inception Program for Startups」を通じて、スタートアップのエコシステムと深い関わりを持っています。そのエコシステムについて、そして彼らイノベーターたちをどのように捉えているのか教えてください。

[ジェンスン・フアン](NVIDIA)
 
私たちは、この技術について多くの知識を持ち、豊富なリソースや規模、そして能力を備えています。世界中の企業が、特定の分野でAIを活用しようとしているのを目にします。例えば、「Utilidata」という会社が挙げられます。私はこの会社が大好きで、彼らはスマートグリッドを構築しようとしていたのですが、当初はAIについて深く理解していませんでした。それで、私たちは協力しながら、スマートグリッドにおける人工知能の専門家になりました。とても素晴らしいことです。

[ジェンスン・フアン](NVIDIA)
 
また、宇宙に衛星を展開している企業とも連携しています。宇宙といえば、もちろん衛星が飛んでいる場所です。
 例えば、「e-con Systems」という会社は、スペクトルを使って地球の画像を撮影しており、このハイパー・スペクトル・イメージング・システムを使って、AIに「見る」能力を教えています。それによって、私たちには何も見えなくても、AIはそこから何かを見つけ出せるようになります。例えば、ガス漏れや貯留層の漏れを発見することもできます。この技術を使えば、企業が想像力を駆使してさまざまなことを成し遂げられます。私たちも、AIの能力を活用して彼らをサポートしています。現在、数千のスタートアップ企業と協力しています。

[マーガレット・スペリングス](BPC)
 
彼らがあなたを見つけるのか、それともあなたが彼らを見つけるのか、そのプロセスも興味深いですね。

[ジェンスン・フアン](NVIDIA)
 
時には私たちがスタートアップを見つけることもありますし、向こうから私たちにアプローチしてくることもあります。よくあるのは、私自身が見つけるケースです。記事を読んでいて、面白いことをしている会社を発見するんです。例えば、風力発電所で鳥の安全を守るために取り組んでいる会社など、素晴らしいアイデアを持つ企業がたくさんあります。

[マーガレット・スペリングス](BPC)
 
さて次に、AIの労働への影響についてもお聞きしたいと思います。AIがアメリカや世界全体の労働力に与える影響について、良い面もあれば不安視される面もあります。NVIDIAとして、また企業としての人材、つまり人的資本をどのように育成し、成長させているのか、そしてそれがアメリカや世界の労働力に与える広範な影響について、どのように考えているのかお話しいただけますか?

[ジェンスン・フアン](NVIDIA)
 
まず最初にやるべきことは、この技術を人々にとって理解しやすいものにすることです。この技術は皆にとって非常に有用で、理解すれば大きな力になるからです。しかし、理解できなければ、その力を活かすことはできません。そして実際のところ、この技術は思ったより簡単に理解できるのです。世界中でコンピュータをプログラムできる人は少ないですが、誰もが何かを誰かに頼む方法は知っています。それと同じように、今はコンピュータに自分がやりたいことを伝えるだけで、初めてまともな答えが簡単に返ってくるようになりました。
 完全な文章を使う必要もなく、文法的に間違っていても問題ありません。とりあえず始めてみることです。もしコンピュータがあなたの指示を理解できなければ、逆に何を意味しているのか尋ねてくれます。こうして、やり取りを続けていけば、最終的にコンピュータがこちらの意図を理解し、実行してくれるのです。
 次に必要なのは、この人工知能を広く普及させ、人々がこの驚くべき技術を活用できるようにすることです。これまでは、世界のわずかな人々しか使えなかった技術ですが、これを利用することで技術格差を縮めることができます。私たちはすでに「ディープラーニング・インスティテュート」というクラスを教えています。世界中を回って、特にカリフォルニアでは大規模なキャンペーンを行い、学校やコミュニティカレッジ、高校などで教えています。学びたいという方には、人工知能の可能性について教えています。このような取り組みを全国で行うべきです。もっと多くの人々にこの技術に触れる機会を提供するべきだと考えています。
 人工知能は簡単で、楽しく、そして使うことでインスピレーションを得ることもできます。絵を描く手助けをしてもらったり、レシピを教えてもらったり、ビジネスプランを作成する手助けをしてくれたり、さまざまなことが可能です。

[マーガレット・スペリングス](BPC)
 
もちろん、読む力や計算する力に代わるものはありません。 ご自身の「人的資本」についてはどのように考えていらっしゃいますか? また、リーダーや人材に何を求められていますか? AIが労働力に多くの可能性をもたらしている中で、NVIDIAで一緒に働くリーダーや人材を採用する際に、どのような点を重視しているのでしょうか?

