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(8/5)「冷静に。感情的なエネルギーに巻き込まれないことが重要」(パニック気味の市場にクラウディア・サーム氏のメッセージ)
先週発表されたISM製造業景況感指数、雇用統計を受けての市場の売りトレンドは、週を開けても継続し、昨日の主要4指数は、DJIが前日比▲2.60%、S&P500が▲3.00%、NASDAQが▲3.43%、RUSSELL 2000が▲3.22%と、ほぼ3%を超える下落となりました。
一方で、昨夜発表された7月のISMサービス業購買担当者景気指数は、軒並み予想値を超え、サービス業の景況感がいまだ強いことを示しました(予想値 51に対し、実績は 51.4。前月6月は48.8)。
この統計値の発表を受けて場中では、一時株価を戻す気配を見せましたが大きく改善するのは叶いませんでした。とはいえ、パニックはある程度おさまる様相を見せ、その後は、テクニカルな売り(と買い)が交差し、昨日を終えたという相場であったかと思います。
そのような昨日8月5日に先週に続いて、サーム・ルールの提唱者であるクラウディア・サームさんのインタビューが流れていましたので、参考訳の上、共有したいと思います。以下ご参照ください。
<主なトピックス>
サームルールは経済状況の一部を簡易にまとめて表現するもので、予測ツールではない
失業率の緩やかな増加はリセッションの初期段階と一致することが多いが、現時点ではリセッションには至っていない
冷静さが重要で、恐怖は役に立たない。
2回連続の50ベーシスポイントの利下げ期待については、そこまでの危機的状況にはあらず。
FEDは、自身の描いた道筋をこれからも進めて行きたいと考えている。
FRBは大きな行動を取れる優位なポジションにいるが、その行動はその時の経済状況よって調整される
(1)インタビュー
[ジョナサン・フェロ](Bloomberg)
クラウディアさん、基本的な話になりますがお話しください。
サームルールとは何か、その用途として何を想定していたのか、そして現在のような労働市場でも適用可能だと思われるかについて教えてください。
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[クラウディア・サーム](New Century Advisors)
このリセッション指標のオリジナルの起源は、財政政策を自動化し、リセッション時に自動安定装置として機能させるための提案でした。サームルールは経済が何かをしなければならないという規則ではなく、政策立案者が行動するための規則です。
このルールは、米国の過去の記録を調べ、失業率の増加パターンを見つけることを目的としています。これは予測ではなく、過去の米国がリセッションに突入していた時期を特定するものです。今の状況に当てはまらない可能性も十分にあります。
現状を考えると、米国がリセッション状況にあるとは考えにくいです。しかし、重要な問いは、今後どこへ向かうのかという点です。サームルールが示す失業率の変化は、あまり好ましくない方向に進んでおり、その勢いが問題を引き起こす可能性があります。
[Bloomberg]
あなたの名前やサームルールについて語って、それを売却の口実にしたり、FRBが速やかに行動を起こすべきだと言っている人たちに対し、何か言いたいことはありますか?
