イールドカーブの急傾斜化が待ち構えている米債券市場:JPモルガン(10/28)
JPモルガンのグローバル金利戦略の責任者ジェイ・バリー氏を迎えてのBloombergのインタビュー内容の紹介です。FRBの利下げペースが減少することを市場が織り込む中で、高い債務比率と買い手層の変化に影響を受けて、長期の金利水準は上向き傾向にあると分析しています。また、原油価格については、地政学的リスクの緩和とOPEC+の安定供給により、来年にかけて原油価格の下落が予測されることから、インフレ見通しは安定に向かうとの見解を示しています。ご参考下さい。
[主なサブテーマ]
財務省の借入需要の展望
長期金利イールドカーブのスティープ化
原油価格とインフレ見通し
大統領選挙後の市場動向
1. インタビュー
[ロメイン・ボスティック](Bloomberg)
JPモルガンのマネージングディレクター兼グローバル金利戦略責任者であるジェイ・バリーさんにお越しいただいています。ジェイさん、今回は米国財務省の借入需要についてお伺いしたいと思います。多くの方が、いずれ借入額が大幅に増加する必要があることを理解していると思いますが、少なくとも第1四半期については、その方向性が示されているようです。
[ジェイ・バリー](JP Morgan Chase)
その通りだと思います。私たちのベースライン予測と今回の借入見積もりを見ても、この四半期の結果は予想から大きく外れてはいません。第1四半期については若干大きめではありますが、財務省は新たに始まった2025会計年度において長期入札の規模に関してはかなり良い位置にいると考えています。ただし、来年の8月と11月が近づくにつれ、エドワード・デニー氏が指摘したように、財務省が再び長期入札の規模を拡大する必要が出てくる可能性が高いでしょう。その規模や期間についても、昨年の夏から今年の春にかけて見られたような大きなものになると予想しています。しかし、今後9~12カ月については、財務省はおそらく安定した状況にあると私たちは考えています。
[ロメイン・ボスティック](Bloomberg)
金利の動向について、かなり疑問が湧きますよね。例えば、指標である10年債利回りが4.2%から4.3%の水準に戻っていることを考えると、本来は追加の利下げが予想されているため、この利回りは下がると見込まれていました。
もしFRBが利下げを続ける一方で財務省の借入需要が増加していく場合、このバランスはどのように保たれるのでしょうか?この影響を受けて、国債の利回りが一定の範囲内にとどまることができるのでしょうか?
[ジェイ・バリー](JP Morgan Chase)
この1カ月から5週間にかけて見られた金利の上昇は、先月のFRBのアクション、具体的には大胆な50ベーシスポイントの利下げが大きく影響していると思います。これは、FRBが景気拡大を早期に終わらせたくないというシグナルを市場に送り、今後の成長やインフレの見通しが改善する可能性も示唆していると思います。この影響で、市場に織り込まれるFF金利のターミナルレートが、9月中旬の約2.60%から2.70%の水準から、現在では3.50%にまで上昇しており、今後の利下げが少なくなるとの見方が反映されています。
さて、ご質問の金融政策と財政政策の関係についてですが、私たちは、利回りの主な要因は常に市場が中期に期待する金融政策だと考えています。その上で、一定の政策金利水準においても、GDP比で100%を超える高い債務比率や国債の買い手層が価格に敏感な層へと変化していることを考えると、長期金利は過去15〜20年に比べてより高い水準で推移する可能性が高いと見ています。このことから、結果的にイールドカーブがさらに急になると予測しています。
[スカーレット・フー](Bloomberg)
現在の国債の売りについてですが、過去1か月にわたって売りが再開していますが、これは期待値に向けてのポジショニングと見ていいのでしょうか?それとも、ヘッジなど別の要因が影響しているのでしょうか?
[ジェイ・バリー](JP Morgan Chase)
これらの動きの多くは、FRBの姿勢の変化や、労働市場とインフレ指標の堅調さが根本的な要因だと考えています。ただ、長期金利の動きを通常のファンダメンタルズに基づいて調整して見ると、予想以上に上昇しているのは確かです。これを選挙に対する期待の変化に結びつける向きもありますが、むしろ成長期待の変化にまだ十分に対応できていないことが大きな課題だと思っています。
また、9月のFOMCではデュレーションのポジションが比較的長めだったのが、現在はほぼ中立的な水準まで洗い出されています。ここ数週間に会話をしたクライアントも、リスクを抑える動きをしている印象があります。選挙が非常に接戦で不透明な状況ですので、積極的に選挙に向けたポジションを取るよりも、結果を見てから対応したいという方が多いようです。
[スカーレット・フー](Bloomberg)
なるほど、そうなると選挙直後にはかなりのボラティリティが生じる可能性があるということですね。
ところで、現在の原油についてはどうお考えでしょうか?原油価格の下落は、今後の数か月でインフレ見通しが改善する一助となることは間違いありませんよね。
[ジェイ・バリー](JP Morgan Chase)
そうですね、特に週末の動きを受けて、地政学的な圧力が緩和されていることを反映していると思います。これを低インフレや消費者にとっての好材料と捉えたくなるところですが、むしろ地政学的な影響を受けず、純粋に成長やインフレの見通しに集中できるようになったと言えそうです。この変化により、エネルギー懸念から金利市場に織り込まれていたリスクプレミアムが解消された可能性があります。
今後については、コモディティ戦略のチームによると、OPEC+からの供給が引き続き堅調であるため、来年にかけて供給が需要を上回る可能性があると予測しています。この安定した状況では、原油価格はやや下向きのバイアスがかかる見通しです。
[ロメイン・ボスティック](Bloomberg)
もちろん、今回の選挙結果によって多くの点が大きく変わるでしょう。候補者が二人とも明確に異なる政策を掲げており、財務省の資金調達や市場全体への反応にも大きな影響があるでしょうから。
選挙がいよいよ来週火曜日に迫っていますが、あなたも当日の夜は結果を追いかける予定ですか?もしそうなら、どの市場が最初に反応すると思われますか?
[ジェイ・バリー](JP Morgan Chase)
私も選挙結果を見守るために夜遅くまで起きているつもりです。注目しているのは、インフレーションカーブの短期部分です。リサーチによると、トランプ氏が勝利して政府が分裂する場合、グローバル関税の増加が予想され、物価水準が約1.5%上昇する可能性があります。夏以降、トランプ元大統領の勝利の可能性が高まるにつれて、短期的なインフレ期待も上昇してきたので、ここに注目したいと考えています。
次に、イールドカーブのスロープにも注目します。財政見通しを踏まえると、どちらかの候補が圧勝する場合、議会予算局のベースラインを大幅に超える借り入れが必要になる可能性が高いと見ています。タームプレミアムや需要の変化に加え、経済が堅調な状況を考慮すると、イールドカーブは上向き、かつ急傾斜となる可能性があり、その程度はトランプ氏かハリス氏かによって異なります。そのため、インフレカーブの短期部分、財務省のカーブの傾き、そして利回りの絶対水準にも注目するつもりです。
2. オリジナル・コンテンツ
オリジナル・コンテンツは、以下リンクからご視聴になれます。
尚、本投稿の内容は、参考訳です。また、意訳や省略、情報を補足したコンテンツを含んでいます。
Bloomberg Televisionより
(Original Published date : 2024/10/28 EST)
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だうじょん
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