[ジェンスン・フアン](NVIDIA)
 
これまで重視してきたものは何も変わってはいません。変わるのは、ソフトウェアプログラミングの量です。実際に行うプログラミングは減るでしょう。もしくは、別の言い方をすれば、コンピュータをプログラムする方法が変わるということです。

[マーガレット・スペリングス](BPC)
 
結局のところ、コンピュータに頼むだけだからでしょうか?

[ジェンスン・フアン](NVIDIA)
 
その通りです。私たちがやるべきことは、コンピュータに手伝ってほしいことを明確に説明することです。そうすれば、コンピュータがそれを実行してくれます。将来的には、チップを設計する方法も、チップの仕様を説明する形に変わっていくでしょう。実際、その仕様を決めるところにこそ天才的な発想が宿る部分があるわけです。もちろん、実際の技術には高い技能や大きな努力が必要ですが、自分が実現したい未来を説明して、それをAIが手助けしてくれるというのは素晴らしいことです。
 私の考えでは、私たちのような企業が最初にやるべきことは、人工知能を使って生産性を向上させることです。私たちはそれを実際に行っていて、会社全体にAIを導入し、チップの設計やソフトウェアの開発、デバッグ、検証に利用しています。さらに、マーケティングやカスタマーサポートなどにも活用し始めています。つまり、AIはまず私たちの生産性を高めてくれるのです。会社が生産性を向上させると、利益が増えます。そして利益が増えると、さらに多くの人材を雇えるようになります。なぜなら、私たちには追求したい新しいアイデアがたくさんあるからです。その結果、さらに豊かな発展が可能になるのです。
 ですから、「人間対AI」という構図は正しくないと思います。正しくは「人間がAIを活用する」ということです。AIが仕事を奪うのではないかと心配している方もいるかもしれませんが、本当の心配は「AIを使っている誰かがあなたの仕事を奪う」ことです。だからこそ、今すぐこの新しいツールを学び、それを自分の強みとする必要があります。私たちの会社は確実にそれを行いますし、国全体でもそれを進めるべきだと思います。

[マーガレット・スペリングス](BPC)
 
何をすべきかを正確に指示できるために必要なスキルがAIを使うための課題なのですね。

[ジェンスン・フアン](NVIDIA)
 
その通りです。

[マーガレット・スペリングス](BPC)
 
国家安全保障とAIとの間には非常に大きな関係性があります。この技術がどのように世界に影響を与え、国家安全保障にどのような意味を持つのか、ぜひお聞かせください。

[ジェンスン・フアン](NVIDIA)
 
視点を広げてみると、各国が人工知能の重要性に目覚め始めていることが分かります。これは基本原理に基づくもので、その理由は明白です。どの国も、自国の知性を他国にアウトソーシングすべきだとは考えていないことです。また、どの国も「我が国には十分な知性があるから、これで十分だ」と考えることもありません。これ以上進化を止める、あるいは知性の向上を抑えるという発想はありえません。したがって、今や人工知能が知性の加速的な生産に寄与しているということが極めて明確になって来ているということができます。
 エネルギーがいかに重要かという話をしたいのですが、国家も、自国の土地が自然資源で、主権資源の一部であると認識し始めています。それと同様に、言語や文化、国民、そしてその考え方も、国の自然資源の一部であり、それはデータとして記録されることができます。他国がそのデータを収集し、つまり自然資源を収穫し、それを改良を加えて人工知能として再び輸入させるという状況は、容認することができません。

[マーガレット・スペリングス](BPC)
 
そして今、そのようなことが実際に進行しているのですね。

[ジェンスン・フアン](NVIDIA)
 
