『医者・病院・薬局 失敗しない選び方・考え方』-病気でも「健康」に生きるために-
数年前、自分は精巣腫瘍になって入院治療をしていました。その頃に、精巣腫瘍患者友の会の活動をされていた、鈴木信行さんと出会いました。
今度、鈴木さんが本を出されたので、紹介したいと思います。
https://www.amazon.co.jp/dp/4865811818
重い病にかかったら、どのように病と向き合えば良いのか。また患者として、病院や医者、医療者とどのように関わればより良いのか。それは、自分が精巣腫瘍になった時にも考えざるをえなかったことです。今さらながら、当時納得できないことや不安や疑問が山程あったのを思い出します。けど健康なうちには、「転ばぬ先の杖」という感じで。病気になった時の対処法なんて全く考えていませんでした。
結局自分は、治療に関して右往左往しましたが、取り敢えず治療のおかげで今日まで生きれています。ですが、病気になった当初この本に書かれている考え方が身についていたら、医療や病気との向き合い方は、違っていただろうと思います。
鈴木さんは、自らの患者経験と医療者側の経験を、社会と医療の発展に繋げようと長年活動されています。そうして得られた、医療者との付き合い方、病気との向き合い方が、具体的な知識や画期的なアイデアとして述べられています。
本の第一章で鈴木さんは、まず「健康」の概念そのものを、定義し直します。10人の人がいれば、10の考え方があるように、「健康」に関しても独自に考えることを提唱しています。
治せない障害があったり、治せない病気になったとしても、それだけで人生の幸が決まるわけではない。人生の目標をあきらめる必要はない。鈴木さんは自身の体験から、そのように悟ったのだろうと思います。
【第二章 自分を見つめ直すススメ】では、病気と向き合う段階的な心の変化が出てきます。エリザベス・キューブラー・ロスの説いた5段階の変化「否認と孤立」「怒り」「取り引き」「抑うつ」「受容」は昔からよく目にしていましたし、確かにこんな感じかも知れません。しかし、鈴木さんはそれをアレンジして、独自の6段階を作ります。心の変容の段階は、人によって様々なはずなので、それを客観的に考えることをススメています。
教科書的な説に現実を当て嵌めるのではなく、体験した現実から、新たな考え方をしようというのが、鈴木さんの主張であり生きる姿勢なのだろうと思います。
人が生きるための基本である、「健康」一つとっても人の数だけの違いがあります。その人の人生観や生活の事情は、医療との向き合い方に当然影響があります。
患者が納得いく医療を受けられるように、医療者側からの一方通行にならないように、患者も自身をよく知りよく考えて、自身の為の医療を要望しようというのが、本の内容の後半になります。
第9章で、鈴木さんの活動がいくつか紹介されています。その中で、医療者側も患者のことをもっとよく知りたいと思っている、とありました。
世の中では、お医者様は偉い、と見なされています。なので、私達は医療に対して受け身になりがちですが、自分の体のことなのだから、治療を医者の采配に委ねるだけでなくて、自分の考えも言うべきなのだろうと思います。
鈴木さんは、著書のまえがきでこのように述べています。どんな人物像が思い浮かぶでしょうか?
まえがき
【生まれつきの身体障害者。そして、もう治せないがん】
いろいろな励ましの言葉をいただいて思うことがある。病気に負けるな、乗り越えろ、がんばれ、、、、。
その気持ちはうれしい。でも、私の気持ちは少し違っている。
病気になった運命を受け入れる、楽しむ、活かす、、、、,せっかく病気になったんだもん、、、、,という生き方を、私はしたい。
病気に対して勝ち負けの気持ちはない。
がんばろうという意欲もない。
運命は運命。粛々と向き合えばいい。
鈴木さんは、普段医療関係の仕事をしていて、金曜日の夜だけカフェのマスターをしています。そこでの鈴木さんは、常連のお客さんとふざけあったり、色々な会話を面白がり、人生を謳歌する楽しいオジサンという感じです。
https://m.facebook.com/minoricafe
医療と患者がお互いに歩み寄り、医者と患者が対等の関係になる、それを理想とする社会を目指して活動をしています。気負うことなく、楽しみながら。
「健康」や「医療」について考えていたり、この本に興味が出た方は、読んでみてほしい、一生のうちには、いつか役に立つ1冊です。
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