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ミレニアル世代に引き継がれるベビーブーマー世代の膨大な資産とホワイトハウス・プット


 韓国メディアである3PROTVのチャネル「Global Money Talk」より、トム・リー氏のインタビュー講演の内容を紹介します。

 このインタビューでは、米国大統領選挙後の市場動向、財務長官の重要性、FRBの独立性、暗号資産の未来、ポートフォリオ戦略、商業不動産市場、そして、自社ETFであるGranny Shots ETFなどをテーマとして、トム・リー氏の見解が披露されています。

 マーケット・フレンドリーと言われるトランプ次期大統領による「ホワイトハウス・プット」が「FEDプット」と共にマーケットに安心感を提供するという考え。ベビーブーマー世代の膨大な資産が株式フレンドリーなミレニアル世代に移転されて株式市場が大きな刺激を受けるシナリオ。今後も信頼の価値を高めるビットコインを今は売るべきタイミングではない、等々の彼のブル姿勢を支えているアイデアが示されています。ご参考下さい。

[主なサブテーマ]

  • 米国大統領選挙と株式市場への影響

  • 暗号資産の将来性:ビットコインとアルトコイン

  • 資産配分とポートフォリオ戦略

  • 資産の世代移転とマーケットへの影響

  • 商業不動産市場の現状と将来

  • Fundstrat「Granny Shots ETF」


 尚、Youtubeで2025年1月5日公開となるこのインタビュー講演ですが、実際の公演日は、会話の文脈からは、恐らくとなっていますが、実際にインタビューが行われたのは、2024/11/14~11/16のいずれかのタイミングだと思われます。






1. インタビュー



[タイ・ウォン](CFA、シニアトレーダー)
 本日は、ウォール・ストリートで長年活躍されているストラテジストで、Fundstrat社の創設者のトム・リーさんをお迎えでき、とても嬉しく思います。トムさんはテレビでも頻繁に出演され、たいへん興味深いインサイトをお持ちですので、この場でお話を伺うのを楽しみにしています。

 さて、米国選挙の結果やこれまでに発表された米国閣僚人事を踏まえ、2025年の今後6か月間の株式市場、債券利回り、暗号資産、商品市場について、順にお考えをお聞かせいただけますか?


[トム・リー](Fundstrat Global Advisors)
 トランプ氏は、歴代の大統領の中でも特にマーケットに友好的な姿勢を持つ人物であり、大統領としての評価を株式マーケットの動向に基づいて行う傾向があると考えられます。この姿勢は投資家にとって好材料です。なぜなら、財政赤字が大きすぎたり、関税政策が過度に強硬だったりするなど、マーケットを不安にさせるような政策を行なえば、その影響が株価に直ちに現れるからです。我々の視点から最も安全な対応策は、彼が間違いなく追求すると見られる方針に注目することです。具体的には、規制緩和や企業に優しい政策、そしてマーケットを重視した政策が挙げられます。これにより、金融セクターや小型株への注目が高まると考えられます。
 一方で、政府の効率化や関税導入といった政策にも取り組む意向があるため、多国籍企業にはやや厳しい環境になるかもしれません。また、防衛産業のような工業分野もやや難しい状況に直面しそうです。さらに、医療やエネルギー分野に関してもネガティブな影響が懸念されます。
 債券市場の観点から見ると、当初は財政赤字拡大への懸念から金利が上昇すると考えられます。しかし、これは株式市場にとってマイナス要因となります。ただし、トランプ氏やそのアドバイザーたちが金利の大幅な上昇を望んでいるとは思えないため、金利上昇が株価低迷の主な要因になる可能性は低いでしょう。
 暗号資産の観点では、トランプ氏が非常にデジタル資産に好意的なプラットフォームを推進していることは明らかです。彼はビットコインを準備資産にする可能性を公約に掲げてさえいます。彼の主要なアドバイザーのほとんどがビットコインの大口保有者であることを考えると、今後4年間でホワイトハウスの取り組みの中心にビットコインが組み込まれる可能性は高く、このことは当然、ビットコインにとって非常に好材料になります。


[タイ・ウォン]
 株式市場についてもう少し詳しくお伺いしたいと思います。おっしゃる通り、彼は株式市場の状況を自身の成果の指標としているようです。その反応の仕方については、どの程度タイミングよく行動すると思われますか? 税金を過度に引き下げると、財政赤字への懸念からマーケットが不安定になる可能性があると、アドバイザーたちが彼に伝えることはあるのでしょうか? また、マーケットがある種の抑制力として働き、ドナルド・トランプ氏が極端な行動をとることを防ぐような状況が起こると思われますか?