![](https://assets.st-note.com/img/1722892794777-T0z3riXCO5.png?width=1200)
[クラウディア・サーム]
こういう時こそ冷静さが重要です。どの指標データを見ているにしても、恐怖は役に立ちません。サームルールは、米国経済の一部を簡易にまとめて表現するためのものでした。
労働市場は非常に重要です。今は多くの複雑な要因がありますが、真剣に受け止めることが大切です。米国経済の減速は確かに見られますが、その減速が我々を逆行させないようにすることがポイントです。今のところ、まだその段階には達していません。通常、サームルールが発動する頃には、その段階を既に過ぎていることになります。
つまり、今はまだチャンスがあります。FRBには多くの緩和策があり、我々は強い経済状態でこれに対処しています。現在の状況には多くの要因が影響していますが、そのような嵐を乗り切るためには、経済の強さが非常に重要です。
[Bloomberg]
あなたの言葉、「嵐を乗り切る」という点について話したいと思います。金曜日に発表された数字(=失業率4.3%)について大きな議論がありました。多くの人が「これらの数字は信じないでください。天候やハリケーン・バリーの影響で数値がすぐに反転する可能性があります」と言っていました。しかし、BLS(労働統計局)は「天候は目立った影響はない」と発表しました。
あなたはどちらの意見を支持しますか?金曜日に見た数字が天候の影響で反転する可能性があるとお考えでしょうか。
[クラウディア・サーム]
どの指標であっても1か月のデータに過剰反応しないように設計されるべきです。サームルールも同様で、複数月にわたるデータを平滑化して見ています。サームルールが反応するパターンは、過去1年間の失業率の徐々な増加です。
天候の影響については、BLSが地理的データを非常に慎重に分析する能力と経験を持っています。彼らの声明は非常に真剣に受け止められるべきです。失業率や労働力の状況が天候によって影響を受けなかったという点には私も同意します。天候の影響で仕事ができなかったとしても、雇用されている状態から失業状態に切り替わるわけではありません。
1か月の予期せぬネガティブなデータが一部反転する可能性は高いですが、重要なのは年間全体の状況です。失業率の緩やかな増加は、過去にはリセッションの初期段階と一致していることが多いです。現時点ではリセッションには至っていないかもしれませんが、その状況に近づきつつあることは間違いありません。
![](https://assets.st-note.com/img/1722892881233-1CtRI1vPyz.png?width=1200)
[Bloomberg]
あなたはFRBで働いた経験がありますので、FRBの組織がどのように機能し、時にはどれほどゆっくり動くかをよくご存じだと思います。
このデータに対して、FRBはどのように反応すると思いますか?金曜日のデータだけでなく、木曜日のデータ(= ISM製造業景況感指数)も含め、ジャクソンホール会議に向けての対応について教えてください。
[クラウディア・サーム]
今日のような日は、多くの人がパニック状態に陥りやすいですが、FRBが慎重にゆっくりと動くことは良いことです。感情的なエネルギーに巻き込まれないことが重要です。それでも、彼らは市場の動きや流動性を非常に注意深く見守っています。市場が適切に機能するようにするためにFRBが存在しているのです。金融政策はその後ですよね。だから、慎重さが求められています。
金曜日の報告を受け、9月の金利変更に対する見解を劇的に変えることは考えにくいですし、それは時期尚早だと思います。FRBは正しい方向に向かっていますし、目標に到達するまでの時間もあります。経済データに関しては特に、彼らが慎重に動くことが求められています。
[Bloomberg]
彼らは、どうやって最初の金利引き下げを説明するのでしょうか。中期的な調整、正常化へのプロセス、あるいは現状を考慮してより緩和的な姿勢をとるための第一歩として説明するのでしょうか。これまでの情報を踏まえて、彼らはどのように説明すると思いますか?
[クラウディア・サーム]
本当に、9月がずいぶん先のように感じますね。FRBは、可能であれば自分たちが設定した道筋を進みたいと思っているでしょう。その道筋とは、インフレが正常化しているため、金利の正常化に向けて着手し始めることです。つまり、全てが正しい方向に向かっているということです。もし可能なら、彼らはそのストーリー、その道筋を維持したいと思っているでしょう。しかし、ここ数日間の出来事で、その道筋が適切かどうかが疑問視されています。ただ、FRBについて言えることは、非常に慎重であるということです。動きは遅いかもしれませんが、事実が変わり、そのことを理解すれば、必要なことを行うでしょう。そして、今の状況では、彼らはかなりのことをできる立場にあり、それは特筆すべきことといえます。
[Bloomberg]
CitiとJPモルガンの両方が、今ではFRBが2回連続で50ベーシスポイントの利下げを行うと予想しています。9月に25ベーシスポイントの利下げをするのと50ベーシスポイントの利下げをするのでは、実際にどのような違いがあるのでしょうか?
[クラウディア・サーム]
それは、その時点での状況に応じて決まります。特に連続した50ベーシスポイントの利下げを予測する人にとって、それは経済の見通しが非常に厳しいことを意味します。私の基本的な見解では、それはFRBの見解でもないと思います。現在のデータと状況を考えると、大きな動きが最初からあるとすれば、それは本当に大きな問題が存在していることになります。ただ、2022年にはインフレと戦うために大きな行動を行いましたし、FRBは経済の状況に応じて政策を調整することになるでしょう。
(2)オリジナル・コンテンツ
Bloomberg Televisionより
(Original Published date : 2024/08/05)
以上です。
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だうじょん
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