そうです。各国が自国の人工知能の生産を自ら管理しなければならないと気づき始めているのです。この文脈で「ソブリンAI」という言葉が出てきます。西側諸国でも東側諸国でも、人工知能インフラの確保に非常に関心を持ち、動機を持って動き始めています。このことは、通信網や電力網、核資産を守るのと同じくらい重要視されているのです。各国が自国の人工知能インフラを本格的に守ろうとしているのは、世界的な大きな動向の一つです。この技術が持つ驚異的な可能性を認識し、それを活用して国際社会での地位を加速的に高めようとしているのです。
 人工知能は、国の繁栄を促進するための強力なツールです。基本的な原理から見ても、人工知能が国家の安全保障や繁栄、発展にとってどれほど重要かを理解し始めている人が増えており、どの国もそれに気づき始めています。そして、アメリカにとっても、この技術が私たちの国で生まれたものであるということを改めて認識する必要があります。

[マーガレット・スペリングス](BPC)
 
素晴らしいです。

[ジェンスン・フアン](NVIDIA)
 
ありがとうございます。私たちはアメリカの企業であることを誇りに思っていますし、アメリカ合衆国とその提供してくれたさまざまな資源がなければ、NVIDIAは存在しなかったでしょう。この技術を守り、それを自国の利益のために活用しようとする国の姿勢は素晴らしいと感じています。私たちはこの技術を使って、アメリカのさらなる発展を加速させていきたいと考えています。
 また、重要なのは、アメリカの技術が世界中でアメリカの基準を定めているという点も理解することです。世界中で英語が話され、アメリカの技術が世界を支えているのは非常に素晴らしいことです。私たちとしても、NVIDIAの技術が世界中で使われ、アメリカの技術が他国の産業や国家の成長に貢献することを望んでいます。
 ですので、国家の安全保障と、アメリカ企業の世界的な繁栄とのバランスを取ることが大切だと考えています。そのバランスを見つけることは難しいですが、どのような決定であれ、私たちは政府の方針を支持していきます。

[マーガレット・スペリングス](BPC)
 
AIが産業をどのように生み出すかについて教えてもらえますか?

[ジェンスン・フアン](NVIDIA)
 
これは、エネルギーの観点から見たとても重要なことですが。初めて、コンピュータが単なるツールではなく、工場のような役割を果たすようになりました。これまで、データセンターはデータを保存する場所でしたが、これからはコンピュータの使われ方がこれまでとは大きく異なることになります。
 例えば、私のポケットには今スマートフォンが入っています。これはコンピュータであり、私にとっては芝刈り機のようなツールの一つです。使う時には使い、使わない時にはただ待機している状態です。今、私のスマホもただ待機しています。しかし、AIの世界では、システムやAIが常に私たちのために何かをしてくれるようになります。私たちが依頼すると、まるで従業員に指示を出すかのように、それが絶えず動いているのです。
 私たちは、このプロセスを人間が関与する形で行いたいと考えていますが、できる限り自律的に、必要に応じて管理されることが理想だと考えています。これらのコンピュータは、チップの設計やソフトウェアの開発、最適化、さまざまなプランの評価を行い、最適なプランを見つけ出して私たちに提案してくれます。設計や最適化の範囲は非常に広大で、私たちはAIにその探索を任せ、新しい科学的発見を期待します。
 これらの常に動いている機械、未来のコンピュータは、AI工場のようになるでしょう。今まさに新しい工場、新しい産業が生まれて始めています。それがAIというものです。そして、新しい産業にはエネルギーが必要であり、これまでのものに加わるものです。NVIDIAのアクセラレーテッド・コンピューティングによって、計算の効率化が進み、ソフトウェアの加速が可能なものは全て加速し、旧式のデータセンターも新しい計算モデルで省エネ化することができます。
 新たに登場するAI工場はエネルギーを消費しますが、しかし、その結果生み出される人工知能が、他の分野でエネルギーを節約する手助けをしてくれるのです。これは、まるで産業革命のようなものです。

[マーガレット・スペリングス](BPC)
 
規制やガードレール、政策立案についてお伺いします。国会では今、イノベーションを保護しつつも国家安全保障や子どもたちの保護、さらにはヨーロッパなど他国との関係におけるアメリカの役割など、さまざまな課題についての議論が盛り上がっています。こうした中で、議員たちがこれから産業の未来に関して具体的な政策を作り始める中、これらの問題をどのようにお考えでしょうか?