[トム・リー]
 この関係がどのように機能するのか、現時点ではまだ判断するには早いと思います。投資家が陥りがちな誤りは、マーケットをあまりにも単純に捉えようとすることです。私の見方では、今後4年間、いわゆる「ホワイトハウス・プット」が存在すると考えています。つまり、株式市場が下落を始めると、それがホワイトハウスによる行動や発信を促す可能性があるということです。
 ご存じの通り、「FEDプット」が存在するとき、FRBがハト派的な姿勢を取れば、投資家はマーケット環境に関係なく安心して株式を買う傾向があります。なぜなら、FRBが株式市場を守ると信じているからです。今後4年間では、この「ホワイトハウス・プット」と「FEDプット」の両方が存在する可能性があると思います。これは株式市場にとって非常にポジティブな要因です。あまり複雑に考えすぎず、この点をシンプルに捉えることが重要だと思います。


[タイ・ウォン]
 今回、初めて「ホワイトハウス・プット」という言葉を聞きました。他で耳にすることがあれば、それはトム・リーさんがここで最初におっしゃったことだと覚えていてください。さて、FRBやパウエル議長がたびたび、「FRBは非政治的なものである」と述べているのは知っています。確かにそのように振る舞おうとしているとは思いますが、実際のところは少し事情が異なるかもしれません。トランプ氏の当選と、彼が共和党の議会を抱えることがFRBの考え方を変えた可能性はあると思われますか?そのことが、木曜日(訳注:2024/11/14にダラスで行われた講演)にパウエル議長がマーケットの予想外の発言をした理由の一部だとお考えですか?


[トム・リー]
 FRBは独立した機関として設計されています。そして、マーケットがFRBを独立した存在だと信じることが重要です。ただし、どの大統領もFRBに影響を与えようとしてきた歴史があります。それはトランプ氏だけに限ったことではありません。有名な例として、ジョンソン大統領が政策決定者に圧力をかけたことが挙げられます。また、グリーンスパン氏も多くのプレッシャーに直面しました。実際、どのFRB議長もホワイトハウスからの圧力を受けています。なぜなら、FRBは経済をコントロールする鍵を握っているからです。
 FRBの基本的な目標は、完全雇用を達成し、インフレを抑えることにあります。これらの目標は、どのホワイトハウスにとっても一致する部分があるものの、その達成タイミングが必ずしも同じとは限りません。しかし、最終的にはFRBが独立性を示し、主張する必要があると考えます。それでも、FRBとホワイトハウスが互いに対立しているわけではないと思います。


[タイ・ウォン]
 週末には、財務長官の任命を巡って2つの陣営が争っているという話がいくつか出ていました。ここで2つの質問があります。1つ目、この政権にとって財務長官の重要性はどの程度でしょうか?2つ目として、誰が任命されるかについて何か見解をお持ちですか?


[トム・リー]
 財務長官は、マーケットの観点から非常に重要な役割を担っています。財務長官は、金利の動向に影響を与える国債発行だけでなく、ドルを含む外国為替や緊急時の介入にも関与するためです。リーマンショックの際に財務長官を務めていたヘンリー・ポールソン氏が、経済を救う上で重要な役割を果たしたことがよく知られています。このように、財務長官の役割は極めて重要です。
 現在候補に挙がっている3~4人、具体的にはベッセント氏、ルトニック氏、ウォッシュ氏、マーク・ローワン氏のいずれも、高度な投資家として知られています。そのため、誰が選ばれてもマーケットが大きな懸念を抱くことはないと考えます。しかし、トランプ氏がどのような基準で選ぶのかはまだ分かりません。マーケットの承諾や賭け市場を参考にするのか、それとももっと表面的な基準で判断するのかは不透明です。例えば、トランプ氏がジャネット・イエレン氏をFRB議長に賛同しなかった理由の一つが、彼女の身長を理由にしていたというエピソードを思い出すと、そうした要素も排除できないかもしれません。


