妹が遊びに来た話-おもちゃ病院ドクターの日記 #8
今日は妹が子供を連れて遊びに来た。
ちょっとしたホラー話になったので一応ココに書いておく。
ちなみに2023年の春は、3年に及ぶコロナ禍の猛威により国全体の大規模な隔離生活を推奨され、久しぶりに逢った親戚が知らない間に大きくなっていることなど珍しくない時代だった。
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いつも通り、練習用に購入したおもちゃを修理して遊んでいると玄関のベルが鳴った。
妹を出迎えてからお茶の準備をするために台所に移動する。
妹は私と向き合う形でこたつに入り、何気なく部屋を見渡し、一角を見てそのまま固まった。
私はコップを用意しながらどうしたんだろう、と妹の視線の先を探した。修理中のおもちゃが幾つか置かれた場所の方向を見ているようなのだが何にそんなに驚いているのかがわからない。
妹は恐怖とも驚きとが混ざった、なんだか泣きそうな顔で固まっている。
妹はしばらく机に置かれた子供用おもちゃを見つめ、何かホラー映画か何かのようにゆっくりと私を見て、またおもちゃへと視線を移した。
またゆっくりと私を見て少し考え込み、うつむいたまま黙ってしまった。
もうこの辺で妹が何を考えているかわかったのだが、面白そうなのでどんな反応をするのか待ってみた。
ちなみに私に子供はいない。
まぁ確かに子供を持っていない家に子供用おもちゃがある光景はだいぶ奇異に映っただろう。もしかしたら子供欲しさに子供用おもちゃを先に集め始めた人に思われたのかもしれない。
妹はたぶんものすごく考えたのだろう。
「姉ちゃん。これはだれのおもちゃ?」と殺人鬼に動機を聞くような雰囲気で聞いてきた。
思ったよりもだいぶ声が震えていたので笑いそうになる。
私は特に悪気もなく「私のだよ」と答えた。
途端に妹の顔が驚愕で満ちる。アメリカ映画でもそんな驚いた顔してないというくらいに口を開け息を吸い込み、そしてゆっくりと「ふぅーー」と吐き出す。そしてなぜかそのままうつむき考え込む。まるで『落ち着け、落ち着け!』という妹の心の声が聞こえてくるように感じた。
今度は何を想像しているのかわからないが、明らかに混乱しているのはわかった。
しょうがないのでネタバラシをする。
「だから私のだよ。おもちゃドクターやっているって言ったでしょ?」
途端に目が点になる妹。
聞けば以前聞いた時は『イベントか何かでおもちゃドクターの格好をして何かをやった』だと思っていたらしい。
そういえば子供教室のクリスマスイベントに参加したときコスプレの『マリ○をやった』と報告したことがあったっけ。
確かに『マ○オをやった』と聞いて本物のマ○オになったとは思わないよね。
わかるんだけど。妹よ。
君は姉をなんだと思っているのだ。
お読みいただきありがとうございます。 引き続きおもちゃ修理がんばります!