[ジェンスン・フアン](NVIDIA)
 
まず、私たちがこのテクノロジーと、それが世界中にもたらす素晴らしい利点を理解してもらうためには、同時にその脅威や危険性についても認識する必要があります。このテクノロジーの本質は「知能」であり、知能は偉大な目的にも危険な目的にも使うことができるからです。
 そのため、私たちの重要な任務の一つは、テクノロジーの現状を理解してもらうことです。現在、どの段階にあるのか、将来的にどこまで進むのか、そしてこのテクノロジーを単なる理論やサイエンスフィクションではなく、より現実的にどう捉えるべきなのかを考える必要があります。テクノロジーがどのようなものかが明確でなければ、多くの人に理解してもらうのは難しいでしょう。
 そのため、私たちはまず、テクノロジーを理解してもらうことに注力します。そして、すでに様々な分野で見られる素晴らしい応用例についても伝えます。例えば、医療分野、気候科学、教育、そして個別指導などです。誰もが自分専用の家庭教師を持つべきです。ちなみに、私自身も「Perplexity」というツールを毎日のように活用しています。

[ジェンスン・フアン](NVIDIA)
 
まず一つ目として、世界中の様々な機会についてしっかりと学習し、アメリカのテクノロジーを輸出することが海外で成功を収める手段であることを理解してもらう必要があります。私たちは国内でも、海外でも、あらゆる場所で成功したいと考えています。これまでお会いした政策立案者の皆さんも、アメリカが勝つことを望んでいて、それは本当に素晴らしいことだと思います。

[マーガレット・スペリングス](BPC)
 
もう一つの側面もあります。数週間前に、マイクロソフトのブラッド・スミス氏をお招きして、AIが生成するコンテンツについて報告を発表していただきました。子どもたちへの影響など、様々な課題が挙げられていました。それについてはどうお考えですか? AIの影の側面について、何が心配で、どうに捉えていますか?

[ジェンスン・フアン](NVIDIA)
 
AIのダークサイドを捉えるためには、同じくAIの力が必要です。その理由は非常に明確で、AIは非常に高速で偽のデータや誤情報を生成するため、それを検出して無効化するには、同等かそれ以上の速度が求められるからです。これはサイバーセキュリティに非常に似ています。ほぼすべての企業や国が常にハッキングや攻撃を受けており、私たち自身を守るには、さらに優れたサイバーセキュリティが必要です。
 ですので、私たちは常に一歩先に行かなければなりません。そのためにもAIの大きな助けが必要となるでしょう。AIの力を借りて、私たちは先をリードしていく必要があります。

[マーガレット・スペリングス](BPC)
 
もう一つお伺いしたいことがあります。あなたは大変な成功を収めて、もうすぐナショナルアカデミーにも入会される予定と伺っています。市民として、そして教育を支援するフィランソロピストとしての責任について、どのようにお考えでしょうか? 今やその役割を担うわけですが、そのことについてどのように捉えていらっしゃいますか?

[ジェンスン・フアン](NVIDIA)
 
まず最も大切なこと、そして最初に挙げるべきことは、良い父親であることです。これが何よりも大事です。そして、良い夫であることも大切です。
 そして、まず初めにNVIDIAを築いたことは、私たち社員一人ひとりにとって、これまでで最も意義深いことだと思います。私たちは、歴史的に最も影響力のあるテクノロジー企業の一つとして認められる企業を作り上げてきました。私たちの技術は、様々な科学や産業の分野で画期的な研究に使われており、30年にわたって誰も想像しなかった技術を発明してきました。それを誇りに思いますし、これが私たちの最も重要な仕事の一つだと思っています。
 この技術を活用し、さらに進化させることで、デジタルバイオロジーやヘルスケアといった、現在最も困難で緊急性の高い課題に取り組むことが、私たちの未来を形作る鍵になるであろうと考えています。正直なところ、10年後の私たちがどうなっているかは想像もつきません。しかし、AIを生物学の分野に応用し、ライフサイエンスを「生命工学」と呼べるほどの進化を遂げることができれば、それは本当に驚異的なことです。これこそが、私たちにとって最大の可能性であり、それに取り組むことが私たちの使命だと考えています。

[マーガレット・スペリングス](BPC)
 
あなたは本当に素晴らしく、魅力的なものを築き上げました。そして、毎日学び続けていることが伝わってきます。



(3)Q&Aセッション


[マーガレット・スペリングス](BPC)
 
さて、ここで聴衆からの質問をいくつか受けたいと思います。オンラインで視聴している数百人の方々からも質問が来ているようです。あちらこちらで手が挙がっていますので、マイクを回してください。

[会場質問者A]
 