[タイ・ウォン]
 次にビットコインについてお伺いします。トムさんは以前から非常に強気なビットコイン支持者であり、1年後や5年後の予測を公言されています。もしよろしければ、それらの予測についてと、なぜビットコインに対してそこまで強い信念をお持ちなのかをお話しいただけますか?


[トム・リー]
 我々にとってビットコインは、現代のデジタル時代において最も信頼される資産の一つだと考えています。現在、AIやサイバーセキュリティの脅威によって、人々の間や金融機関への信頼が大きく損なわれていますが、ビットコインのブロックチェーンは依然として世界で最も安全な台帳となっています。14年間の歴史の中で一度もハッキングを受けていないという事実は、信頼の象徴といえるでしょう。そのため、ビットコインの価格は「信頼のない世界における信頼の価値」を反映しているといえます。我々は過去8年から9年にわたりビットコインを推奨しており、現在でもコア資産として位置付けています。
 ビットコインの価格動向に目を向けると、その価格は過去の半減期サイクルと非常に密接に連動しています。これに基づくと、ビットコインの価格は近い将来で10万ドルから15万ドル程度になる可能性がありますが、5年以内には50万ドル近くに達する可能性もあります。仮に1ビットコインが50万ドルになったとしても、それは現在の金の価値をまだ下回ります。私は、ビットコインが金の価値を超えると考えており、その場合に1ビットコインの価値は100万ドルに近づくことになると考えています。


[タイ・ウォン]
 ビットコインについては、近い将来または中期的に利益を確定させるタイミングがあるとお考えですか?


[トム・リー]
 ビットコインを売るべきではないと考えています。特に、信頼を測る上でこれ以上の方法がないと信じているのであれば、その価値は長い年月をかけてさらに明らかになるでしょう。例えば、将来的には米国がビットコインを準備資産として保有する可能性もあると考えています。これは、ビットコインのブロックチェーンの安全性に対する非常に大きな支持となるでしょう。


[タイ・ウォン]
 ビットコイン以外の他のコインについてもお伺いします。イーサリアムやSolanaなど、他の主要なコインに対しても同様に強気でいらっしゃいますか?


[トム・リー]
 我々はこの7~8年、暗号資産を追い続けてきましたが、多くのいわゆるアルトコインが登場し、そして消えていくのを目の当たりにしてきました。アルトコインを購入しようと考える際に最も重要なポイントは、まずそのトークンがどれだけ実用的であるか、またはそのコミュニティの規模がどれくらいかを測ることです。この観点から見ると、イーサリアムやSolanaは非常に信頼性の高いLayer 1ブロックチェーンだと言えます。
 次に考慮すべき点は、暗号資産がいわゆる「クリプト・シーズン」や強気相場に入ると、アルトコインは非常に高いパフォーマンスを示す傾向があるということです。例えば、ビットコインが9万ドルから50万ドルに上昇するなら、多くのアルトコインはそれ以上のパフォーマンスを見せる可能性があります。ただし、これらは長期的な投資というよりは、一時的なトレードと考えるべきです。


[タイ・ウォン]
 長年、投資家にとって「60/40」の分散モデル、つまり60%を株式、40%を債券に配分する考え方が一般的でした。若い方の場合は、株式を多めに、債券を少なめにする傾向があるかと思います。この比率について、どのように考えていますか? さらに、モデルポートフォリオにおけるビットコインの比率についてもお考えをお聞かせください。


