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超党派の支持を得る米国CHIPS法の成果と展望


 米国政府が進めるCHIPS法(CHIPS and Science Act)について、ホワイトハウス国家経済会議の副長官代理としてCHIPS法のコーディネーターを務めたアーロン “ロニー“ チャタジー氏を迎えての法制の成果と今後の展望、そして米国の競争力についてのインタビューです。
 CHIPS法が成立してから2年が経過し、米国は国内半導体製造拠点の整備に、340億ドル近くの多額の投資を行っており、既に、インテル、サムスン、TSMCなどの主要企業を誘致することに成功し、また、AIブームの追い風を受けてハイエンド半導体の製造において世界でも重要な役割を果たすポジションへと邁進しています。一方、インテルへの資金提供の遅れ、半導体サイクルなどの課題。加えて、台湾有事や中国への輸出規制が絡み、安全保障上の懸案や課題も多く存在しています。

[主なトピックス]

  • CHIPS法はこれまでのところ順調に推移。米国は半導体産業で重要な役割を果たすチャンスがある。

  • 340億ドルの投資によって15のプロジェクトが生まれ、インテル、サムスン、TSMCなどの誘致に成功。米国はロジックとメモリの上位5社を抱える唯一の地域となった。

  • 半導体産業は国家安全保障および経済安全保障の観点から、今後も超党派の支持を得られる見込み。一方で、政府の継続的なコミットメントと“実行リスク”への対処が肝要。




(1)インタビュー


[シーナ・スミス](Yahoo finance)
 CHIPS法成立から2年が経ち、バイデン政権は約340億ドルを米国内の半導体製造拠点の整備に投じています。一方で、中国も自国の製造能力を急速に拡大しており、今年はどの国よりも多くの半導体製造装置を輸入しています。ここで、CHIPS法の立案者であるロニー・チャッタジ氏をお迎えして、現状についてお話を伺いたいと思います。
 ロニーさん、CHIPS法の元コーディネーターであり、現在はデューク大学の経営学および公共政策の教授でもいらっしゃいます。お会いできて光栄です。今夜の討論会や11月の選挙に向けて、これまで投資された資金や、インテルのような企業から期待される将来の成長を踏まえた現状について、どのように評価されているかお聞きしたいと思います。

[アーロン “ロニー“ チャタジー](デューク大学 ビジネス&パブリック・ポリシー教授)
 こちらこそお招きいただきありがとうございます。CHIPS法が成立して2年が経過して、約15のプロジェクトに対して30億ドルが投じられ、多くの州で進展が見られています。政府は、さまざまな企業との覚書を交わし、発表を行うなど素晴らしい仕事をしてきました。また、初期段階では大きな課題だった主要企業を巻き込むことにも成功しました。現在、インテル、サムスン、マイクロン、SKハイニックス、TSMCといった大手が揃い、米国は高度なロジックとメモリを製造する上位5社が集まる唯一の地域になっており、ここまでは非常に順調に進んで来ました。
 今後注目すべきは、半導体業界のサイクルです。これは政府の戦略に大きく影響します。この点は討論会ではテクニカル過ぎて取り上げられないかもしれませんが、今後4年間で非常に重要な要素となるでしょう。

[ブラッド・スミス](Yahoo finance)
 未来の半導体購入サイクルについて考えると、NVIDIAは「100万枚のチップを使うデータセンター」の話をしていますし、昨日、オラクルの決算では、将来のデータセンターを動かすために原子炉が必要だと言及していました。すでに建設が始まっていて、設計も進んでいるとのことです。これからのチップ購入サイクルにおける新しい基準として、どの様な影響があると考えていますか?

[アーロン “ロニー“ チャタジー]
 AIインフラは非常に大規模で、ハイパースケーラー企業をはじめ、さまざまな企業がAIインフラに巨額の投資を行っています。これにはデータセンターやGPU、そしてそれを動かすためのエネルギーが含まれます。将来的に必要となるデータセットをどうやって供給していくのか、まだ技術的な課題が残っていますが、それが半導体業界にとっては非常にポジティブな動きだと考えています。
 実際、AIブームの前にCHIPS法が必要でしたが、このブームのおかげで、今後、米国内で高性能チップの製造に参加するチャンスが広がります。これは業界にとって追い風となるだけでなく、政府が半導体産業で重要な役割を担うべき大きな目標だと考えています。

[シーナ・スミス]
 私もそのような未来を見据えています。ただ、最近の報道では、特にインテルに対する資金の提供時期に不透明さがあるとの指摘があります。インテルは、補助金プログラムの中でも最大の支援を受ける可能性がありますが、その道筋がはっきりしていない状況です。インテルが直面しているこの短期的な課題について、どのようにお考えかお聞きしたいです。

[アーロン “ロニー“ チャタジー]
 CHIPS法のプログラムの良い点は、多様な企業への投資を行っていることです。TSMC、サムスン、インテルといった先端企業がそれぞれ、資金提供に向けた覚書を交わしていますが、まだ実際の資金は支払われていません。これにより、政府は商業的や技術的な目標を達成しない企業には、予定されていた資金を渡さないという形で、マイルストーンや分割払いを活用できるのです。この点が今後注目すべきポイントになるでしょう。
 インテルは、9月に大きな取締役会を控えており、技術的および製品の目標を達成すると公に表明しています。これは注目すべき大きな点です。また、TSMCはアリゾナ工場で台湾に近い生産歩留まりを達成したと報告しており、これは予想外の好ニュースでした。この業界では、良いニュースもあれば悪いニュースも出てくることが常です。
 米国の半導体戦略においては、選択肢が多いことが非常に重要となります。テキサス、アリゾナ、オハイオ、そしてニューヨーク州のプロジェクトは今後10年で浮き沈みがあるでしょうが、最終的には、特に最先端のノードにおいて、これまでより多くのチップを米国内で生産できるようになると考えています。

[ブラッド・スミス]
 今夜の討論会では、ビジネスのテーマとして半導体が取り上げられる可能性もあると思いますが、グローバリゼーションやパートナーシップの観点からはいかがでしょうか? 一方、脱グローバル化の動きと、他方でのグローバル化のセキュリティ強化があり、これらが具体的に半導体業界にどのような影響を与えるのでしょうか?

[アーロン “ロニー“ チャタジー]
 私の見解では、CHIPS法が超党派の合意で成立したことから、半導体業界は今後も非常に強固な位置づけになると思います。なぜなら、マイクロエレクトロニクスに関しては、国家安全保障や経済安全保障を重視しているからです。このため、多くの人々がこの法案を支持したのです。したがって、今後4年間、あるいはその後の政権がどうなっても、半導体に関しては強力な超党派の合意が続くと考えています。最先端のチップや、防衛・兵器システムに使用される成熟したチップの生産は、国家安全保障に直結しているため、半導体業界は政治的環境の中でも安定するでしょう。
 ただし、大きな課題は「実行リスク」です。これからの展開を注視する必要があります。これまでのところ、政府は良い仕事をしてきたと信じていますが、その努力を今後も継続していくことが重要です。



<オリジナル・コンテンツ>

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尚、本投稿の内容は、参考訳です。また、意訳や省略、情報を補足したコンテンツを含んでいます。

Yahoo Finance
(Original Published date : 2024/09/10 EST)



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だうじょん


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