こんにちは、クリス・バーナードと申します。まず、2017年から個人投資家として投資させてもらっていますが、株価は非常に好調です。ご活躍に感謝いたします。
 先週、マイクロソフトがコンステレーション・エナジーと協力して、スリーマイル島の原発を再稼働させるという非常に興味深いニュースがありました。核エネルギーがAIの未来を支える可能性についてどうお考えか、お聞かせいただけますでしょうか。ありがとうございました。

[ジェンスン・フアン](NVIDIA)
 
原子力はこれから非常に重要で欠かせない役割を果たすでしょう。世界にとって一つのエネルギー源だけでは十分ではなく、バランスを見つける必要があります。特定の方法が他より優れているという話だけではなく、良いアプローチはたくさんあります。ただし、エネルギーを無駄にしないことほど効果的な方法はありません。
 私たちが貢献できる方法はいくつかあり、その一つがアクセラレーテッド・コンピューティングです。NVIDIAがこれほど成功した理由は、NVIDIAの手法を使うことで、作業を完了するために必要な計算エネルギーが、汎用コンピューティングに比べて桁違いに少ないからです。エネルギーを無駄にしない、お金を無駄にしない、時間を無駄にしない。これこそが、私たちができる最も価値のあることだと思います。
 また、エネルギーを無駄にしないための方法は他にもたくさんあります。例えば、私たちの電力網をスマートにすることが非常に重要だと思います。現在の電力網は、私たちの国が繁栄し始めた初期に作られたものですので、AIやスマートテクノロジーの導入が大いに役立つでしょう。電力網がスマートになれば、適切な技術を適切な場所に提供し、エネルギー供給と需要を効率的に結びつけることができるようになります。これは、Uberがドライバーと乗客を効率的に結びつけるのと同じです。Uberのような仕組みを実現するには、スマートな電力網が必要であり、私たちはその電力網を作り上げることができるでしょう。

 [マーガレット・スペリングス](BPC)
 
おっしゃる通りです。 次の質問者、どうぞ。

[会場質問者B]
 
カーボンダイレクトのジョージタウン大学で教鞭をとっているコル・マコーマックと申します。再生可能エネルギーに関して、現在大きな課題の一つは相互接続待ち行列(Interconnection Queue)の問題です。数千ギガワットの太陽光や風力、バッテリーが接続待ちで、場合によっては数年もかかることがあります。調査が完了するまでの時間が長すぎるのです。NVIDIAのようなテクノロジー企業は、この接続待ちをどうすればスピードアップさせ、再生可能エネルギーをより早く発電できるようにすることができるでしょうか?

[ジェンスン・フアン](NVIDIA)
 
そうですね、化石燃料がこれほど効果的なのは、長い時間をかけて自然が圧縮し、運搬可能な形にしてくれたからです。私たちはそれをどこへでも運び、どこででも精製できるのです。一方で、電気エネルギーには課題があります。バッテリーは高価ですし、太陽エネルギーは1日の半分しか利用できません。このように、持続可能なエネルギーにはさまざまな課題があります。
 以前に説明した一つの方法として、エネルギーを必要な場所に運ぶ代わりに、データセンターをエネルギー源のある場所に移動させるというアイデアがあります。データセンターはどこにでも作ることができますし、コンピューターやAIは「どこで学ぶか」を気にしません。もちろん、できる限りAIを継続的にトレーニングしたいですが、日が沈んで数時間休むことも許容範囲です。エネルギーが豊富にあり、余剰が出るなら、それは良い方法だと思います。
 その後、そのAIを大規模言語モデルという小さなモデルに圧縮し、必要な場所へどこにでも運ぶことができます。これは、エネルギーを効率的に活用する素晴らしい方法だと思います。

[マーガレット・スペリングス](BPC)
 
ほかにもいらっしゃいますね。では、次の方、質問どうぞ。

[会場質問者C]
 
こんにちは。コンステレーション・エナジーのケイティです。実は先週、原子力発電所の再稼働を発表しました。

[会場質問者C]
 
本当にワクワクします。ただ、今おっしゃったことに関連して、私たちは、もっと多くの原子力エネルギーの提供が可能です。この国には、データセンターやAI工場に利用できる原子力エネルギーがたくさんあります。ただ、AIのために追加のエネルギー供給を求める提案も聞いています。AI工場を建設するなら、それに見合うエネルギー供給も必要だという考えです。これが現実的かどうか、そしてAIの競争に勝つために有効なのか、それとも既存の資源や新しい資源の利用に関する他の政策を検討する必要があるのか、ぜひご意見を伺いたいです。