[トム・リー]
 私は通常、資産配分について具体的なアドバイスをすることは避けています。というのも、債券のようなリスクが低い資産にどれだけ割り当てるかは、その人のリスク許容度や年齢、そして株式マーケットにどれだけ資産を投じているかなど、個々の状況に大きく依存するからです。これらの3つの変数がわからないため、具体的な配分比率を提案することは基本的にしていません。
 ただし、ビットコインに関しては、最初に我々が推奨したのは「ポートフォリオの1%をビットコインに投資する」ことでした。その後、売却せず保有し続けた人々にとっては、株式市場の上昇を考慮しても、当初の1%の投資が現在ではポートフォリオ全体の40%を占めるほどに成長しました。また、次に「0.5%をビットコイン、0.5%をイーサリアムに投資する」という提案をしましたが、リバランスを行わなかった場合、その配分は現在ではポートフォリオの80%を占めるようになっています。
 現在、我々は「ポートフォリオの少なくとも2%から5%をビットコインに割り当てる」ことを推奨しています。この投資はコモディティやオルタナティブ資産へのエクスポージャーと考えられます。なぜなら、2%から5%を投じたとして、仮に暗号資産が完全に価値を失ったとしても、資産全体を失うわけではないからです。しかし、ビットコインが我々の予測する目標価格に達した場合、再びポートフォリオの50%を占めるほどの成長を遂げる可能性があるのです。


[タイ・ウォン]
 話題を少し変えます。これまでの経済予測で、人口動態が非常に重要であると繰り返しお話しされていました。今年、ほぼ1兆ドルがETFに流入したと言われていますが、ベビーブーマー世代について伺いたいです。最年長のベビーブーマーは現在80歳近く、最年少でも60歳前後ですので、平均年齢は約70歳です。この世代がマーケットから資金を引き出し、純資金流出に転じる可能性についてどうお考えですか?また、そのことがマーケットに与える影響はどの程度のものになるとお考えでしょうか?


[トム・リー]
 多くの人が、ベビーブーマー世代のリタイアに伴い株式市場から資金を引き出すことでマーケットにネガティブな影響があると考え、弱気な見方をしています。しかし、ご指摘の通り、ベビーブーマー世代はすでにこのプロセスを過去8年間、さらに言えば最も年長のブーマーを基準にすれば28年間も進めてきています。それにもかかわらず、過去28年間で株式市場は成長を続けてきました。
 その理由は、ベビーブーマー世代が約120兆ドルもの世帯純資産を管理しており、その資産から得られる利子収入は年間およそ7兆ドルに達するからです。以前話していた数字は間違っていたかもしれず、正しい数字は120兆ドルと7兆ドルです。これを比較すると、米国のGDPは25兆ドル規模です。
 ベビーブーマー世代には膨大な貯蓄があり、もし株式市場が20%上昇すれば、それだけで30兆ドルの資産増加になります。彼らがその全額を消費するわけではありません。この点は大きな誤解です。実際、過去28年間で世帯純資産は劇的に増加しています。ブーマー世代は多くのお金を使い、豊かな生活を送りながら経済を支えていますが、それでもなお多くの資産が残っています。この資産は、今後20年間でミレニアル世代に引き継がれると考えられています。
 多くの研究モデルによれば、今後20年間でおよそ80兆ドルから100兆ドルがミレニアル世代に移転されるというのが中央値の予測です。その時、ミレニアル世代の平均年齢はおよそ35歳から45歳となるため、この資産移転は経済だけでなく株式市場にも大きな刺激を与えるでしょう。特に、ミレニアル世代はベビーブーマー世代よりも株式を保有する傾向が強いため、この影響はさらに大きいと考えられます。


[タイ・ウォン]
 この資金移動の大部分は、いつ頃発生するとお考えですか?それとも、すでに進行中だと見ていらっしゃいますか?


[トム・リー]
 このような現象を正確にモデル化しようとする必要があるかどうかはわかりません。なぜなら、死亡率やポートフォリオの具体的な構成など、将来を正確に予測することは難しいからです。しかし、簡単な観察から言えることがあります。この15年間、全ての弱気派が同じことを私に話してきました。「ベビーブーマー世代がリタイアすることで経済に逆風が吹き、株式市場にも悪影響が出る。彼らが資金を引き出すからだ」と。
 しかし、もしその考えに基づいて行動していたとしたら、この15年間の株式市場の大幅な上昇を見逃していたことになります。それが、私の答えです。


[タイ・ウォン]
 ところで、Fundstrat社が新たに立ち上げた「Granny Shots ETF」について伺いたいです。この名前、とてもユニークで素敵ですね。このETFの名前の由来と、どのような内容なのか少し教えていただけますか?


[トム・リー]
 「Granny Shots ETF」という名前は少しユニークで、思わず「Granny Shotsって何だ?」と疑問に思われるかもしれません。これはバスケットボール用語です。フリースローを投げるとき、ほとんどの選手は見た目が格好良いオーバーハンドの投げ方を選びます。しかし、物理学的に最も効果的なフリースローの方法は「グラニーショット」と呼ばれるアンダーハンドの投げ方です。NBAの殿堂入り選手であるリック・バリー氏は、このグラニーショットを使ってフリースロー成功率90%を記録しました。
 投資において、我々が作ったETFは、株式の「Granny Shots」にあたるものです。つまり、最も確率的に勝率の高い銘柄を見つけることを目指して設計されたETFです。このアプローチはテーマ投資に基づいており、今後10年間でリターンを牽引すると考えられる主要テーマを特定しています。そして、我々はその中で最も重要だと思われる7つのテーマを選びました。
 有名なヘッジファンドマネージャー、例えばスタン・ドラッケンミラー氏のような方々も、自身のポートフォリオのリターンの70~80%がマクロやテーマ選択によるものであり、個別株の選択によるものはわずか20%に過ぎないと述べています。我々のアプローチは、これらのテーマを組み合わせ、その中で最も重要な銘柄を特定することです。もし1つの銘柄が複数のテーマに該当する場合、その銘柄は「グラニーショット」となり、勝率の高い投資になる可能性が高まります。
 このGranny Shotsポートフォリオは、2019年から我々の研究の一環として運用されており、S&P 500を毎年一貫して上回るパフォーマンスを記録しています。今年もS&P 500が25%上昇している中で、このポートフォリオはさらにそれを上回る成果を上げています。そして今回、この研究ポートフォリオをETFに移行しました。そして、このアイデアにアクセスする唯一の方法は、Fundstrat Capital ETFに投資することです。


[オーディエンス]
 資産担保型の暗号通貨に対するあなたの見解をお聞かせください。


[トム・リー]
 我々は、ビットコイン、イーサリアム、Solana以外のトークンについて具体的な推奨は行っていませんが、それらについてコメントすることは問題ありません。ご質問の中で触れられている暗号資産が実物資産に裏付けられるというアイデアについては、いわゆる、プライベート資産のトークン化と呼ばれるものに該当します。これは将来的に大きな可能性を秘めている分野です。
 多くの銀行がこの分野を模索しており、債券や不動産、アート、コモディティなどをトークン化する取り組みが進んでいます。この手法は、現在の金融システムに存在する多くの摩擦を取り除く可能性があります。例えば、不動産を購入する場合、通常は数百枚の書類と弁護士による情報確認が必要ですが、これがブロックチェーンで簡単に確認できるようになれば、手続きが大幅に効率化されます。ただし、このようなトークン化に関連した特定のトークンや暗号資産を推奨しているわけではありませんので、その点はご理解いただければと思います。


[オーディエンス]
 新しい種類の暗号通貨資産はビットコインと競争すると思いますか?


[トム・リー]
 これらの暗号資産はビットコインと競合するものではありません。それは、暗号資産全体が米ドルと競争しているわけではないのと同じです。現在、米ドルは依然として、石油や住宅、株式、革製品、高級品など、あらゆるマーケットで価格を表すために最も広く使用されている通貨です。
 暗号資産の世界でも、最も人気のあるステーブルコインは米ドルを基準にしています。例えば、TetherやUSDCなどがその代表例です。このように、暗号資産の領域でもドルの支配力は非常に強いものがあります。そのため、将来の主要通貨について問われるとすれば、ビットコインとドルがその中心になるだろうと考えています。


[オーディエンス]
 トランプ氏はおそらく弱い米ドルを望んでいると思われます。あなたはそれに同意しますか? そして、彼はそれをどのように実現するのでしょうか?