[ジェンスン・フアン](NVIDIA)
 
数週間前にワシントンD.C.を訪れた際、政府は極めて明確に、米国企業が国内にできる限り多くのデータセンターを建設できるようにしたいという意向が示されていました。また、各地で許認可を取得したり、電力へのアクセスを確保するのが難しいことも彼らは認識しており、そのプロセスを加速させるための協力を行いたいとの話もありました。そうすれば、アメリカ企業が海外に目を向ける必要がなくなるというわけです。
 私は、このことが重要な課題の一つだと思っています。国内にAIインフラを構築することは、国家にとって極めて重要なことです。AIのモデルをトレーニングするにはエネルギーを消費しますが、作り上げたモデル自体は、よりエネルギー効率よく作業をこなします。AIのライフサイクル全体を長期的に考えると、そのエネルギー効率や、産業や社会に与える生産性の向上は計り知れないものとなると思います。
 私たちは、AIの全体像やエネルギー供給の課題を人々に理解してもらうために時間をかけています。ただ、AIを運用する工場やAIをトレーニングすることは、必ずしも病院のように常に99.9999%の稼働率を求められるものではありません。たとえば、システムが時々数パーセント、例えば5%程度のダウンタイムが発生しても大丈夫ということです。数時間勉強を中断するようなもので、その後また再開すればいいのです。
 これを「チェックポイントとリスタート」と呼びます。少し休んで、元の場所から再開すればよいという考え方です。ですので、まずはAIにエネルギーを供給する際の課題や違いを理解することが重要です。エネルギー供給に関しては課題があるものの、AIに関しては病院とは異なるアプローチが可能なのです。

[マーガレット・スペリングス](BPC)
 
オンラインでもらっている質問、「AIは本当にエネルギーを節約するのでしょうか?それとも、その効率を他の作業に使うだけでしょうか?」という質問と似ていますね。
 今、ある程度お答えいただきましたが、具体的にどのくらいのエネルギー削減が可能か、または目標としている数値があれば教えていただけますか?

[ジェンスン・フアン](NVIDIA)
 
そうですね、多くの具体例があります。たとえば、先ほどお話しした天気予報のシミュレーションです。私たちは、スーパーコンピューターと比べて3,000分の1のエネルギーで天気を予測することができます。他にも数多くの例がありますが、違う視点では、エネルギーを節約できる一方で、社会がその節約したエネルギーを別の用途に回す可能性もあります。これをSDGsでいうところの「豊かさ」(Prosperity)と呼んでいます。経済成長です。経済成長や生活の質の向上につながるわけです。
 実際のところ、私たちは地球の人口が将来的にもっと多くのエネルギーを消費することを願っています。なぜなら、それは生活の質に直結しており、繁栄と深く関わっているからです。すべての人がこの生活の質を享受できることを望んでいます。それが私たちの目指すところです。

[マーガレット・スペリングス](BPC)
 
確かにその通りです。では、次の方にマイクを回しましょう。

[会場質問者D]
 
ジェンスンさん。本日のご意見を大変ありがたく思います。
 私はアミタ・ラザリと申します。以前はインテルで働いており、現在は「オープンポリシー」という会社を共同創業しました。私たちはAIを活用し、世界中のユニコーン企業と協力して、今後の政策動向に対応し、政策への関与を拡大する手助けをしています。政策という分野は専門性が求められ、その翻訳が必要です。AIを使ってシンクタンクの活動や、イノベーションと政策のつながりを拡大し、ワシントンD.C.にある膨大な情報を解放してシリコンバレーに届けることについて、どのようにお考えかお聞かせください。

[ジェンスン・フアン](NVIDIA)
 