[トム・リー]
 通貨の動向を予測するのは非常に難しいことです。ホワイトハウス、FRB、投資家の誰であっても、通貨の方向性を正確に予測することはできないと思います。もし通貨の動向が予測可能であれば、通貨取引だけで億万長者になる人が大勢いるはずです。それほど明確ではないからこそ、予測が難しいのです。
 ドルを弱める方法についても分かりませんし、FRBや財務長官、投資家たちも、ドルが弱くなる要因を明確に理解しているわけではないと思います。例えば、日本の円や中国の人民元を見てみると、日本銀行や中国当局が通貨の方向性を必死に管理しようとしているのが分かります。それでも、その努力が必ずしも意図した通りに成功しているわけではありません。
そのため、私はドルの動き、特に中国や日本の通貨に対する動きについては、それらの国々との交渉戦術の一環として捉える方が適切だと考えます。しかし、実際にどのような措置を取れば通貨を弱めることができるのかを断言するのは難しいです。
 一方で、トランプ氏の目的は、米国の企業が多くの利益を上げ、それが株式市場の上昇につながることだと思います。彼がドルの価値がどうなるかについて、必ずしも強く意識しているとは限らないと考えています。


[オーディエンス]
 米国の商業不動産マーケットに対するあなたの見解をお聞かせください?


[トム・リー]
 現在、商業用不動産は非常に厳しい状況にあります。その主な理由の一つは、多くの人が在宅勤務をしているため、オフィスの空室率が高まっていることです。また、多くの都市ではダウンタウンの生活環境が悪化しており、社員をダウンタウンのオフィスに置く魅力が低下しています。こうした理由から、商業用不動産マーケットは非常に厳しい状態にあります。
 しかし、商業用不動産は短期的な資産ではなく、長期的な資産です。そして、その資金源も長期的な視点で運用されるお金です。このため、商業用不動産が現在のような厳しい状態のままで5年後や10年後を迎えるかと言えば、そうは思いません。いずれ回復すると考えています。
 2008年の金融危機の際、多くの人が米国ではもう家を買うべきではないと言いました。当時、住宅価格が40%も下落していたからです。しかし、その時に積極的に動いて家を購入した人の中には、辛抱強く適切な場所を選んだ結果、大富豪になった人もいます。ですから、不動産に精通し、時間をかけてチャンスを見つけられる人にとっては、商業用不動産は非常に魅力的な分野になり得ると思います。
 私は商業用不動産の専門家ではありませんが、過去2年間と比べて90%も安い価格で取引されている物件を目にしたことがあります。このような取引で、次の所有者が損をするとは思いません。よく言われることですが、「ホテルの2番目の所有者は必ず儲かる」という名言があります。それは、このようなケースに当てはまるのではないでしょうか。


[タイ・ウォン]
 本日はありがとうございました。


[トム・リー]
 ありがとうございました。





2. オリジナル・コンテンツ

 オリジナル・コンテンツは、以下リンクからご覧になれます。
尚、本投稿の内容は、参考訳です。また、意訳や省略、情報を補足したコンテンツを含んでいます。

Global Money Talk
(Original Published date : 2024/01/05 JST)

[出演]
  Fundstrat Global Advisors
    
トム・リー(Tom Lee)

  Interviewer
    
タイ・ウォン(Tai Wong)
    CFA、シニアトレーダー



<御礼>

 最後までお読み頂きまして誠に有難うございます。
役に立ちましたら、スキ、フォロー頂けると大変喜び、モチベーションにもつながりますので、是非よろしくお願いいたします。 


だうじょん


<免責事項>

 本執筆内容は、執筆者個人の備忘録を情報提供のみを目的として公開するものであり、いかなる金融商品や個別株への投資勧誘や投資手法を推奨するものではありません。また、本執筆によって提供される情報は、個々の読者の方々にとって適切であるとは限らず、またその真実性、完全性、正確性、いかなる特定の目的への適時性について保証されるものではありません。 投資を行う際は、株式への投資は大きなリスクを伴うものであることをご認識の上、読者の皆様ご自身の判断と責任で投資なされるようお願い申し上げます。



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