私のデータ処理速度が少し遅すぎたかもしれません。もし質問を誤解して答えてしまったら、先に謝罪しておきますね。
 AIは非常に複雑な概念を教えたり説明したりするのが得意で、私も毎日AIを使っています。本当に毎日使っていて、新しいコンセプトに出会ったときには、できるだけ簡単に説明してもらいます。そこから徐々に深く掘り下げていくことができるのが、とても気に入っています。小学生にわかるように説明してくれるのも素晴らしいですし、さらに深いレベルの説明も可能です。「科学の基本原則から説明して」、「比喩を使って説明して」、「ステップバイステップで分解して教えて」と、いろいろな学び方ができるのがとても良いです。
 新しいアイデアに触れるとき、さまざまなレベルでそのアイデアを理解する必要があります。理想的には、最高のレベルで情報を捉え、それを徐々に要素に分解していくことが大切です。その点で、AIを活用して政策立案者に技術を紹介するというあなた方の取り組みは、素晴らしい恩恵をもたらすと思います。将来的には、彼ら自身が自分のスマートフォンでAIを使って理解できるようになるでしょう。私がそうしているように、ポケットの中にスーパー・スマートな電話があるようなものですね。

[マーガレット・スペリングス](BPC)
 
知的な方法で質問する能力というのは、まさにあなたが持っているスキルですね。

[会場質問者E]
 
ジェンスンさん、今日は来ていただきありがとうございます。ディープ・ベンチャーズのマイク・チャンです。
 私は暗号通貨のスタートアップに投資しているのですが、この業界は、ビットコインのマイニングに関するネガティブな宣伝の一部を引き継いでいます。エネルギー生産者が余剰エネルギーをビットコインのマイニングに回すケースが多いのは、1対1の取引が成り立つ非常に明確な市場が存在するからです。これをスマートグリッドのような形で、余剰エネルギーをAIのモデル訓練に活用するような仕組みが可能だと思いますか?その電力を提供することについて、何かお考えがありますか?

[ジェンスン・フアン](NVIDIA)
 
まさに今、余剰エネルギーを変換して保存することを例に挙げられましたね。基本的に、ビットコインがやっていることは、余剰エネルギーを取り、それを「通貨」という新しい形に変換して保存することです。そしてその通貨を好きな場所に持っていけます。つまり、ある場所からエネルギーを取得し、それをどこにでも運べる形にしたというわけです。これはビットコインの話ですが、これをもっと普遍的なものに置き換えると「インテリジェンス」と呼べるでしょう。あなたが説明したのとまったく同じ概念です。余剰エネルギーがある場所を見つけ、そこにデータセンターを設置してエネルギーを使い、それを人工知能モデルに圧縮して保存します。そのモデルをさまざまな場所に持ち運んで利用することができるのです。これで理解できますか?同じく素晴らしいアイデアです。 

[マーガレット・スペリングス](BPC)
 
次で、最後の質問になります。

 [会場質問者F]
 
こんにちは、私は韓国から来た弁護士です。AI技術がさまざまな業界で革命を起こしている様子を見てきました。法務分野でもAIの導入が加速しており、特に文書分析の自動化や規制遵守のモニタリングに大きな可能性があると感じています。あなたの視点から、今後AI技術が法務や規制分野でどのように活用されるとお考えですか?また、これらの分野でどのような革新が期待できるでしょうか?

[ジェンスン・フアン](NVIDIA)
 
AIの規制に関する影響についてですが、近い将来、どの産業においても、あらゆる知識作業はAIが関与することになるでしょう。エンジニアに関する情報、法的書類、ソフトウェアコードなど、書かれたものはすべて同様に処理されます。実際、AIはソフトウェアのコーディングに大きく貢献しています。私たちの会社でも、AIを使ってソフトウェアを開発し、デバッグもAIに頼っています。法的書類の作成や分析にもAIが使われ、文書をより良いものにするためにも活用されるでしょう。このように、情報や知識に関わるすべての作業にAIが組み込まれることになります。
 したがって、将来的にはすべての政策にもAIが関与することになるでしょう。なぜなら、政策は「適切な行動を指示するコード」と同じだからです。うまく書かれたコードは矛盾せず、政策の目的を達成します。同様に、政策もAIによって強化されるでしょう。将来、私たちが行うほぼすべてのことは、AIと人間が協力して行うようになるのです。

[マーガレット・スペリングス](BPC)
 
ジェンスンさん、素晴らしい内容でした。 皆さん、一緒に感謝の拍手を送りましょう。




(4)オリジナル・コンテンツ

 オリジナル・コンテンツは、以下リンクからご聴きになれます。
尚、本投稿の内容は、参考訳です。また、意訳や省略、情報を補足したコンテンツを含んでいます。

Bipartisan Policy Centerより
(Original Published date : 2024/09/27 EST)



以上です。


 

 


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